25話 全てパズルのようにつながっていく

 翌朝、ラミィが話があるということなので、いつもより早めに起きたが、僕よりも早くラミィは起きていた。


 宿には入り口を右手に曲がった所に食堂がある。(入り口を直進した先の階段を上がると、宿泊部屋の並ぶ廊下に出る。)その机のうちの一つに向き合って腰をかける。


 ラミィは椅子に乗り、体を縦長に伸ばしている。座る時いつもその姿勢だけど疲れないのか?


「フエムさんの言っていたこと覚えていますか?『討伐依頼っていうの嘘だ』と言っていましたよね。」


「ああ。」


 いま、「は」を強調していた気がする。


「おそらく、観察依頼…とでも言えばよいのでしょうか。私という得体の知れない生物を害に値するかどうか。そして、人類にとってと。」


「…考えすぎじゃないか?だって、テイマーの扱う生物は他の冒険者と同じように違反行為…暴力とか窃盗とかしない限りは討伐されないというルールがあるんだよ?」


「直前に私は進化しました。そしてそのあと、他の冒険者の方にカードで鑑定された時に、私はランクを偽ってSと表記させました。トミイクさんがより早く冒険者のランクを上げられるために。」


 その声色は少し低いように感じる。


「何でランクを上げたかったんだ?身の丈にあった依頼を受けるための制度なのに。」


 それもSランクの魔物なんて使役していたら、当然Sランクの冒険者にされてしまう。僕らにとってまだ別次元の世界だ。


「オーシャンウィーゼルの件について、討伐したことをこと覚えていますか?」


「Eランクに上がることがのを知っていますか?」


「Fランクには事を知っていますか?」


 ラミィの言葉たちには、どこか思い当たる節がある。


「私は…トミイクさん、ように思えました。」


 とラミィは言うけれど、僕は優しい同業者冒険者に多く会ってきた。だからそうは思わない。


「やっぱり考えすぎなんじゃないか?」


「いえ。トミイクさん自身はどう思っているのかはわかりませんが、貴方は他のテイマーと比べて従魔にとても親しく接してくださっています。だからこそ、そんなトミイクさんを見た貴方を危険視して?」


 従魔に優しくしただけで嫌がらせとはどういう事なのだろう。


「なぜ僕が危険視されるんだ?別にまだ対して強くないぞ。」


「幻像狐の言っていたことを覚えていますか?簡単に言えば、人間は精霊を根絶させようとしている。ここで、ゴブリン村の件についてです。あの爆炎を覚えていますか?明らかな殺意…という意図があったと思います。」


 これまでの冒険が、全てパズルのようにつながっていく。


「リンネさんは精霊です。人間からしたら確実に殺したい相手です。ですから、従魔に対する扱いが雑なテイマーならば、テイムされれば勝手に死んでくれます。しかしトミイクさん、。だからこそ、ギルドは貴方を排斥しようとするのです。」


 僕はラミィの話を黙って聴いていた。額には恐らく汗が滲んでいるだろう。


「そしていつかは武力行使…とまではいかずとも、もっと強く圧力をかけてくると思います。だからこそ、私が抑止力になればよいと思ったのです。」


 纏めると、ラミィは僕が冒険者を続けるために、ランクを偽ったということだろう。


「しかし、結果としては逆に、トミイクさんとリンネさんを危険な目に遭わせてしまいました。特に、リンネさんは、仲間になった理由が"復讐"なのですから…」


「フエムさんに襲われた時、『詳しい話は後でリンネさんに聞いてください』と言いましたがその内容は、『朝のギルドの中で一部の冒険者に殺意を向けられました。もし、私のせいで二人が危険な目に会うようなことがあったら、。』です。」


「トミイクさん…リンネさん…本当にすみませんでした。」


「別にいいのよ!」


 気付くとリンネも起きていて、後ろにいた。


「結果としてこうして3人欠けることなく生きているのよ?ならいいじゃない!相手が本気じゃないけれどSランクの人と戦ういい経験になったし。」


 リンネはとても明るい表情で、高い声で話している。ラミィを励ましているのだろう。


「僕はSSSランクを目指す冒険者だよ!こんなの些細なことだよ!」


「それに僕はこう思うんだ。生きている間に起こることは全て自分にとって良いことなんだ!って。一見すると、大失態かもしれない、けど、別の側面やもっと広い見方をしたらとても良いことかもしれない…でしょ?」


 果たしてこれが正しい解答だったのだろうか。しかし、僕はこれ以上の励ましや、責任を感じさせないような言葉は思い付かない。


「二人共…ありがとうございます。」


 ラミィの目元(?)には、涙が浮かんでいた。


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