第27話 古来よりの知恵で勝ち取るもの!

「はい!3人共そこまでだよ!!」


精一杯の声を張って喧嘩真っ只中の子供たちに呼び掛ける。すると私の声が届いたのか、ほぼ同時にピタッ。と動きが止まった。


「止めてくれるな、お前様よ。今日こそはチビ共に解らせるのでな。」


「ふふっ...じぶんに...いってるの?すうじだけの...おチビちゃん。」


「主!ちょっと待ってて。直ぐに雑魚を黙らせるから。」


うん...簡単にはいかないよね。苦労するのは分かってたし。でも私も簡単に退いたりしないって決めてるからね。頭を使わせて貰うよ。


「そっか...止める気は無いんだね。じゃあ。いいか...せっかく3人の為にお弁当を作ってきたけど、私1人で食べようかな?」


わざとらしく物で釣る作戦。こんな単純なのには引っ掛からないかな...と思ったけど。動きが再度止まったし。年相応だね。(シャーロットは違う筈だけど...)


「3人は喧嘩してていいよ~?私は食べてるから。あ~でも結構多く作っちゃったし、他の皆にあげー」


「ちょっと待つのじゃ!お前様!妾達は喧嘩してた訳では無いぞ?のぅ?」


はい。ヒット!最初はシュリカかと思ったけど、シャーロットが食いついた。でも1人掛かれば必然的に...。


「そうだよ...!ボクたちは...じゃれてただけ...ねっ?」


「勿論!主が訓練を見学したいって言ったのに喧嘩で台無しにするなんて真似はしないよ!」


見事な入れ食い状態。君たち、ガッツリ喧嘩してたよね?と言いたくはなるけど、殺気は綺麗に収まってるし、良しとしよう。


「そっか私の勘違いだね。じゃあお腹も空いただろうし、お昼ご飯にしようか?まぁ私の基準で作ったから美味しいかは分からないけど。」


私の言葉を聞いてるのかな?既に3人は弁当箱の前にちょこん。と正座をして待機している。...そんなに期待されると困っちゃうなぁ。ま、いっか。


いざ、蓋をオープン!...すると3人の子供は目を輝かせて中身を凝視していた。日本の食材は無いから似てるので代用したけど...正直、味だけが問題だよね。勿論、味見はしたよ?


「きれい...これがしずく様の...りょうり。」


「ほむ。彩り豊かで見事なものじゃのう!」


「主!食べて良いか?良いのか?」


「あ~...うん。良いよ!召し上がれ?」


それを合図に3人が一斉に手を伸ばす。おぉ...凄いがっついてる。おにぎりや唐揚げ...卵焼きにその他諸々。結構な量を作ったんだけど見る見るうちに消えていく。育ち盛りって恐ろしい。


「ふぅ~。満足、満足!妾の胃袋は満たされたのじゃ。」


「しずく様...とてもおいしかった!」


「異界のご馳走って侮れないね。手が止まらなかったよ。」


ものの数分で間食してしまった。空っぽの弁当箱を前に満足そうにお腹を擦る3人。喜んでくれたなら作った身としては満足だよ。


「お気に召してなによりかな。...一応、デザートもとい甘味的なのもあるんだけど。」


「デザートッ!?」


「それは何?そそられる語感だよ。」


「...むぅ。」


信頼を勝ち取るには胃袋を掴むのが一番だ。更に食後の誘惑も重なれば効果は抜群。現にシュリカとリビィは目をキラッと輝かせてる...だけど一人、シャーロットは悩んだ表情だ。


「えっと?シャーロットはお腹いっぱいかな?ちょっと浮かない様子だけど。」


「むっ?あぁ...甘味は有り難く頂くのじゃが、お前様よ、悩みでもあるのか?」


「へっ!?何でそう思うのかな?」


「少しばかり古い...まぁうて300年程じゃが知人が居ってな。自らが思い詰めて居るのに他人の顔色を伺いよる。優しい奴なのじゃが...今のお前様みたいにの。」


そうだ。シャーロットは1500年も生きてる不死鳥フェニックス。年の功とは言ったもの。私なんかの顔色は読めちゃうのか。


「確かに...急な行動にしては可笑しかったかな?でも、3人にはシュルクでお世話になったし。もっと私自身が仲良くなりたいって思っての行動なんだよ。心配させたかな?」


「別に頭を下げる程の事ではない!それにお前様は魔王なのじゃぞ?そう易々と自らの価値を下げる真似はするな!じゃから...」


「しんぱいないよ...しずく様。シャーロット...わがままだけど...しずく様...すきな筈。」


「んなっ///!?」


横入りした、シュリカの言葉でシャーロットの顔は真っ赤に染まる。追い討ちを掛けるかのようにリビィも口を出す。


「そうだな。シュルクでの一件...主の身を案じて自分ではなく余を主の護衛に付けた。あれを瞬時に判断できるのは、シャーロットだからこそだな。」


「そうだったの?」


「~ッ///!!」


プルプル...と顔から火が出るのでは?と思う程、シャーロットは真っ赤になった。それをリビィとシュリカがニヤニヤと見つめてる。しかし彼女シャーロットはバッと顔を上げる。


「良いか?良く聞けお前様!!」


「は、はいっ!」


「少なくとも妾とリビィ。そしてシュリカはお前様を認めている!危険があれば振り払う!だから安心しておれ!良いなッ?」


「う、うん!分かりました...?」


私の返事を聞くなり、シャーロットはクルッと踵を返し城の中に向かっていった。心なしか足取りは軽そうだ。


「素直じゃないな。アイツも...まぁ、言ってることは間違ってない。余も主のことは信じてるから。」


「ボクも!しずく様...だいすき!まもります!」


「うん。ありがとう!」


少し心配はあったけど、無事に3人との関係性は上昇したようで一先ずは安心と言うことだ。

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