2

 俺の人生は普通だった。


 一人の村人であり、農夫である。


灌漑や草狩り、虫や動物除け、他に栽培と荷物運びなど……ずっと農業に関わる仕事をこなしていた。


農業の仕事以外、あまりやったことがない。


 だから俺は、少し気になっている。


昔からちょっと憧れていた冒険者の仕事は、一体どんな感じだろう?


 どんな風に冒険するのだろう?


 危険に伴う仕事って、一体どんな価値があるのだろう?


 時々自分の村にいらっしゃった冒険者様は、村の人たちに何件の冒険譚を持ち込んだことがある。どれの話も壮観な話で、とっても、とっても面白い話だった。


 だが、よくよく話を聞いていくと、俺は思わず考えてしまう。


その面白い話の反面に、その冒険の裏話には、本当に表面の冒険譚みたいに素晴らしいだけの話だろうか。


本当は、人に聞かせるために、悪い話を除けようと思っていないのかと、考えてしまうんだ――


 「――だから、俺は冒険したかった。気になっているんだ。冒険は一体どんなことなのかをね……」と俺が言った。


 少し沈黙の時間が続いていく。


 パツ、パツ……と、たき火がぼうぼうと燃えている。


俺たち――俺と死霊術師のお嬢さん――は今、たき火の近くに座って、話し合っている……いいえ、もっと正確に言うと、喋っているのは俺だけだ。


彼女は、俺が冒険したい理由が聞きたかったから、説明していた。


 だが……


「……そうですか。」と死霊術師である彼女は何の表情もなく、淡々と相槌だけを打った。


元々黄昏近くの時間帯に話した長話を言い終えて、今となってはすっかり暗闇になった。


この間、彼女が返事してくれた言葉は少ないくらい短かった。


今回の返事は若干聞き慣れた「うん」と「そう」ではなく、今まで一番長かった言葉だが……やはり、まともな返事が欲しかった。


 「そうですかって……お嬢さん。自分で聞いておきながら、この返事は冷たくないですか?」俺は言いながら、自分の身体を見ている。


 骸骨になったこの身体は、不思議と生前の感覚とあまり変わらなかった。


筋肉が一切ないのに、軽くなった感じが全くない。


むしろ……鈍い。


そして、俺が考えている間、彼女は返事した。


 「そう……すみません。話すのが苦手で。」彼女はこう言っているが、淡々とした口調はあまり変わらない。むしろ、どこか上の空という感じだった。ぼんやりとしていて、まるで俺の話に興味がない様子。


俺は内心でため息をついて、顔を俯いた。


はぁ……なんで俺は死霊術師なんかに……俺は地面を見つめて、思う。


いや、たしか「未練」って言ったか……と俺がこう考えている時、ちょっと彼女の方が気になって見てみると、自分がすでに見られていることに気付いた。


彼女は何も言わず、ただその虚ろな目で俺を見詰めてくる。


その目で見られると……なぜか自分の考えがまるで見透かされたと感じた。


少し不安を感じた俺は、何が言おうとする時、彼女は先に発言欲を断ち切った。


「……夜番は頼みました。」と、彼女はそう伝えて、俺の返事も聞かず就寝しに行った。


 俺は、夜番を務めた。

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