第10話 初見殺しに滾る年頃
さて、どうしよう。
「さっきの凄かった!」
「上級魔法で、しかも一瞬で傷を癒やすなんて!」
「雷もカッコよかった〜!!」
さっきから語彙力低下中の同級生に質問攻めにされてます。
怖いよぉ……助けて〜!!
「あ、ぁの、つ、次の準備があるのでっ!」
「そうだぞ」
「! ……え誰」
コツ、コツ、とゆっくりと人混みを歩いてくる女性。
まるでスーパーモデルがレッドカーペットを歩むように。
いや。彼女が歩くたびに前方に、1メートルずつレッドカーペットが自分で敷かれに行ってるかのように、人々は避け、綺麗な道が作られている。
というか、本当にモデルですよね? 脚が長いっ……!
「邪魔している様で悪いがぁ……聞いていただろう? 次の試合は彼女一人だ。もっと凄くなると思わないか? なら、しっかりと準備してもらわないと。だろ?」
クスッ、と仁王立ちで笑うのは、他とは別格で光が透き通る程に艶めく金色の髪の、私と同じ校章の制服を着飾った学園生。
私達の学年にこんな綺麗な人………いなかったような?
「セイラル様?!」
「どうしてここに!?」
セ、セイラル……?
「セイラル様!」
遠くから執事の様な老人が走ってくる。
「何処に行ったかと思えば
「良いではないかー! ……どうせ次の試合まで時間があるのだ。気になった人材に声を掛けることくらいほんの数秒だろ?」
「数秒で終わる気配でありませんでしたよ……」
はぁ〜あ、と溜め息を着き執事に連行されるように後ろに付かれ、戻って行く……? セイラル……様?
……透き通る様な金色の髪。何やら凄いキラキラの襟章と前飾りを着けた執事……
あれ?
あの髪色に様付け……しかも執事が付いて……いるということは……………私が育ったここアルフォート国の、姫様
「セイラル・カミビラ・アルホゥート」様ではッッ!?
「やばぁ………挨拶もしなかったのですがぁ……?」
「ユリィさん!」
「また……!?」
次は誰ですか! とツッコミそうになると、なんとレアン先生が寄って来る。……危なッ。
「……」
「なんでそんなせっかく洗った枕がお父さんに使われてた思春期学園生みたいな顔するの!!?」
「そんな失礼な顔するわけないじゃないですか」
「っ………まあ、兎に角。さっきの、凄かったよ……あんな魔法、僕でも出来ない。回復と攻撃を両立させれるなんて………、それに。セイラル様にも一目置かれるなんて……将来王宮で働くのも夢ではないかもね……」
「それは困ります」
「なんでぇ!!?」
…………はい確定ですね……将来はゴースト属性。闇霊だけの逆ハーレムしようと思っているのに…!
………はぁ、後ろ盾が強くなる予感はするけど……一周回って厄介……いや一周回らずとも厄介になりましたね。
◇
あれから控え室にようやく戻り、一人で闘うに当たっての作戦を立てた私は今、5人のチームを目の前に、
もうすでに闘技場にいた。
展開が早いですよね、実はこれ、作者が早く〝前置き〟を終わらせたいっていう欲望の現れなんです。でも駄作にならないよう精一杯注意しているらしいですよ。
と、本題に戻りますね。
「さっきの話、聞いたよ〜!」
首の後ろに杖ステッキを掛け手を挙げる金髪ツインテールの女の子が手を振り上げ、ピョンピョン跳ねている。
………珍しいチーム編成……。
なんでしょう。あの隠せない陽キャ感? ぶりっ娘? 怖すぎです。
「ユリィさんでしょお? 私リリフィーにゃあ!」
「………へ?」
リリフィー……"にゃ"?
あの子獣人のハーフ? にしては獣感が全く無い……。
と、とにかく名前を知っていただいてくれるのは有り難い………名乗る必要なくなったし。
「し、知っていただいてるようで……有り難う御座います……」
「試合も見てたけど凄かったぁ! 一人で殆どやってたよね! 私ぃ……そんなユリィさんにお願いがあるんだぁ……」
「お、お願い……ですか?」
「そぉなのぉ!」
私にお願いなんて……特に今日以外は活躍してはいないし
リリフィーさん? ……とは違うクラスだったし………陰キャだし。そんな私に何の御願いが……?
___次の瞬間、私は気絶する程恐ろしい経験をする。
「……にひっ、」
まるでアニメのケモミミ少女のように笑うと、彼女は、
「貴女が今日の大会で優勝したらぁ、私を将来パーティーに入れて欲しいの!!!」
「……ほっ、ほぇぇえええ!?」
そう宣言した。
いやいや私が勝ったら!? どーゆーことです?!
「でも、私達だってぇわざと負けるわけにはいかないしぃ? だから本気で行くからぁ!
「わっ、まっ!」
危なッ………!!!
なんとか反射で避けられたけれどこれ、吸収系魔法……。しかも闇魔法。てことは……
アンデッドも召喚可能!?
っ……違う違う! ……
「
闘技場の地面からゾンビのように湧き出て人の形を成していくと、リリフィーさんに襲い掛かる大量の
あの傀儡達は私の指先から出ている数ミリの糸とあらゆる関節が繋がっている。
「うにゃっ、……
「字が不穏ですね……はは、………でも、分かりました、私も逃げる為に一人で闘ってるんじゃ、ないので……!」
「ふはっ、………
足元にかなり広い深淵が現れるが………恐らく上級魔法だと思う。
「っと、……これは、どうしましょうか……」
「ふへへぇっ、優秀な
「!? …………っ……!!」
キィィン…
私の糸とチームの中に居た戦士ウォーリアの剣が交わる。
「なッ……硬ッッ!?」
「っ、………! ひどいじゃ、ないですかっ」
「流石に私だけじゃ無理って分かってたよぉ。………だからぁ、皆ぁ、魔力完全MAXだからさぁ、ね? ユリィさん!」
「チッ………ふはっ………………とんだ初見殺しですね」
性にも合わずに人前で笑うなんて、師匠の前で以来でしょうか。
闇の上級魔法を使う
大剣を素早く振るう身軽な
火炎魔術を付与した特殊効果火矢を放つ
大型魔獣を手懐ける大型魔動物専門の
四人の魔力の盾に護られながら回復魔法を掛ける
こんな高Lv.じゃないと攻略不可能な初見殺し、隠れてやっていたすんごい難しいゲームにも出てこなかったですよ。
「こんな無理ゲー……愉しくなるに決まってるじゃないですか!!!!」
無理ゲー攻略プレイヤーの血が滾る!!!!!
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