第15話 勇者の引き立て役
(これでHAPPY ENDなんて目指せるのか?)
「ユリィ!!!」
あれから数日。私は意識がなかった。
師匠が私の手を引き、交代するように前に出て防御壁を張ってくれなかったら私はきっと再起不能だったとキツく言われた。
ベッドから起きて、カーテンを開けると数日ぶりの日光に目を潰されそうになる。ドアの方に目が行き、下へ降りようか、とも思ったが直ぐにその考えは排除した。
パジャマのまま、ドアを開け、階段は降りずに二階の廊下を歩いて遠回りをして地下の書庫へと足を踏み入れた。
そこから何時間か、魔物、魔獣についての本を漁って改めて
私はつくづく自分の首を絞めるのが得意だ。
……恐らくあの
何故か。
私は、混合魔獣、キメラが出来上がるには2通りの工程が存在するのだと知った。
名称として混合魔獣であることに変わりはないけれど〝作り方〟が違うのだと。
死体を掘り返したり収集して縫合し、魂を後入れして作られた混合魔獣がまず1通り目の例として載せられていた。
そして、〝生きたまま〟〝麻酔無し〟で術を施し何度も何度も凄惨な実験を繰り返していく中で相性の良い身体同士を、内臓までそれぞれバラバラに、出来るだけ丈夫に、長生きするように縫合するのが2通り目。
しかし皮肉にも、どちらで作られたかを見分ける方法は、心臓の縫合箇所だけらしい。
前者で作られた混合魔獣には基礎体となる生物の心臓のみを使用するため心臓に傷をつけることはしないのだそう。
しかし後者は、三体を使用するのであれば三体全てに適応する心臓に作り替えなければならない。
なんて効率の悪いことをするのだろう。と思っても、最後に出来上がる時には3体と呼ばれていたものは既に1体と呼ばれている。1体しかない体に3体分の心臓はいつか異常を来すそう。
故に、1体につき心臓は1つ。
何故心臓まで縫い合わせるか? それは前者よりも長生きをさせるため。なのだという。
そして。私が殺した混合魔獣の心臓部と思しき肉片には、二つの複合箇所があった。
最も、生ける者を恨むように、最も、最初の段階で自我を失うように作られた混合魔獣が、必死に最後に助けを求められたというのに、私は拒絶した。
原型が分からなくなるまで身体を弄られ、どこに自分がいたのか理解できなくなるほどに縛られて。
そして、最期は助けを求めた私によって殺された。
私は殺さざるを得なかったんじゃない。生かす勇気がなかった。
師に反する勇気がなくて。身を粉にして死に物狂いで恐怖に立ち向かってくれた同級たちからの期待が裏切れなくて。自分を鼓舞してくれた同級生への申し訳無さが邪魔をした。
「ごめんなさい」
私にできることは、まず同居人たちに許可を取ること。そして次に、あの混合魔獣のお墓を家の隣に作って、毎日手を合わせること。
たしかにこの瞳を持って始める異世界ライフは最高なものになる。そんなの、効果を見れば一瞬で脳汁があふれるほど確信していた。ただこれだけは言える。
それでもこんなスタートだけは望んでなかった。
ところで。
これから幕を開ける私の学園生活はまた別のお話。
それこそ。
この物語を書き記す作者の気が向いたら夜明けを見るだろうということ。
その時は、冒険者の私の成り立ち、他にもたくさんの秘密を探れる機会が巡ってくるでしょう。
これから先の学園生活を積み重ね、人脈がどうやって作り上げられたのか。
実はセイラル様と意気投合して仲良くなったり。
しかしそれらの全ては作者の気が向くまで。
それでは、またいつかお会いいたしましょう。
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