29話 言い訳

 復讐…だって?


「誰にしたんだ?」


 もし、あのAランクパーティーなら…ついさっき助けたばかりじゃないか。


「決まってるでしょ。あのAランクパーティーのことよ」


…やっぱりか


 罪悪感というべきか、困惑というべきか、言語で表せないような、そんな気持ちの悪い感情が僕の中を駆け巡る。


「理由はわからないけど、今の人間たちは解毒の手段が乏しいじゃない?だから、あいつらの依頼場所に先回りして、現地のモンスターたちに協力してもらったのよ」


 リンネの口からは、淡々と事実が明白になっていく。感情をなくしてしまったのではないかというほどただただ言葉が紡がれていく。


 拒絶することも塞ぐことも出来ない。


「簡単に罠にかかってくれて助かったわね、慢心していたのかしら」


「(単純にいえば、毒の塗られた石を落としただけですもんね)」


 素直に復讐が出来たことを喜べる自分がいたらどれほど楽だっただろうか。


 リンネとは、復讐を手伝うという約束で、テイムさせてもらっている。ましてや、その相手を助けたとなれば…


「まあでも罠に掛かったのはリーダーだけだったから、次はトミイクもいっしょにできるわね」





「その事についてなんだが…」


 どうして隠そうと考えていたのだろう。


「「?」」


 二人とも疑問符が頭に浮かんでいるかのように首をかしげた。


「そいつのこと…さっき助けたんだ」


 助けてなんて逃げるようなことは言わない。


「(え?)」


「は?」


「大通りで倒れていたところに通りかかったんだ。同業者だし、助けない理由はないと思ったんだ」 


 リンネは、鳩が豆鉄砲くらったような顔をしている。いや、それだけでなく怒りに似たものも混ざっているようだ。


「あんた…復讐を手伝うって言うのは嘘だったの?」


「嘘じゃないさ。むしろ前進したかもしれない」


 我ながらひどい言い方だと思う。けど、後で軋轢あつれきが生じるよりはましだと思う。


「彼らのうちの一人が『上からの命令』と言っていたんだ。つまり黒幕と繋がっていると考えてる。ならここで恩を売っておいて損はないだろ?」


 言い訳もいいところだ。こんな理由でリンネが納得してくれるわけがない。


「(確かに言っていましたね。つまりあいつらを泳がせて元凶を特定するということですか?)」


「まぁそんなところだな」


 ラミィは俺と同じく現場にいたのだから、リンネとしてもこれで信じてくれるだろう。


「まぁ、そうね。トミイクの考えも一理あるわね…」


 こうして、特に仲違いになることもなく、1日は終わりに向かっていった。

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