第2話:体が弱いらしい私
その後、すぐには婚約破棄にも解消にもならず、まずは話し合いとなりました。
そして第三者が居た方が良いだろうと、話し合いの場は王宮です。
その為に、話し合いまでかなりの時間が開く事になってしまいました。
彼との接触を避ける為、私は学園をお休みしています。
元々既に卒業できる程度の学力は身に付けているので、問題は有りません。
卒業試験には合格しております。
それでも学園に通っていた理由は、ただ単に友人達と過ごしたかったからです。
そして卒業試験を既に済ませている理由は、いつ学園を辞めても良いように、です。
なぜならば、私は聖女であり、有事には長期間遠征に行く事になり、その為に学園の卒業までのんびりと通学出来る保証が無いからです。
私が聖女だと認定されたのは、魔法判定がされる7歳の時でした。
「さぁ、この水晶玉に触れてくださいね」
優しい口調で神父様に言われ、自分の顔よりも大きな水晶玉に触れた時、それは起こりました。
明るい光が部屋の中を染め、部屋の中に居た神父様と何か記録している人……今思えば魔法省の方だったのでしょう、その二人が私と水晶玉を掴んだのを覚えてます。
神父様は確かめるように水晶玉を持ち上げ、魔法省の方は私の肩を痛いくらいに掴みました。
「今の光はなんだ!」
私の肩を掴んでガクガクと揺さぶられても、わずか7歳で魔法判定を受けに来た私が答えられるわけがありませんよね。
そのような当たり前の判断も出来ないほどに、焦っていたのでしょう。
その後、更に上の方々がやって来て、私はもう一度水晶玉に触れる事になりました。
結果は変わらず目映い位の真っ白な光。
その場で私は聖女認定されました。
水晶玉の置いてある区域は低い柵に囲まれ、神聖な場所とされて教会関係者と、魔法省の聖魔法使いしか入れないのです。
唯一の例外は、判定を受ける7歳の子供。
その為、付き添いの両親は柵の外で見守る事しか出来なかったのだと、後で知りました。
聖女になった私は、教会で聖魔法使いから色々と学ぶ事になりました。
しかし、聖女とは特別な存在で、利用価値が高く、過去には他国に誘拐されたりした事もあったので、存在は秘匿されるのだそうです。
聖女の存在を知るのは、家族と教会関係者、そして王家です。
婚約者やその家族には、明かされません。
私は聖女としての役目を果たし終わるまで、病弱な令嬢として教会に通い続けるのです。
なぜ令嬢として、なのか。
聖女は神の巫女なので、純潔を失うと、その資格も失うのだそうです。
その為に、婚約者には明かす必要が無いと決められているのです。
聖女は血筋に関係無く発現するのですが、聖女の子供が聖女になると誤解している人や国が多いので、聖女という称号はとても危ういものだとも教えられました。
「おい! 遊びに行くぞ!」
婚約した途端、彼は偉そうに命令するようになりました。
子供達が通う学校は、16歳から通う魔法を教える学園とは違い、義務ではありません。
交友関係を広げる為に男子は通いますが、女子、特に高位貴族は家庭教師の方が専門知識を習えるので、通わない事が多いです。
私も当然通わずに、家では家庭教師から淑女教育を受け、教会では聖女教育を受けました。
彼と遊ぶ時間など、ほとんどありません。
私は「教会に通わなくてはいけないので」と、彼の誘いを断りました。
そして、それを「教会に治療に通う」のだと勝手に脳内変換したのでしょう。
「そんなに病弱で、お前は俺の子を産めるのか?」
ある日、言われました。
久しぶりに会う婚約者への第一声がそれなのかと、幼いながらも失望したのを覚えています。
「久しぶり」でも「体調は大丈夫?」でもなく、「俺の子を産めるのか?」ですか。
その時に「無理かもしれませんね」と、答えた私は、精一杯の抵抗をしたのです。
貴方の子は産みたくない、と。
まだどうすれば子供ができるかの教育も受けていない頃でしたが、本能的に拒否したようです。
あら、何を思い出しても、良い思い出がありません。
なぜ私は婚約を続けていたのでしょうね。
多分、忙しくて疲れていたので、婚約を解消する気力も体力も無かっただけという気もします。
余裕が出来たら、おそらく私から婚約破棄を提案していたでしょう。
だからそれを何となく感じた彼が、先に婚約破棄を宣言したのかもしれません。
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