11話 異常な人材

 本来は敵に接近していることを悟られないようにゆっくり近づくべきなのだろう。


 けど、一刻を争っている事態かもしれないから、こうして走って移動する事は正しい判断だと思う。


 音が近付いてくる。金属音がいくつか重なったような音が…おそらく複数人が戦っているのだろう。



 [怪我人は下がれ!]



           [援護は?ないのか!]



   [クソが、回復薬が尽きた!]



 叫び声が聞こえてくるようになった。戦況は悪いようだ。


 「見えた!」


 何かと戦う集団が木々の隙間から見える。そして恐怖した……集団が戦う相手を見て。


 木馬の兵士【B】


 つい昨日倒したオーシャンウィーゼルとは比べ物にならないぐらい強い。木製の馬に乗った木製の鎧を身に纏う騎士のような見た目をしていて、威圧感が強く、しかも、木々を操って戦う魔物のため、森の中にいる今は下手をするとAランクの魔物も屠れる。


 「まずい!二人とも、正面からは勝てない。」


 二人に注意を促すと同時くらいに奴に見つかってしまう。


 戦っていた集団は最早誰も立っていなかった。


『汝我をしたがえに来たのか?』


 木馬の兵士が問いかけてくる。


「いいや、違う。」


 この問答に失敗したら確実に襲って来る。そう思ったからできるだけ正直に答える。


『ではなぜテイマーがここにいる。スライムを連れているではないか?』


「解毒球根を採取しに来た。」


 堂々と答える。


『そうか…では隣の妖精も解毒球根を採取しに来たのか?』


「ええ、一応私はテイムされてますもの。」


 リンネは極普通のことだというように答える。


『なんだと?本当か?』


 半信半疑といったように騎士木馬のが身を乗り出して問いかけてくる。


「二人ともテイムモンスターだ。」


 今度は僕が答える。


『オーガは魔物ではないからテイム出来ないはずだ。人間の間では常識だろう?』


 え………


 …


 …確かに、ゴブリン集落の一件でゴブリンは妖精だったことがわかった。しかし、オーガはどうだろうか…等と考えたことはなかった。


 思い返すと、そもそもテイムとはどうやって行うのだろうか。テイマーになる前に読んだ本には【モンスターと心を通じ会わせる】としか書かれていなかったと思う。


 モンスター以外の生物も【心を通じ会わせる】ことができればテイムできるのだろうか?


 『汝はテイム魔法やテイム用魔遊具は所持していないのか?今まで出会ったテイマーは皆そういった類いのものを使っていたが。』


 …そんなものがあるのか?知らなかった。


 だとすると僕は本当にテイマーなのだろうか…

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