第6話 お馬鹿にシリアスは危険です!


雫達が食堂にて奮戦してる頃、魔王城のリリュスの部屋では、カミラの作った魔法の水晶により食堂の様子が鮮明に映されていた。


「まさか、リヴィの暴走を抑えることがしず...魔王様の初仕事とは...リリュス、何か仕組んだのか?」


「人聞きの悪いことを言いますね。今回はあくまで事故です。本当なら3人を軽く従えるカリスマ性を見たかったのですが、完全な予想外ですね~。」


「全く白々しいな。この女狐は。」

「.....ッ!!......ッ~!」


傍観するのは3人でリリュス、カミラ...そしてもう1人はプレートメイルに身を包んだ人物で動く度にカチャカチャと言う音が鳴っている。


「......ッ!」


リリュスはチラッと音の方に目を向けるが、すぐ水晶に戻す。しかし堪えきれなくなったのか。魔力の通話をカミラに飛ばした。


『カミラ...聞こえますか?カミラ!』

『聞こえているが?どうした?普通に話せば良いじゃないか。』

『話せる訳ないでしょ?視界の端で微かに振動する鎧が気になって集中できやしない!何故、ベルカは一言も喋らないの?』

『あぁ...それはな。私は魔王に対して無口なお姉さん的な存在でありたい、方法は無いか?と聞かれたから黙ってれば美人に見えるかもよ。と言ってあげたら...あんな感じになってしまった。』

『お姉さんね...。』


再び、リリュスは鎧の方に視線を向ける。黙っていると動く鎧にしか見えない。何故、全身鎧にしたのだろうか?


『あれじゃ。只のモンスターよ!カミラ、早急に何とかして!』

『えぇ...?急な無茶振りを...』


リリュスは自分の言い分だけ言うと水晶から目を離さなくなった。しょうがないと思い、カミラは髪を軽く掻きながら鎧の方を向く。


「あ~。ベルカ?ちょっといい?」

「.....?」

「黙っていると確かに美人かもだけど顔まで隠せと迄は言ってないぞ?今のベルカを見たら多分、魔王様は失神する。見てくれが無機物だ。」

「.....何だと!?それを先に言えッ!」


カチャリッ!カランッ!!コロコロ...。


カミラの発言を聞いて鎧はヘルムを脱ぎ捨てる。現れたのは中世的な顔立ちをした、美人な女性だった。


「まったく。お前はまた私を騙して楽しんで居たのか?少し不審な目で見られるから疑問には思ってたが危ないところだった。」


「いや、不審に見られたなら外せば良かったじゃないか。何で付けっぱなしにしてた?」

「ふっ...!外すことは逃げること。カミラ!騎士に逃げると言う単語は無いのだぞ?」


「あ~。安定の馬鹿だな。聞いた私が悪かった。ごめんなさい。」


実力は確かなのに性格に問題ありか。リリュスはそんなことを考えながら水晶を見つめていた。しかし、他からの魔力介入により映像が切り替わる。


『ごめん!リリュス。今は取り込み中かな?緊急の用事なんだけど。』


『いえ、構わないですよ。禁書グリモワール...例の件に進展がありましたか?』


『そうだと言えば、そうかな?でも違うと言えば違うかも。でも関係はありそうだね。結界内部に侵入者が来たみたいだよ。』


『なるほど、鼠が罠に掛かりましたか。報告ご苦労様でした。対処は此方で行うので引き続き監視の方をお願いします。』


『は~い!了解。....プツンッ!』


映像が再び変わり食堂の様子が映される。どうやら向こうも進展しそうだ。流石は魔王である。


「リリュス、どうかしたのか?禁書グリモワールからの様だが?」


「クヒヒッ!我々もの時間です。雫様なら援護は必要ないでしょう!出来る配下の証明を致しましょう。」


「あぁ...相変わらずの悪い顔だな。雫様より魔王をしているぞ?」


「おい!我にも理解できるように説明しろ!着いていけば良いのだな?」


リリュスが天に腕を向け、指をパチンッと鳴らすと巨大な魔方陣が3人を包み一瞬にして、その姿を消した。


(雫様...頑張ってくださいね。)

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