21話 真実は嘘の中で

「立ち去れと言われても、同じ道が繰り返されているかもしれないんだ、逆に君は抜け出し方を知っているのか?」


 目の前の幻影狐に尋ねてみる。今はここを出ることが最優先だと思ったからだ。


「来た道を辿って戻ればよい。」


「そうですか。ありがとうございます。」


 と言って踵を返そうとしたとき。


「なぜこんなことしたんだ?」


 フエムが幻影狐に問いかける。


「あと坊主、味方以外に背中を見せるな。そいつは親切な"敵"だ。」


「はい」


 フエムさんの言う通りだ。しかし、敵とはどういうことだろう。


「なぜ…か。人間は住処に無断で他人が入り込んでも容認するのか?少なくとも我々は許さない。」


 なるほど、この近くに幻影狐たちの巣か何かがあるのかな?


「そして、貴様ら人間は他の精霊達を根絶やしにしようとしているのだろう?ならば、我々は抵抗する権利がある…否、我々精霊は人間を根絶やしにする責任があるのだ!」

 

 フエムさんの表情が曇る。




「…なかなか情報を集めてるみたいじゃねーか。……ただなぁ、そこまで知ってるなら俺はお前達を殺さなきゃいけねぇんだよなぁ!」




 予備動作を挟まずに、フエムさんが幻影狐に斬りかかる。しかし、幻影狐は避けようとしなかった。


 斬撃が幻影狐に当たった瞬間、幻影狐の体が霧散した。


「愚かだな」


 僕らの背後から声がする。


 そこにはEランクの冒険者ごときが出会ってはならない存在がいた。


 幻像狐【S】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る