Chapter 24  出発

「出発前に行きたいところがある」


 真剣なまなざしで述べるアルマ。プラムに場所を教えてもらい、全員で向かった。復興に勤しむ村や修道院とは違い、そこは静寂に包まれている。その場所の名は、墓地。

 多数の墓石が並ぶ敷地内をゆっくりと歩く一同。アルマの視界に記憶にある名前が入り込んだ。


「ここにリリーが眠っている。で、隣がお前を庇った花屋の婆さんの墓だ」


 両方の墓に対し、手を合わせるアルマ。その隣でガーネットも手を重ねて祈る。


「やはり人の死を悼む心は宗教や世界を超えるものですわね」


 その祈りはしばらく続いた――


 自分が動けたら……、自分がもっと力を使えたら……、自分がもっと強ければ……。この霊園の墓石はどれだけ少なくできただろうか。この先の戦い、犠牲を出さないようにしなければ。そう考えるアルマから言葉が漏れ出ていた。


「もっと強くならないと……」


 





 犠牲者の墓参りを済ませた一行は、村の出入り口の前にたどり着いた。修道院に併設された霊園から村の玄関まで、歩いてきた時に見えた人々はたくましいものだった。村や修道院の修復に精を出していたのだ。

 破壊された門の前で突然、ディーアが立ち止まった。


「どうしましたの?」

「これ魔王討伐の旅の門出じゃん? 気合入れるために円陣組もーぜ!」

「円陣?」

「丸く並んで『おー!』ってやるやつ、で合ってる?」

「そう、それ!」

「やろう。なんか面白そう」

「なんで先生が乗り気になってんだ……」

「決まりだな!」


 開けた場所に移動して、地面に剣を垂直に突き立てるディーア。その柄頭に手を乗せた――


「オレは、世界最強の剣士になって、勇者の最高の相棒になる!」


 次いで、プラムがディーアの上に手を重ねた。



「私は、先生としてアルマ君を完璧に育て上げる。そして、指輪の勇者をアルマで終わりにする!」


「主の解放……。いや、シトラス教徒じゃなくて私個人として答えるべきですわね。私は、魔王軍を退け、今この瞬間も苦しんでいる人々を助けますわ!」


「各所名産品食べ放題……じゃなかった。ボクは、みんなを守り抜いてみせる!」


「チッ、俺もやんのか……。魔王軍とかいうクソ共を根絶する。あと……、魔法理論の真理に辿り着いてみせる」


そして、最後にアルマが手を重ねた――


「僕は、指輪の勇者として、あの人のため、魔王を討ち取る!」

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