第22話 『神の赦し』を請う仕事【後編】
「神父様と聖女様は」
「はい……それが、お二人ともこのタイミングで、
〝バカンス〟に」
「ど、どういうことなの……!!?」
「ば、バカンス!?」
騎士セリバーが感じた違和感はそれであった。
本来であるならば、神父と聖女はどちらかが必ず派遣されていても可笑しくはない状況であるにも関わらず、その片方のどちらの姿はどこにも見受けられなかった。村内ではその姿は確認ができなかった。
その理由はまさかのバカンス。国外旅行、バカンスである。
そしてさらに、なんと帰ってくるのは一か月後なのだと。
聖女はそう、とてもきまりの悪そうな顔をしてしおれた。
「修道女さん、あたしたちはアルホゥート生まれの冒険者としてアルホゥートに住む人を助けたいの」
リリフィーにゃが前に出て修道女に迫った。
その黄金の瞳に
リリフィーにゃを先頭にユリィと騎士セリバーをとある少年の元に通した。
少年の手を握る母親らしき人と、はぁはぁ……と残りの寿命から気管が
リリフィーにゃの手が少年の手の上から胸に当てられる。
その少年には、一目でわかるほどにドス黒く絶対に人間が触れてはいけない〝穢れ〟が纏わり付いているのがユリィには、ユリィの左眼には視えていた。
「……
リリフィーにゃが手を子供の心臓に置いて唱えると黄緑の淡い光が子供を包む。
「はぁは……ぁ……、ぅ………」
「これは、」
途端に泣きつかれた子供みたいに呼吸が大人しくなる。
「……」
「!! ………次はこ、こちらに!」
リリフィーにゃは老若男女問わず平等に次々と呪いを解いていった。魔力量が不足すると気付けばユリィに頼み、頼まれたユリィはリリフィーにゃに魔力を与え。回復の兆しが見えた村人にも魔力を注いで回った。
「……貴方がたは……一体何者なのですか?」
「何も特別な者では」
「本当に今日冒険者になったばかりなのだろうか?」
「噂では、イリィ様のお弟子らしいぞ?」
「本当か……?」
「あのイリィ様の??」
修道女とユリィが話していると、生者たちの苦悶の呻き。この世の絶望が
いつの間にかそのテントにはべリネールの部下であろう騎士たちがちらほらと、されど修道女を説得させた時よりは確実に集まっていた。
(イリィ様の弟子と広まった途端に人が集まってきたわね……やっぱり凄い人だわ、イリィ様)
疲労を抱え、夢に誘われる直前で、ユリィの手を引く者がいた。
「ぁ………………あ、ぁ、ありがとう……」
「俺たち………生きられるんだ、な……………
アンタの名前、聞かせてくれ……」
ユリィの手を握り起き上がった村人。直ぐに倒れそうになるのをリリフィーにゃが支えた。
「……ゆ、ユリィ………で、そっちはリリフィー」
「リリフィーにゃです」
ばちっ、とリリフィーにゃがおしゃま声でウィンクすると村人は安心したように寝転んだ。
「あぁぁ……カルティアナ様………有り難う御座います……貴女方は神の遣いですか……?」
「あたしたち、今日から冒険者の
「ぐぇっ」
これみよがしにとリリフィーにゃは自信満々に自分とユリィのプレートを見せると、ユリィの首が思い切り紐で寄せられ、えずく。
「カ、
騎士達が主となってヘルムの中で目を見開く。
そりゃそうだ、といえばそうなる。
「騎士の皆様、ご案内いただきありがとうございました。村人全員の呪いの解除、終わり………ました」
ユリィが救護用テントから出ようとすれば騎士の一人に、「ヴィルーべリネール様は村長宅にて村長と話をしている」と知らせられたため、
「………………早い、本当に貴女は……」
「ちょっと良いーいぃ? ……感心するのはまだ早いんだけどぉ?」
「……
「ええ」
「ここからが本番だからね!」
「……私達はこれから南にある大星林の墓地に行こうと思います」
お世話になりました、とユリィがお辞儀をする。
「なっ…………分かりました。この現状を目の当たりにして疑うのは、貴女方に失礼というもの
民を救って頂き誠にありがとうございました。……我々はまだ村の事が残っており、同行することは出来ません。しかしながら、偉大なる方解石級冒険者の貴方がたならば討伐することも叶うでしょう。…………女神カルティアナの加護と御武運を」
騎士様が全員私達に敬礼をしようとしたその時だった。
ドドドッ、ドドドッ。
悍ましい死が、そこに迫っていた。
村の門の前で佇むそれは、私たちを目視するやいなや門をくぐり走って向かってきた。
「――――――
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