第7節 上級天使
「迷宮教……! あなたも、まさか……?」
「ええ。見ての通りです」
中を開くと、そこには彼自身の写真とともに「新藤ケイスケ」という彼の名前と、「上級天使」なる称号が書かれていた。
……いやいや、怖すぎ。何言ってんの一体。天使ってなに!?
「あー……これもわからないのか。
上級天使っていうのは、迷宮教においてダンジョン適合者……つまり、アシストフォースを使える団員。
その中でも上位の人物を指すんだ。迷宮教については覚えてるかな」
「……はい。結構……それなりには……」
私は適当に話を合わせようと相槌を打つ。覚えてるわけじゃなくて、後から情報を仕入れただけではあるが……。
だけどこれで確信した。この人はかなり変質者っぽいけど、本当に私の知り合いだ。
過去の私は何故か迷宮教のバッジを持っていた。迷宮教に何らかの縁がある。そのことは、初対面のこの人は知らないはずなのだ。
「すまないけど、ダンジョン以外で話をする気はない。記憶を知りたければついてきてほしい……いいかな?」
「……わかりました」
危ない。明らかに危ないとわかっているが、確かにこれはチャンスだ。
この新藤という人についていけば、少なくとも何かがわかるはず。そうして私は、彼についていくことにした。
■
「先ほど連絡しました、ダンジョン解体人の新藤です。よろしくお願いします」
「ええと……C級解体人、新藤様ですね。お待ちしておりました」
訪れたのは公認ダンジョン。国によって管理下に置かれたダンジョンだ。
神社がダンジョン化したらしく、その全体が「ダンジョン発生中」と書かれた黄色のロープで封鎖されている。
外から中を見ようとすると、まるでモザイクでもかかったようにもやもやして見えない。いつ見ても不思議な光景だ。
「ダンジョンに一度侵入すると、外部との連絡はできません。また法律上、同時に複数グループのダンジョン侵入もできません。
3日間解体が確認できなかった場合のみ、救出チームが侵入します。問題ありませんか?」
「はい。問題ありません」
……係員の人もセイジ相手だといちいち忠告もしなかったから、初めてこういう忠告をちゃんと聞いたかもしれない。
え〜……他に誰も入れないような場所に女子高生を連れ込もうとしてるの、このおじさん。
「えっと……君も解体人なのかな? すまないけど、免許を見せてもらえるかい?」
「あっ、はい! どうぞ」
私はつい昨日手に入れたばかりのC級解体人免許を見せた。それを見て納得したらしく、2人は私たちの通行許可を出す。
新藤さんはそのまま私を促して鳥居の中に入る。潜ると同時に景色が一変した。
空が暗くなり、神社の中の様子がクリアになる。荒れた石畳の奥に赤い神社の拝殿がある。狛犬らしき像が異様に増えており、歩きづらい。
移動の最中、新藤さんは無言のままで、なんだか不安になってくる。セイジと一緒にダンジョンに入ったときは安心感に溢れていたのに。
彼はそのままスタスタと無言のまま歩き、拝殿の扉を躊躇なく開けた。その内部はまた別の空間になっている……ここからが2階層なのだろう。
木の板がずらりと並ぶ床に、顔のない仁王像みたいなものが立っている道場みたいな景色。
四方を囲む壁にはそれぞれ道が続いていて、迷いやすそうだ。
天井も同じく木でできているが、ところどころ穴が空いていて、異様に大きな月の光が入り込んでいる。
一応補足すると、今は昼だ。つくづくダンジョンの景色は現実とは何の関連性もないのだと思い知らされる。
「……あの、新藤さん? そろそろ私のことについて話しても――」
前を歩く新藤さんの背中に触れる。彼はバサッとコートが鳴るほどの勢いで振り向くと――私の首に手をかけてきた!
「あ……ぐっ……!?」
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