第10話 魔王雨宮雫って何か肩書き負けしてない?
「それでは配下の皆様!グラスの用意はよろしいでしょうか?新たなる魔王、雫様の誕生を祝しまして乾杯!!」
「「
カチンッ!!とグラスのぶつかる音が食堂中に響き渡る。書庫を出て、城内の案内を一通り終えたところでリリュスから今晩は宴です!と言われて、再び食堂に戻ってきた。
見渡すと挨拶をしてないであろう魔物さん達がちらほらとペペに聞いたところ魔王配下の中でもリリュスを筆頭にした10人が特別であり、他の配下全員に挨拶してまわるとキリが無い為、この宴で一気に終わらせてしまおうと言う意図らしい。
確かに人数は何百人?と居るし、何よりも私の体力が持ちそうにない。本当にありがとうございます。
「それにしても凄い盛り上がりだね。そんなに宴が楽しみだったのかな?」
「それもあるでしょうが、やはり雫様が来たのが1番の原因だと思います。長く続く膠着をようやく動かせる。長考した上の一手と言うのは非常に嬉しい物なのですよ。」
「そう言うものなんだ。私には分からないけど、最低限の期待には答えるよ!」
私の言葉にリリュスは満足そうに微笑んだ。まぁ...きっと何とかなるよね。...それにしても。
「...はぁ。我はやはり無言で鎧に籠っていた方が良かったのか?はぁ...。」
何か凄い罪悪感を感じてしまう。やっぱり初対面で悲鳴を上げたのは駄目だったかな?いたたまれなさを感じながらため息を付く人物に目が行ってしまう。
「ねぇ...リリュスさん?やっぱりベルカさんに謝った方が良いのかな?傷ついてるみたいだし。」
「雫様?
「リリュスの言う通りだよ。魔王様...あいつは寝たら大抵のことは忘れてる。残念ながらも素敵な頭脳を持っているのさ。控えめに言って馬鹿なんだよ。」
控えめに馬鹿って...事実だとすれば救いようが無いんだけど。ヘルムを外したベルカさんは凄く整った顔立ちで何て言うんだろう?少女漫画とかに出てくる麗人?っていうのかな?大抵の女性なら勘違いして惚れてしまうかもしれない。
(かくいう私も素顔を見てドキッとしたのは内緒だけど。)
「魔王様は思いやりがあるんだな。お人好しとも言えるだろうが...。そんなに気になるなら話してやればいい。魔王様が相手ならば機嫌も直るだろう。」
ベルカさんの方ばかり見て食事が進まない私を見兼ねたのかハァ...とため息を1つ漏らしたカミラさんがそう言ってくれた。優しいのはお互い様では?
「初めましてベルカさん!先程は叫んでしまって申し訳ありませんでした。きっと不快に感じましたよね?」
「ん?...あぁ魔王殿か、気にしないでくれ。あれは我が貴殿に話しかけようと試みたのが無謀であった。脳足りんの我は語らずに他人の命だけを聞いていればー」
「そんな卑屈でどうするんですか!」
宴の賑やかさを絶ちきる様な私の声が響いた。配下の殆どが私とベルカさんに注目していたが私の目は真っ直ぐに前だけを見ていた。
「大体は他の方から聞いています。ベルカさんは魔王を守る将なのですよね?つまりは私の将!他がどうとか、貴方がどうとかは関係ない!どんな状況でも私を守る!それがベルカさん...貴方です!」
「魔王殿...。」
「だから、頼りにしてますね?
僅かな無言の後、俯いたベルカさんは消え入りそうな声であぁ...心得た。と呟き私の手を握った。
「ふふっ!世話が焼ける将軍だな。」
「全くです!...しかし、雫様のカリスマと言いましょうか?大したものですね。」
わあぁぁぁ!!と食堂中に歓声が響く。ちょっと止めて欲しい。私も似合わない台詞を言ったなとか思ってるんだから。
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