第3節 ダンジョン巡り①
それから私は、セイジの家で注文した……なんか一式揃った料理を食べた。
米と味噌汁、よく知らないけど焼いた魚、おろしドレッシングのかかったサラダ、副菜のひじき。
美味しかったし栄養価も適切なんだと思うが、「栄養を取るためだけの食事」みたいな感じだ。
どうもセイジは自宅にいるときは毎日あればかり食べているらしい。
健康的……だとは思うんだけど。なんというか、三食ほぼ毎日健康的な食事って、逆に不健康じゃないかな。そんなことない?
そんないちゃもんを付けたうえで食事は美味しく完食し、私はその夜ソファベッドで眠った。
記憶をなくして、訳のわからない場所でさまよってから現実に戻され。
私の頭と体はすでにものすごく疲れていたらしく、あっという間に、そしてかなり長い間眠ったようだった。
「……おい。起きろ、ルカ」
「……んん? セイジ……?」
肩を揺すられて目を覚ました私はぼんやりと目を開ける。気づけば窓からは陽が差し込んでいた。
「寝すぎだ、ったく。そろそろ行くぞ」
「うぇ……? 行くって、どこに……」
「ダンジョンにだ」
「…………はっ?」
■
「あ……神凪セイジ様! お、お待ちしておりました」
「あぁ、そういうのはいいから。とりあえずパッと入場登録済ませてくれ」
「は、はい! こちら、誓約書に同意いただけますでしょうか」
「ああ、問題ない。それと今回は同行者がいる。まだダンジョン解体人の資格は取ってないんだが、俺が保護する。問題ないだろ?」
「あ、はい。セイジ様はS級解体人で、A級以上であれば同行者も認められますので……可能です。どうぞ」
「ああ。じゃ、行くぞルカ」
「…………」
「……なんでぇ〜〜!?」
あれよあれよという間にまたダンジョンに入り込んでしまい、私は空に向かって叫んだ。
「やっとあの危ない場所から出られたと思ったのに、なんで昨日の今日でまたダンジョンなの!」
はー、はーと息を吐く。改めて辺りを見回してみる。ここは昨日行ったダンジョンとはずいぶん雰囲気が違う。
そもそも……パッと見、そこは屋外だった。よくある団地という感じで、灰色のコンクリートの階層が折り重なったビルが周りにたくさん生えている。
私たちはそのビルに囲まれた広場のような場所に立っていた。放心状態だったからどうやって入ってきたのかは忘れちゃったけど……。
「……で、叫んで気は済んだかねルカ君」
「回答を得られるまでは気が済みそうにないんだけど!」
「回答も何も。ダンジョン解体人っつーのはそういう仕事なんだよ。危険地帯に入る登録をして、解体したら帰って飯を食う。それの繰り返しだ」
「だからってこんな毎日行くの〜!?」
聞いていた話と違う! いや別に聞いてはなかったんだけど、そんな重労働だなんて……!
「だ、だったら! 私のアシストフォースでさっさと片付けちゃおうよ。アシストフォース、強制攻略!」
私は昨日と同じように指で四角形を作り、叫ぶ。
しかし、待てど暮せど、光が出てこない。何も発動した感じがしない……。
「お前の能力は5階層に到達しないと発動しないみたいだな。そりゃ当然だ。
他の例を見ても、アシストフォースにそこまで強力で便利な能力はねぇ」
ご、5階層に行かないと発動しない……!? 何その限定的な能力!? 無敵の能力だと思ったのに〜!
「……じゃあ、ホントにまた昨日みたいに歩き回らなきゃいけないわけ?」
「ああ。さ、観念して歩け。奥に行くぞ」
「やだ〜……!!」
とは言いつつも、こんなよくわからない所に置いて行かれても困る……。私は大人しくセイジについていくことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます