中間疾走は華麗に

23話 助っ人

 洞窟を出て、山林を抜け、町まで戻ってきた。


 町の近くの洞窟にSランクの魔物(?)が出現したことはギルドに伝えた方がいいだろう。フエム一人では荷が重い。


 しかし、今この地域にフエムと肩を並べて戦える人がどれほどいるのだろう?


 報告したところで人手がなければ状況は何も変わらない。ただ、ほんの少しでも状況がよくできるのならば、現場に立ち会った人間として、力になりたいと思うのはいけないのだろうか。


──────────────────────────────────────


 冒険者ギルド内には、いつもよりも多くの冒険者がいた。きっと洞窟から避難してきた人たちだろう。


 受付に並んでいる人は奇跡的に一人もいない。


「どうされました?」


 受付の前に来ると。早速職員の人に心配された。いつもと違い中年の男性の方だった。


「西の洞窟に、Sランクの魔物が出現しました。フエムさんが、交戦していますが念の為に、Bランク以上の冒険者の、方々に加勢していただく、ようにギルドからお願いできませんか?」


 若干息を切らしているから、変な区切りになってしまった。


「君、名前はなんというのかね。」


 そういいながら、職員の人が受付台から紙束を取り出している。


「飼原富育です」


 パラパラと紙の捲れる音がする。気付いたら、周りの人々は誰も騒いでいなかった。


「……よし。君の話は信憑性が高い。」


 ふと、紙束の中から一枚の紙を取り出す。そこには『西の洞窟の開拓』と書かれていた。


「君の受けていた依頼はこれだね。」


「はい」


「わかった。報告に感謝するよ。」


「ありがとうございます」


 すると、その職員が紙束をカウンター台下に置き


「私が助けてくるよ。」


「えっ!」


 そう言った職員は立て掛けてあった杖を持ち、消えてしまった。


 あの人だけで大丈夫なのだろうか。




「不安そうな顔してんな。お前。」


 近くの円テーブルを囲んでいた4人組のうちの一人が話しかけてきた。


「そりゃ不安ですよ。」


 仮にあの人がSランクでも、あの狐の余裕そうな表情を思い出すと安心はできない。


「安心しな。あの人、先月までSSランク冒険者だったんだぜ。」


「え?」


え?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る