4話 今は最善を

 わかってしまったからには助けたい、けれどできない。相手はAランクだ。実力が足りない。この世界は弱肉強食だから。



 悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔し…



 いや、助ける。


 いま奴らAランクパーティーの前に飛び出してもどうにもならない。今負の感情に飲まれても現状はなにも変わらない。そうわかった冷静になった僕は、今できることを全力でしようと自然と集落の反対側まで来ていた。


 この集落は木の板でできた壁で覆われているので、中から逃げることが難しい。そもそも、彼ら自身の集落が襲われているのだから彼らゴブリンは逃げずに戦うだろう。だからこそ、まだマーキングされていない僕が逃げ道を確保しなければならない。


 早速集落の壁をスライムに壊してもらう、中には混乱するゴブリンたちがいた。


「逃げて!」


 言葉がわかるのか。生存本能なのか。どちらかなのかは分からないが、ゴブリンたちが逃げようと壊した壁に向かって走ってくる。あとは逃げるだけ…の筈だった。


 彼らゴブリンが壁を越えようとしたとき、集落が炎の柱にのみこまれた。皮肉なことに、制御が上手かったのか、壁の外は一切燃えなかった。


「…助けられなかった」


 己の弱さをこれでもかというほど自覚した。


 申し訳ない。


 自分が憎い。


 Aランクパーティーはもういなかったので。形の残っていたモノは埋葬し弔った。


 今のままではだめだ。


 なにも出来ない。

 

 1日でも早く強くなろう。

 

 と決心したとき。足音が聞こえてきた。



 リトルオーガ【E】



「え?」


 突然現れた幼女は焼けただれた村を見てそう呟いた。


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