第18話 剛筋と紅の円舞

ズドォォン!!ドゴォォン!!バコォォン!!


「ひぃぃ!!一体何なのさ?あの異常なボディービルダーはぁぁ~?」


「しずく様...だいじょうぶ?」


「十中八九は帝国の人間じゃろうな。胸に着けた紋章からして将の地位であろう。」


「主...あまり揺らさないで。」


いや!全力で逃げなきゃ私はミンチになるからね?余力たっぷりな魔物様が羨ましいよ。て言うか、せめてレビィは自分で走ろうよ。


「どうしたぁぁ!!魔王ぉ!!逃げてばかりではないかぁ!!」


「挑発されとるぞ?お前様よ。反撃せんのかのぅ?」


「出来たらしてるよ!私は只の人間なの!分かる?分かるよね?」


「お、おぉ...すまんかったのう。」


バキンッ!!グググッ!ビュンッッ!!


嘘でしょ!?今度は家を投げてきたよ?ベルカさん以上の脳筋でしょ!もう威厳なんて関係ないよね?


「シュリカァ!!何とかしてお願い!!」


「ッ!!わかった...まかせて...しずく様!獣覇気ビーストオーラ!」


「むっ?」


ブンッ!ドゴォォン!!パラパラ...。


立ち止まって振り返ったシュリカの正拳突きで向かってきた家はバラバラの瓦礫に変化してしまう。流石だよ!魔獣ベヒモスの名は伊達じゃない。


「ほぅ...やるではないか只の小娘と侮っていたか。貴様、名は何と言う?」


「シュリカ...ボクのなまえ...魔獣ベヒモスのシュリカ...しずく様...いじめるなら...つぶす。」


「ふんっ!面白い冗談を言ってくれる。聖魔騎士団スティルナイツ中将!レミアスが相手をしてやろう!」


危なかった。私の配下も強くて良かった。でも彼女シュリカだけには任せられない。何か良い作戦を考えないと。


ヒュン...!シュルルル!!


「避けるのじゃ!お前様!」


「えっ?また私ぃ~?」


「ぬぅ!!」


ガキィィィン!!シュルルル!!


鈍い金属のぶつかる音。見るとシャーロットの鉄扇ごと鞭のようにしなる剣?が拘束をしていた。その刃を伝い、手元まで追っていく。


「見事な反射神経だな。流石は魔王軍の残党か...。出来るではないか。」


「随分と無礼な挨拶じゃのう。人間と言うのは野蛮極まりない種族であるな。」


蛇腹状の剣を扱っていたのは真紅の長髪と同じ色の鎧を纏った。美麗なる女性であった。彼女も恐らく脳筋おじさんと同じ聖魔騎士団スティルナイツの所属なのだろう。


「鬱陶しい拘束をしよってからに。...滅火カタストロフィ!!」


「ッ!!ほぅ...!」


バキッ...ジュウゥゥ!!


身を包んだ蛇腹状の刃をいとも容易く燃やした。こちらも優秀な幹部様で私は鼻が高い。自慢して良いものかも悩むけど。


「お前様!ここは危険であろうて。幸いリビィも付いておるのでな。先に行け!妾達はこ奴らを片付けてゆく!」


「え?でも本当に大丈夫なの?」


「案ずるでない!それにお前様は只の人間なのじゃろう?ならば退く方が安全じゃろう。」


そう言われたら何も返せない。ただ黙って下がるだけだ。私はリビィを背負い直し、その場を離れることにした。人質にされてもだし...任せることにする。


「ふん!腰抜けの主人を持つと配下は大変だな!だが直ぐに捻りつぶすので楽に死ぬが良い!!」


「だまれ...にくだんご...。おまえは...びょうさつ...してやるの。」


決めポーズを取るレミアスにシュリカは冷淡に言い捨て構えを取る。それは怒りからなのか燃えるようなオーラがしっかりと物語っている。


「僅かではあるが認めてやろう。だが魔を有するお前は私には勝てない。絶対的にな...。」


「戯れ言をほざくではない!三流種族よ。貴様の理想せいぎごと灰にしてやろう。」


紅を纏うものと炎を冠する者...似てこそは居ないが忠誠を誓うべき覚悟は同じ。違うのは善か悪かの違いであろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ううん...言われるままに逃げてきたけど。リビィ本当に平気かな?」


「問題ないよ。主...アイツらは無駄に序列が高い訳じゃないよ。信じていいかも。」


それより。と続けたリビィが睨んだのは何の違和感も無いであろう。普通の裏路地なのだけど...まさか幽霊が見えるとかじゃないよね?


「それで隠れたつもり?主を狙ってた中で、余が最も警戒をしたのは多分、ソイツだよ。随分な認識阻害かな。」


ピチョン...。ゴボゴボゴボ!!ビュンッ!!


路地裏に向けて放たれた強烈な水の弾丸...そのまま向かいの家を貫通するかと思ってたけど。


「へぇ...気づいてたんだ。自信満々の外装とやらも無能ポンコツかなぁ?仕方ないか...。」


目の前の空間が歪み、異様なギプス?みたいな装甲を身に付けた少女が現れた。まさか戦力分断が目的だったの?


「流石に3回の奇襲はキツいよね...あなたも聖魔騎士団スティルナイツの仲間なの?」


「悪いけど...あんなのと一緒にしないで欲しいわ!アタシは勇者リーナ!覚えておいて!」


「また勇者!?」


「どっちでもいいよ。主に手を出すなら容赦しないから。捻り潰す!」


リビィが水流を纏い前に出る。二度あることは三度あると言うし。不幸は続くものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る