第26話 これが...ラブコメ作戦!?(大まじめ)

とある日の昼下がり...私はボーッと目の前の光景を見つめていた。まぁ理由は色々あるけどリリュスさんの提案を配慮した結果なのだ。


「お前様よ...どうしたのじゃ?しばらく上の空じゃな。もしや妾に見惚れておるのか?まぁ仕方のなー」


バシュ~ン!!


見つめる先、自慢気に話していたシャーロットの言葉が途切れた。理由は簡単で痺れを切らしたリビィが攻撃を放ったからだ。


「まだ開始の合図が無いじゃろう!リビィ...妾を殺す気か!!」


「訓練だから貴重な睡眠を割いて参加してやってるんだから早くしろ!それに不死鳥フェニックスは死なないだろう?」


「ほぅ...どうやら死にたいようじゃのう?」


「臨むところ...逆に息の音を止めて不死鳥殺しの称号を貰ってやる。」


只の訓練の筈なのに...2人からはとんでもない殺気が溢れてる。呆れた様子で見つめていた審判役のシュリカが仲裁を兼ねて喋り出す。


「2人とも...みっともない...しずく様が...みてるんだよ?」


「黙れ!ちび助は審判に集中しとれ!」


「そうだ!外野は口を出すな。ちんちくりん」


「ちび助...ちんちくりん...?」


プルプルと震え出すシュリカ。あぁ...また喧嘩が始まりそう。リリュスさん...本当にこれが私の為になるのかな?私は改めてあの日、リリュスさんに言われたことを考えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「方法は簡単です。配下達の好感度を上げてください。つまりはイチャイチャです!」


「えっ...イチャイチャ?」


「はい!イチャイチャです!」


聞き間違いじゃなかったか。出来れば聞き間違いであって欲しかったな。と思う。でも彼女リリュスさんの顔は真剣だから正しいんだろうな。


「この前、雫様の身体検査を行ったのを覚えてますか?」


「えっと...色々な機械で調べた時のことかな?あれは結構疲れたねぇ...。」


「申し訳ありません。あれも必要不可欠だったのです。この責任は私の首一つで勘弁ー」


「そこまでじゃないから物騒な真似は無し!...それで何か分かったの?」


冗談でもよろしくないので咎めさせてもらう。するとリリュスさんは1枚のグラフ?の様な物が書かれた紙を差し出した。所々に殴り書きがあり、書体的にカミラさんだろうと予測する。


「グラフ?私の身体能力みたいな感じ?」


「大まかに言えばその様な感じです。一つの値が突出してるのが分かりますか?」


確かに他は均等だけど群を抜いて独立した数値がある。上書きを重ねているから何て書いてあるかは読めないけど。


「その突き出た能力は魔力。単純に言ってしまえば魔法を使うための力と思ってください。雫様はその量が強大...わたくしが気付けたのも魔力ソレが原因だとも考えられます。」


「魔力...もしかして、私も魔法が使えるとか?それも凄い才能が!」


「いえ、残念ながら魔力量と魔法の才は比例しませんので才能が有るかと言われると難しいですね。」


「あ、そうですか...。」


上り始めた期待を急に落とされる。確かに早とちりではあったけどさ。少しは期待しちゃうよね。話の流れ的に。


「そう気を落とさないでください。魔法は難しいですけど、配下の力になる。と言う願いは叶えられるかもしれません。」


「それは...どうゆう?」


「このエルメキアに於いて魔力と言うのは命の源。考えによっては命そのものであり。人間の方は詳しく分かりませんが魔物わたくしたちは魔力で体組織等が構成されてます。つまり...。」

「死んだ時は魔力に変化して消えるとか?」


ビシッ!


その通りです。と言わんばかりの表情でリリュスさんが私を指差す。なるほど言わんとしたいことは理解できた。でも私との繋がりが見えないんだよね。


「リビィが暴走した時、雫様はと言う部位に触れて収めた。と言ってましたよね?」


「うん、私の世界で龍への対処と言えば、それぐらいしか思い当たらなかったから。」


「それは間違ってはいません。ですが、あの時にリビィから雫様に若干ですが魔力の流れがあったんです。」


「魔力の...流れ...?」


そう言われて再びグラフに目を通す。突き出た魔力の数値...だが、よく見ると色が僅かに違っている。


「この色違いがリビィの魔力...つまり、あの触れた瞬間に魔力を奪われたから大人しくなったのかな?」


「考えられる可能性はそうですね。そしてわたくしは一つの答えに至りました。」


「それは...?」


「もし魔力を奪うだけでなく渡すことが出来れば魔物わたくしたちにとっては大きな力になるのではないか?と、雫様にはその才能があるのです。」


なるほど。確かに引く力があれば押す力もあるか。納得できる。...でも、それだと分からないことが一つある。


「リリュスさん。話を戻すけど...魔力の流れ?とイチャイチャに何の関係があるのかな?関連性を感じないけど。」


「リビィの魔力を奪った時、彼女は雫様に明らかな敵意を向けてました。ですが、フェルクでの任を終えた後に微々たる物ですが、彼女に魔力が戻ってたのです。その間に生まれるとすれば?」


信頼...フェルクで私は殆どリビィを背負っていて。勇者に襲われた時もしっかりと守ってくれた。それはリビィが私を認めたってこと? 


「だから好感度...。わかった!頑張ってみるよ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「とは言ったものの...なんだよねぇ。」


目の前で喧嘩を繰り広げる3人娘を見て呟く。リリュスさん曰くだが、現状で一番好感度が高いのはシャーロット、リビィ、シュリカの3人なので優先的にイチャイチャしてください。とのことだ。


「まぁ...悩んでも仕方ない!せっかく私も役に立てるかもしれないんだから、やってみますか!」


頬を叩き気合いを入れた私は喧嘩の仲裁に向かった。

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