第5話 逆鱗って触れるとどうなるの?

ヒュウゥ~...


食堂を包む、凍てつく様な殺気。恐らく温度は変わってないのだろうが寒いと感じるのは何故だろうか?捕食者に狙われた餌はこの感覚なのだろう。


「少し騒ぎすぎましたか?リヴィが寝てるのは気づきましたけど、まさか起こしてしまうとは...。」


「これは仕方ないかしら。シャーロット!シュリカ!せめてご主人様を安全な場所に連れてくかしら。」


「いやぁ...恐らく無理じゃろうな。睡眠不足のリヴィは下手すれば将と変わらぬ実力じゃ。背を向ければ終わるじゃろ。」


「ど...どうしよう。」


4人の言葉で分かる。リヴィと呼ばれている少女は多分、満足するまで寝ないと気が済まないのだろう。癇癪を起こす赤ん坊のように...もしかして一番幼かったり?ってそんなことを考えてる場合じゃない。


「ねぇ...ペペ。こんな時にだけど、リヴィの種族って何かな?」


「ご主人様!?今は危ないので後ろに下がってた方が宜しいかしら。」


食堂ここに居る限りは危険でしょ?だったら、ペペ達の側に居た方が安心だと思う。守ってくれるんだよね?」


「ッ///!!まぁ、ご主人様が守ってくれと言うならば当然、守るかしら。...リヴィは水龍リヴァイアサンという種族、一応だけどシュリカとは対になってるかしら。」


水龍リヴァイアサンか...う~ん、名前だけは聞いたことあるけど、神話の勉強はしてこなかったなぁ。でも龍とかは共通の弱点って無かったっけ?


「何をごちゃごちゃと話している?安心しろ愚か者は纏めて塵にしてやる。」


リヴィはそう言って、手のひらをこちらに向ける。...やっぱり裸なのだけが気になるなぁ。


激流砲ハイドロブレス!!」


一瞬、空気が吸い込まれる様な感覚..刹那、巨大な水流がこちらに向かって放たれた。いやデカすぎるでしょ!こんなの一溜りも無いって!


「まったく迷惑な赤子じゃのう!爆炎柱プロミネンスピラー!!」


バシュウッ!!


ぶつかる直前に水流との間に入ったシャーロットが火の柱を立て、相殺する。...水で消えない火って凄いな。


「おい!どうするのじゃ?妾とは言え赤子の水流を受け続けるのは不可能じゃぞ?策はあるのか?」


「せめて、シュリカが満腹ならば対等になるかしら。でも...」


「ごめんなさい...。たぶん、今のシュリカじゃ...5秒もたない...。」


「チッ...!!元凶は貴様シュリカが妾の機嫌を逆撫でしなければ...。」


「逆撫で?...そうか。龍の弱点はアレがある!」


突然、声をあげた私にペペ達は驚きの表情を見せる。まぁビックリするよね。急に叫んだら。


「ど、どうかされたかしら?ご主人様。急に叫ばれると間違えて攻撃するから気をつけて欲しいかしら!」


「いや、流石に攻撃しないでよ。私は本当に只の人間だからね?」


「そんなことはどうでもよい!人間!リヴィの弱点とは何じゃ?存在するのか?」


「まぁ...リヴィと言うか、正確には龍と言う種族の弱点かな?私の世界の情報だから当てになるかは分からないけど。10秒でいいから、私がリヴィに触れるようにして欲しいんだ。」


ペペ達は更に驚いていた。先程、叫ばれた時よりも、当然かな?只の人間発言をした私がリヴィに触れたいなんて言ったから。でも私がやらなきゃ駄目な気がする。


「無茶ですわよ!ご主人様!危険を侵さなくても方法を教えてくださればわたーー」


「私は魔王...なんだよね?これくらいは何とか出来なきゃ認められないでしょ?だから信じて?」


心配したルルの言葉を遮り、自分の思いを告げる。仮初めでも魔王として呼ばれた以上、少し位は自分も何かをしたい。その為の初仕事だ。


「そんな風に言われたら止められないではありませんの。」


「ご武運を祈ってるかしら。」


「ふんっ!雫とやら気に入ったぞ。10秒止めればいいんじゃな?やれるか?」


「とうぜん!しずく様の為なら頑張れるの!」


2人のメイドに背中を押され、2人の配下が隣に立つ。こんなにも頼もしいことはない。後は目の前の龍に認めてもらうだけの簡単な仕事!


「さぁ!行くよ。」

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