第11話 物語の初日って襲われがち?

ワイワイ...ガヤガヤ...ワイワイ...


宴が始まってから数時間...私とベルカさんの黒歴史的寸劇や配下達の適当な出し物があって、宴もたけなわではあるが終わりの時間が近付いていた。


「いやぁ~お腹いっぱいで苦しい!でも満足だよ!」


「それは良かったかしら。ご主人様。明日も色々とお務めもあるでしょうし、今日はお休みになると宜しいかしら。」


「今日のような優しいメイドではなくご主人様の為、厳しく参りますので覚悟してくださいませ?」


「あはは...お手柔らかにお願いします。改めて皆も明日からよろしくね!」


皆が私の挨拶に返事を返す中、リリュスだけが何やら難しい顔をしていた。何か考え事でもしているのかな?気になった私は声を掛けてみることにした。


「どうかしたのリリュスさん?何か考え事でもしてた?」


「雫様...いえ、大したことではありません。明日から忙しくなりそうだと思っただけです。さぁ雫様も早く休んでくださいな。」


「そ、そう?それならいいんだけど。」


さぁさぁ...とリリュスさんは強引に私の背中を押してくる。何だろう?私が食堂に居ては駄目と言わんばかりにそう感じる。まぁ、疲れたから休むけどさ...私が食堂を出ようとした時。


(雫ちゃん!何処に居るの?雫ちゃん!!)


誰かに呼ばれた気がした...いや、私は彼女の声を知っている。聞き間違える筈はない!ずっと前から知っているのだから...やっぱり来ていたんだ。


「よっちゃん...?」


ビーッ!!ビーッ!!


私がポツリと呟いたのと同時にけたたましい警報のような音が城内に響いた。何?一体、何が起きたの?


「予定より少しは早いな。数刻前の襲撃はノワールに対しての囮と言う訳か...帝国も考えたね。」


「考えたところで所詮は浅知恵...雫様がいらっしゃるのに襲撃とは無礼講が過ぎますね。ノワール、現状の報告をしてください。」


『はいはい。正面玄関、東西の出入口より近衛騎士が数名...城の外にも反応が少々...その中に少しばかり強い魔力反応。これは人間なのかな?一先ずはそんな感じだよ?』


「ご苦労様...。」


なるほど、警報=侵入者ってことか。それにしても手慣れ過ぎじゃない?長い間争ってるって言ってたから何度もあったのかな?いや、それよりも大事なのはさっき聞こえた声だ。


「リリュスさん!忙しい時にごめんね。1つだけ気になることがあって...」


「雫様、まだ居られたのですか?いえ、城内の方が危険ですか...仕方ありません。それで気になることとは?」


私は今しがた、紡愛香の声が聞こえた気がした...と伝えた。するとリリュスさんは少し考える仕草をした後、意を決した表情をする。


「ベルカ!カミラ!左右の塔からの侵入者は任せます!迅速に排除しなさい。ペペとルルは私と共に雫様の護衛をしつつ、正面玄関を目指します。ノワール!先程、感じた強い魔力反応の位置を正確にお願いします!雫様、行きましょう。」


カミラさんとベルカさんは口々に了承をして姿を消した。私はリリュスさんに手を握られ導かれるままに正面玄関を目指す。後ろでペペ、ルルが狡い!と言っていたが無視しよう。


「リリュスさん...何か分かったの?」


「考える限り、最悪の手段ですね。召喚の時に介入したのが帝国の人間であれば...恐らく切り札を握ったのは同じと言うわけです。」


「それって...」


期待の鼓動が胸騒ぎへと変わる。こう言う時の予感は当たるものだ。...とにかく今は正面玄関に行こう!それで全部分かる筈だ!

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