第16話 凸凹な珍道中?

魔王城 北の森


東、西、北と3方向への進軍で現状の戦況等を把握しようとの意味で始めた作戦。まぁ私にとっては外の世界を見る機会になると言うわけだ。ちなみに私達の第3部隊は北の方角を進むことになった。


「シャーロットちゃん?本当に北は安全なんだよね?」


「心配するでない!外について無知なお前様は妾を信じておれば良いのじゃ!」


高笑いをする彼女シャーロット、本当に大丈夫なのかな?それに心配要素は他にもあるんだよねぇ。


「リビィ...いいかげんに...あるいて...ほしいの!」


「う~ん。後20分だけぇ...。」


「さっきより...ふえてるの...!!」


「じゃあ...30分。」


う~ん...本当に不安だ。この3人が確かに強いのは分かってるんだけど。傲慢、人見知り、二重人格...性格の方に難があるんだよねぇ。


「シュリカちゃん?リビィは私がおんぶしようか?」


「え...だけど、まおうさまに...めいわくは...」


「迷惑じゃないよ?いざって時、シュリカちゃんが力を出せない方が私は困るかな?頼りにしてるから。ね!」


「うん!じゃあ...おねがい...するの。」


シュリカちゃんが背負ってたリビィを私の背中に移す。心地が良いのだろうか、はふぅ~と吐息を漏らしていた。寝ている時は可愛いんだけどね。


ガサッガサッ!


「ん?何の音?」


「お前様よ。少し下がっておれ!」


微かに揺れた茂みの音にシャーロットが反応をした。私の前に立ち戦闘態勢をとる。やがて茂みから三つの影が姿を現した。


「おいおい。誰かと思えば魔王城の連中か?城を出てるなんて珍しいじゃねぇか。」


「少し気分転換に散歩をしとったのじゃ。珍しくもなかろう。ぬしらこそ何か用か?」


「あぁ、お前には用がねぇ。あるのは人間...てめぇだよ。」


ジュルリ...と舌なめずりをした魔物。見た目は人間的なフォルムだが違うのは体色だ。異質な緑色をしている。似てるのを本で見た気がする。確かゴブリンだったっけ?


「それはお前の非常食か?それとも売り物か?少しだけでいいから分けてくれよ。いいだろ?」


「戯け、ふざけたことを抜かすな!妾の機嫌が変わらぬ内にさっさと失せよ!」


「つれねぇ事を言うなよ。人間の肉なんか滅多に回ってこねぇんだ。腕の1本で良いからよ。」


シャーロットの横を抜け私に手を伸ばす魔物...だったが途中で異変に気付く。伸ばした腕がズルリ...と落ちていくことを。


「ッ...!?ぎゃあぁぁ!!痛ぇぇぇ!!俺の腕がぁぁ!」


「忠告はしたぞ?さっさと失せよとな...。」


パチンッ!とシャーロットは手にした扇子を閉じた。私にも見えなかったが恐らく腕を切り落としたのは、あの扇子だろう。


「てめぇ!こっちが下手に出てりゃ調子に乗りやがって!そんなに下等な人間が大事か?」


「お主...発言には気を付けよ?今ので死んだぞ...?」


「あん?死ぬだと何ー」


ドッ...グシャ!!


魔物の言葉が途中で途切れた。いや、正しくは続けることが不能になったかな?何故なら上半身が


「つぎに...このひとの...わるぐちいったら...こなごなに...するよ?」


「それは良いのう。ならば妾が焼いて肉団子でも作るとするか?味は保証できんがのぅ...。」


「「ひっ...!!」」


2人とも悪口一つで恐ろしいよ。私の為には嬉しいけど。多分、リーダー格の存在を失って残った彼ら、恐怖で怯えてるし止めたげよう?


「さて...主らはどうするのじゃ?まだ肉が欲しいと言うつもりかのぉ?どちらでも構わぬが?」


「す、すみませんでしたぁ!!」


「ど、どうか命だけは勘弁を!!」


チラッとシュリカとシャーロットがこちらを見てくる。私は気にしてない。とのつもりで首を横に振る。意思を汲んだのか2人はコクりと頷いた。


「良かろう!ならば見逃してやるのじゃ!とっとと失せよ!」


「「は、はいぃ~!!」」


2匹の魔物は遺体となったリーダー格の魔物を担ぐと一目散に森の中に消えていった。凄い逃げ足の速さだな。


それにしても魔物と人間が争ってる以上、私の印象は良くないと思ったけど想像以上だな。城の皆がどれほど優しいかが良く分かった気がする。


「すまぬな...お前様よ。安全と言いながらも早速、お前様を危険な目に合わせてしもうた。」


「ううん!大丈夫だよ!シャーロットとシュリカが守ってくれたから。ありがとね。」


ナデナデ。


私は笑顔でそう言って2人の頭を撫でた。...あれ?待てよ?確かシュリカは子供だったけど...シャーロットは大人だっけ?つい見た目で判断しちゃった。


「あ!シュリカはともかく。シャーロットは子供扱いされるの嫌だったよね?ごめん。すぐにー」


「気にしとらん//!だから、その妾の頭を撫でることを許可するぞ//?」


「シャーロット...てれてるの...」


「ッ~///!!さっさと行くぞ!日が暮れる前に街に着かねば!!野宿なぞ勘弁じゃからな!」


顔を真っ赤にしたシャーロットはそう言いながら先を進んでいく。前言撤回!この3人...あ、4人なら上手くやれそうかな?私達は北の街を目指して進んでいくのだった。

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