第29話 蠢く?双子の思惑...。
魔王城 リリュスの部屋
「クフフッ!流石は雫様。そのカリスマ性ならば疑いは無かったのですが、想像以上ですね。順調に好感度があがってます。」
雫の姿が映し出された水晶を眺めながら満足そうにリリュスは呟く。
『魔力の経路を把握する...なんてことが可能とは思えないけど。彼女が信頼を得れたのであれば結果オーライと言うわけか。』
「その言葉とは裏腹に内心は納得がいってないようですね。ノワール...。」
『....。』
通信魔法越し、書庫の主であるノワールは何かが腑に落ちない様子だったが、僅かな無言を終え、自らの心情もとい意見を語り出す。
『どうせ全員には回るだろうから、不満は無いけどさ。だけどリリュス...何故、ペペとルルと言う魔王君の近くに居る、彼女たちを優先しなかったんだい?それが少しね...。』
確かに
「知っていますか?ノワール...人間と言う種族はどんなに厚く信頼を築いても、一度の裏切りで簡単に崩れるらしいんです。」
『...?何が言いたいのかな?さっぱりなんだけど。』
「不覚にも雫様が人間であるかぎり、裏切りは心への大きなダメージになってしまうのです。だから大切にしなくてはいけません。」
パチンッ!!
リリュスが軽く指を鳴らす。すると水晶の映像がパッと切り替わる。そこに映っていたのは1人のメイド。場所は詳しくは確認できないが何処かの檻の中だ。
『...なるほどね。理解したよ。ちなみに..これを他の配下もとい魔王君は?』
「流石は
パチンッ!!
リリュスは再び指を鳴らす。映像も再び切り替わる。最後に映されたのは自室に戻った雫とそれを迎える2人のメイドだった。
普通ならば違和感などは感じない。だが直前の映像を見ていた
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「はひぃ~。今日も歩き回ったから疲れたよぉ~。夜のご飯まで休憩!」
ボフッ!とベッドに倒れ込む私。柔らかい布団は日差しの匂いをよく吸って心地好さが格別だ。とても有能なメイドさんには感謝しなくちゃ。
「あらあら...よほどお疲れかしら。ご主人様。だけど寝転ぶのであれば、衣服にシワが付かないように、せめて部屋着に着替えて欲しいかしら。」
「良いではありませんかお姉様。本日、ご主人様は東奔西走とは行かずとも頑張ってらしたのですから...。」
「そうだよ。流石はルルさん!分かってるねぇ~。ペペさんは少し見習わないと駄目だよ?」
「ほら見なさい!ルルが甘やかすから調子に乗ったわ。ダメ人間になったらどうするかしら!」
ダメ人間って酷い言われよう。ペペさん時々の毒舌が厳しいですよ。
グイッ!
「おおっ!?」
「ご主人様は魔王なのですから、常に誰かに見られてることを意識して、身だしなみは整えておかなくてはいけないかしら。面倒だと言うならばペペが着せ変えますかしら。」
シュルル...。ペペは手慣れた様子で衣服の紐をほどきながら呟く。いや、流石にそこまでさせるわけには。
「ちょっ!ペペさん!?着替えぐらい自分で出来ますから。」
「ご主人様は疲れてるようなので。それにペペはルルを見習わないといけないかしら?」
うわぁ...しっかりと根に持ってる。こうなると逆らえないんだよね。なすがまま委ねるしかない。
「お姉様は不器用なのですわ。本心はきっと心配してるのでしょうが、素直になれない年頃と言うやつです。」
「なるほど。そう言うことでしたか~。」
「ルル!?一体何を言ってるのかしら?ご主人様も冗談なので気にしない...ッ!?」
ポスッ。とペペの言葉を遮るように私は脱力して背中を彼女に預けた。突然の行動にペペは困惑の表情を浮かべて固まってしまう。
「いつも綺麗にしないとだもんね。だから私は有能なメイドに任せます!って思ったり?」
「~ッ//!!甘えん坊な主人を持つとメイドは苦労するかしら!...コホンッ!ペペは優しいので今回だけ...かしら。」
「はい!お願いします!」
「まったく...」
ぶつぶつと文句を呟く彼女の声色は嬉しそうで見えないけど恐らく微笑んでるんだろうと思う。...だからこそ私は気づかない...背後に立つ
「雨宮雫...貴女がもっと早く魔王になってくだされば...。」
雫の髪を撫でるペペが小さく漏らす。その視線が黒髪から徐々に細い首に向かう。そして両手が雫の首を掴もうとした瞬間。
ド~ンッ!!ガシャ~ン!!
「マオ~!!あそびにキタゾ~!」
「ミリーちゃん!?扉は壊すんじゃなくて、ノックして開けるって教えたよね?」
「ソーなのか。ミリー忘れてた!!」
「チッ...。邪魔を...」
轟音と共に扉を吹っ飛ばし現れたのはミリーちゃん。礼儀とかよりも力加減を教えた方が良いのかな?...少しウトウトしてたんだけどなぁ~。
「ミリー様?ご主人様に何かご用でございますの?申し訳ありませんが現在お召し変え中ー」
「ルル!構わないかしら。完璧なペペは時間を掛けない。丁度終わったところかしら。」
「もう終ったの?流石だね。ありがとう!それじゃミリーちゃん遊ぼっか?ペペ達も行く?」
「いえ、遠慮しておくかしら。食事になればお呼びしますから、行ってらっしゃいませ。」
ん?何故か少し不機嫌そう?...あ、ミリーが扉を壊したからか。ならば触らぬ神に祟りなし。私はミリーを連れて素早く部屋を出るのだった。
「お姉様...しくじってしまいましたわね。」
「そうね。...だけど、これで終わりじゃない。再び訪れる時を待つかしら。」
残された2人がそんな会話をしてるのに気付かずに...。
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