第3話 SS3 教祖暗殺
SSJから新たな指令がきた。
「世間を騒がせている心身統一教の教祖を探り出し、捕縛もしくは殺害せよ」
という指令である。
心身統一教というのは、ここ10年ほど勢力を伸ばしている新興宗教で、表向きは神野民子(じんのたみこ)という女性が主幹として普及にあたっている。だが、その裏には本当の教祖がおり、女性信者の何人かは奥の院に入ったまま出てきていないという。信者の中では「奥の院入り」と言われ、名誉なことらしいが、実のところは人身御供のようだ。とSS本部はにらんでいる。ふつうの信者も献金ということで、収入の半分をとられているらしい。献金をすれば天国行き、しなければ地獄行きという新興宗教おさだまりのパターンである。ひとつだけ違うことをあげれば、献金をすると幸運が舞い降りるという論法で、実際にそういうことが起きたという事例が多々あるという。教団が何かしらの操作をしているのは明白である。
雄一は、L県の山奥にある教団本部に近づいた。だが、1km前から鉄条網の柵があり、容易には近づけない。まるで軍事基地である。夜になってから忍び込むことにした。
夜になって、鉄条網を破って敷地内に忍び込んだ。明朝にはパトロールがやってきて、侵入がばれてしまう。かと言って、あせって行動するとろくなことはない。まずは、敷地内で隠れる場所を探すことにした。赤外線メガネで夜でも不自由はない。すると、使われていない倉庫があった。そこの屋根裏で一晩を過ごすことにした。
朝になって、案の定パトロールがやってきた。鉄条網が破られていたことは当然ばれている。2人が拳銃をもって倉庫内に入り込んできた。倉庫内は暗く、電気もつかない。雄一は倉庫の出口近くに身を潜めていた。パトロールの2人はだれもいないと思い、拳銃を下ろしたところに、雄一の飛び蹴りがさく裂した。2人目は回し蹴りで倒した。発砲音は出さなかった。
一人を倉庫内の柱にくくりつけ、着ていた制服を脱がせ、雄一はそれを着込んだ。もう一人はSUV型のパトカーに乗せ、そこで眠り薬をかがせた。これで、パトロールの途中と偽装したのである。そして、何事もなかったように教団本部に乗り込んだ。検問はすんなりと通れた。助手席の眠っているパトロール隊員を見て、すぐに救急室に行くように指示されたからである。雄一はメガネとマスクで顔を隠していた。
だが、パトカーから降りたところで、白い服を着た集団に囲まれた。
「ようこそ、教団本部へ」
皆、拳銃を持っている。雄一の行動は筒抜けだった。
雄一は言うがままに行動するしかなかった。教団本部にある牢屋らしき部屋へ入れられた。反省室というらしい。
「明日、幹部の取り調べがある。それまでおとなしくしていろ」
と言われたが、おとなしくしている雄一ではない。ズボンに入っているワイヤーを使って、部屋の鍵を開けた。扉を開けると監視員がやってくるので、チャンスを待った。
夕食時、監視員が粗末な食事を持ってきた。雄一の部屋の扉の小窓にそれを置き、背を向けた瞬間、雄一は扉を開け、監視員の首を絞めた。一撃必殺の技である。
反省室から出た雄一は、換気口に侵入した。換気口は元通りにした。そろそろパトロールが気づくころだ。まずは、明るい部屋をさがして移動する。
すると、人の声がする部屋の上にきた。コントロールルームらしい。モニターがいくつもあり、監視カメラの映像が映っている。
雄一は、別の部屋を探した。次の部屋は食堂だ。スタッフしかいない。廊下では走り回っている音がする。雄一が脱走したのはばれてしまい、探しているようだ。
三つ目の部屋は寝室だ。ここもだれもいない。そこで、雄一は部屋に降りた。ロッカーにある教団服に着替える。廊下に出て、雄一も走り出す。侵入者をさがす振りをする。すると、ボディガードが2人立っている部屋を見つけた。
(何かある)
と直感した雄一は、通り過ぎてから、スキをみて戻った。そして、通り過ぎる振りをしてボディガード2人を倒した。拳銃も2挺奪うことができた。
扉を開けると、長い廊下があり奥の部屋にたどりつくと、頑丈な扉がある。簡単に開きそうにはない。だが、中から扉があいた。2人のボディガードが発砲してくる。撃ちあいとなった。監視カメラに雄一の姿が映っていたのだろう。雄一は素早く体を動かし、相手に接近し撃ち倒した。
奥には個室が広がっている。まるでホテルのような雰囲気だ。小窓から見ると、女性がベッドにいたり、化粧台の前にいる。
(これが奥の院か)
と雄一は察した。一番奥の部屋に行くと、またもや頑丈な扉がある。簡単には開かない。そこでまたもや換気口に入って身を隠した。そこに数人の教団メンバーが駆け込んできた。
「教祖、異常ありませんか?」
とインターホンでどなっている。
「異常ない。なにを騒いでいる?」
「捕まえた不審者が反省室から脱走しました。教祖直属のボディガード4人も倒されました」
「なに! あの屈強な4人がやられたのか。ここは大丈夫か?」
「この部屋には簡単に侵入できません。我々がここでガードします。中からは開けないでください」
4人の教団メンバーがその場に残った。その中の一人が換気口を怪しみ、のぞきにきた。その頭を雄一は吹き飛ばした。残った3人の内、一人は援軍を呼びに走る。残る2人と撃ちあいになった。敵はメチャクチャに撃ってくる。その内に弾が切れた。そこで雄一は換気口から飛び降り、一人をぶち倒し、先ほどインターホンで話をしていた男を羽交い絞めにした。
「扉を開けろ。でないとこのまま首をへし折る」
と脅すと、インターホンのコードをプッシュした。扉があく。すると、マシンガンの銃声がさく裂する。雄一は男を盾にして、その場に転げ、起きざまにマシンガンを発射した男を撃ち抜いた。それ以外に男はいなかった。小柄な猿みたいな顔の貧相な男であった。
(こいつが教祖なのか)
と疑いがありながらも、窓を開け、そこから脱出した。
翌日、教団が解散声明を出した。理由は教祖の急死ということであった。教団本部が襲われたことに関する発表はなかった。その後、幹部が類似した教団を作ったが、ひところの勢いは見られなかった。
これにて任務完了である。
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