30話 昇格とその影に

 翌日、いつも通りギルドに依頼を受けにきたのだが…


「おめでとうございます!Dランクに昇格です!」


 依頼書を壁から取り受付に持っていくと、依頼の受理の前にランクアップが伝えられた。


「(おめでとうございます!)」


「やったな!トミイク!」


 二人は喜んでいるが、僕には引っ掛かる点がある。


「…本当ですか?」


 確かにランクが上がるのは喜ばしいことだけれど、Eランクに上がってから受けた依頼は洞窟調査のみだし、しかも失敗している。


 それにEランクに上がるまでに数ヶ月かかったのだからDなんて1年は掛かると思っていた。やはり誰かと間違えたのではないか。


「本当ですよ。フエムさんからの推薦です」


 意外だな…いや、そこまで意外なことでもないかも知れない。僕のランクがEに上がるのがこんなに早いということは、少なくとも依頼の面での評価でないことはわかる。


「彼曰くかなり強いらしいじゃないですか。その調子で頑張ってくださいね」


 フエムからそんな助言があったのか、ありがたいな。


「ありがとうございます。二人もいつもありがとうな!」


 二人から頷き返される。さて、Cランクに向けて、まずは目の前の依頼を…


「おいこらぁ!」


 少し苛立ちを含んだ大きい声が後ろから聞こえてくる。びっくりして反射的に後ろを振り返ると、見知らぬ男がこちらを睨んでいた。


 彼だけではない、ギルドの中にいるほとんどのがこちらに嫌悪や驚嘆などの視線を送っていた。声からしても知人ではないと考えたため、僕に対する怒号ではないだろうと思っていたが、まさかほぼ全員から好ましくないといった風な表情がされているなどおもわなかった。


 しかし、そんな態度を取られる理由が思い付かない。


「テイマーがDランクだと!?冗談はよしてくれ」


 彼は確かにこちらに向けて話している、しかし、目の焦点が僕に合っていない。


「冗談ではないですよ。職業によって差別するならば、ギルドとしてはそういう風な性格として"性格に難ありリスト"にのせますよ」


 答えたのは受付の人だ、テイマーとはそこまで嫌われている職業なのかと一人勝手に思っていたが、彼の考えはどうやら違っていた。


「別にそいつが助かるなら俺がリストに載るくらいかまわねーさ」


「助かるってどういうことですか?」


 思わず聞き返す。別に、冒険者として実績は積んできたと思っているので、ランクが上がって、依頼の難易度が上がっても大した問題にはならないはずだ。


「テイマーってのは体を鍛えられないんだよな?そんな制約持ったやつがDランクの依頼なんて危険極まりないだろ!」


 彼は心配してくれているようだが、僕の仲間たちが今さらながらDランクに遅れを取るとは思えない。


「ご心配ありがとうございます。しかし僕の仲間たちは既にDランクの魔物は倒せますので、危険には値しません」


 と、説明すると。彼は心底呆れたというように肩をすくめてから説明してるれる。


「だがなぁ、お前の仲間たちだってお前を庇いながらだと戦い辛ぐなるから、仲間の強さは1ランク上くらいじゃないとお前が死ぬぞ?」


 至極全うな意見だと思う、けど僕らの目指しているのはSSSランクだ、こんなところでくすぶっていてはいけない。


 言い返そうとしたとき、馴染みのある声が入口から聞こえてきた。


「その心配は要らないぞ!」


 フエムの声が建物の中で響き渡る。


「そいつは自分で戦えるからな!」

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