20話 転
死を覚悟…いや、あの二人が逃げる時間を少しでも稼がなければいけない。
手元に残された煙幕を死んだ後にぶつけるために勢いをつけて左腕を引く…
が、左腕を捕まえられて引けない。同時にフエムさんの得物が右腕を切断…………することはなかった。
「…強くなったな!」
振り返ると、ニィ…と音が聞こえそうなくらい明るい笑顔でフエムさん…いやフエムが居た。
「「「…え?」」」
え?……………って思う前に言ってしまった。
「え?ってなんだよ。え?って。坊主、自分に自信を持って生きていく方が人生は楽しいぞ!」
え?しか言えないでしょうが。
「(戦わないのですか?)」
「ああ!
「じゃあ依頼も無しにわざわざ来たのですか?」
ついさっき「冒険者は依頼以外でこんな洞窟来ねーよ」って言ったのはあんただろ!
「もちろん依頼があったから来たんだぜ。『冒険者は依頼以外でこんな洞窟来ねーよ』ってついさっき言っただろ?」
「…何の依頼ですか?」
さっきまでの戦闘が依頼と関係なかったら
「坊主を連れ戻しに来たんだよ。ギルド直々の依頼でな。この洞窟にAランク相当の魔物がいると情報が入ったもんだから、坊主含めた全員を避難させてついでに討伐もしろって言われたわけだ。他のやつは既に居ないから安心するといいぜ。」
色々と情報量が多くて疲弊仕切った脳では理解できなかったが、とりあえず逃げればいいのか?
「(皆さん、気を付けて。)」
フエムと話ている(?)間にラミィがなにかに気づいたようで、一点を凝視している。
ラミィの視線の先には…何も居ない。
「よく気づいたなスライム!」
フエムはそう言うと何も居ないはずの場所に火の玉を放つ。
火の玉が着弾した直後、
後ろに跳び退いたようにも見えたそれは、土煙がだんだんと晴れるにつれて容姿が分かってきた。
「っ!精霊!」
そう声を上げたのはリンネだった。
目の前には、体毛が狐色で、狐耳と太くて短い尻尾が一本ある魔物がいた。
幻影狐【D】
「拍子抜けだなぁおい。Aランクがいるかもって言われたから来たのによお。」
フエムが愚痴るがどうでもいい。こいつも精霊なのか?
「ここから立ち去れ、ニンゲン。」
幻影狐が立ち去れとしゃべったが、道が繰り返されているので帰……喋った!?
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