第22話 一先ずの反省会...の裏で暗躍する影?

「襲撃されたから正当防衛ってことになるのかなぁ?流石にやりすぎたんじゃない?」


フェルクの変わり果てた街並みを見た私はそんな言葉を漏らす。でも配下の3人は気に止めてない様子だ。


「何?リビィの所には勇者が来たのか?うぬぅ妾が雫に着いてけば良かったか。」


「お前は弱いから...主が危ない目にあうだろ。考えろ鳥頭。」


「何じゃと?貴様ぁぁ!」


「喧嘩しないで欲しいの。煩いから...。」


あぁ...襲撃されたとしても。いつものテンションなんですね。ちょっと安心するなぁ。じゃなくて!


「あのぉ~すいません。」


「ん?えっと...もしかして私?」


3人娘の喧嘩を傍観していた私は後ろから聞こえた。か細い声に反応して振り返る。そこには子供だろうか?小さな魔物の女の子が立っていた。


「はい!お姉さんに...と言うか皆さんに何ですけど。」


「皆さん...はっ!もしかして家を壊した請求とか?ごめんなさい!今はお金無くて...」


「ち、違います!そうじゃないです!頭を上げてください!」


私が頭を下げると慌てて女の子が制止してくる。弁償じゃないなら報復?...まぁあれだけ暴れたら不味いよね。しかし女の子の言葉は意外だった。


「お礼を言いたくて。人間を追っ払ってくれたので...。」


「へ?お礼...?ボコボコにされないですか?」


「そんなことしません!...魔物と言う括りでも私のように力が無い者は人間に怯えるしかないんです。今回は死を覚悟しました。ですが...」


皆さんが居てくれましたので。と言って女の子が頭を下げた。何処の世界でも弱い者は立場がない。それは同じなのか。


「中々に感心な小娘じゃな。見る目があるではないか。」


「主様のオーラは隠せない当然のこと。」


「違うよ...私達が喧嘩しているからなの。しずく様がいい迷惑なの。」


いつの間にか喧嘩をしていた3人が私の横に立っていた。あぁ...満足したんですか。


「あの...失礼なのですが。魔王軍の幹部様は分かったのですが...お姉さんは新しい幹部様ですか?」


「へっ?えっと...私は何て言えばいいんだろう?」


「....??」


返答に困る...。私は周囲の3人に解答を求める。すると代表して、シャーロットが口を開いた。


「別に困ることは無かろう。私は魔王ですと言ってやれば...むぐっ!?」


「えっ...?」


「シ、シャーロットさん!?あはは。この娘は何を言ってるのかな?ごめんね?」


任せなきゃ良かったよ。私はシャーロットの口を塞ぎながら女の子に弁解をする。バンバンッと手を叩かれてるけど気にしない。


「今、魔王様って仰いましたか?」


「聞き間違いだよ。私は弱い魔物だから。ね?」

「何を言ってるの?主はまおー」


「ね?」


「「う、うん。(なの!!)」」


無言の圧で残りの2人を黙らせる。あ、ヤバい..段々とシャーロットの力が無くなってる。離してあげないと。危ない...。


「え、えっと...同じ魔物さんなんですね。分かりました。」


私の圧は女の子にも通じたらしい。大人の対応で返されてしまった。なんだか申し訳ないな。


「はぁ...はぁ...。酷い目にあったわい。まさか雫様に殺されかけるとは...。」


「ごめんね。ちょっと話に夢中になっちゃった。」


「主...とりあえず。城に帰ろう襲撃受けたこと報告しないと。」


「おなか...すいてきた...。」


そうか。今回は見聞を広める為に来たけど、それ所じゃないか。


「え?もうお帰りになるんですか?皆さんは英雄なのでゆっくりして頂いても。」


「うん。本当はゆっくりしたいけど、人間が来たことを他の幹部に教えないと。君みたいに怯える子達を助ける為にね。」


「...ッ//!」


私の言葉に顔を赤らめた女の子、魔王となった以上。こうゆう子は守ってあげたいな...あれ?何で3人は私を睨んでるの?...もしかして。


「シャーロット、リビィ、シュリカ...3人も守ってくれてありがとね。」


「ふむ...まぁ当然じゃ///」


「任せて。///」


「うん...///」


顔を真っ赤に染めた3人...こうゆう所は年相応で可愛いな。あ、シャーロットは子供じゃないか。


「よし!とりあえず魔王城に帰ろっか。リリュスさんたちにこれからの作戦を考えないと。」


私達はフェルクを後にする。本当に思うけど...何か狙われ過ぎじゃないかな?まぁしょうがないかな?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フェルク 裏通り


人気がすっかり無くなった。裏通りに2つの影が立っていた。その足元にはリビィが殺した勇者の遺体が転がっていた。


「まったく...リビィも悪い娘だこと。こんな肉片にしたら調べようが無いでしょうに...。」


「あの娘はまだ子供、加減の仕方が分からないでしょう。残った肉片だけを回収しましょう。」


パチンッ!ズズズッ...。


影の片割れが指を鳴らす。すると遺体が影の中に沈んでいく。恐らくは魔法の一種だろう。


「帝国の方々はせっかちですね。こちらも準備があると言うのに...。」


「人間は信用できない物ですよ。そう教えたでしょう?」


「それもそうですね。」


口元を大きく歪ませた影は遺体の後を追うように闇の中に消えていった。

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