第2話 悪夢の気まぐれは超常的?

カツンッ‥カツンッ‥カツンッ!


「さぁ...着いたかしら。ご主人様。」


「ご到着ですわ。ご主人様。」


部屋を出て、双子のメイドに誘われるまま。月明かりが射し込む長い廊下を進んだ突き当たりに豪華な宝石で装飾された巨大な扉が姿を現した。


「凄く綺麗...これが玉座の間なの?」


「見てくれだけは立派かしら?全て先代もといクソ女様の趣向なので。」


「姉様...余計なお喋りはご不要ですことよ?きっとクソ女もとい愚民達が痺れを切らしてしまいます。」


「...それもそうね。では、ご主人様どうぞお入り頂けるかしら?」


ペペとルル、それぞれが左右の取っ手を握り軽く力を込める。ギイッ...と鈍く軋んだ音を立てながらゆっくりと扉は部屋の全貌を写し出した。


玉座の間とは言ったもので、最奥には立派な玉座が位置し、その手前には大きな円卓...それを囲む様に10の座席が用意されており、先程ルルが愚民達と呼んだであろう8人?の人物が腰を掛けていた。


私は心の何処かで祈っていた。自分が夢の中に居ると言う可能性を‥でもつねった身体は痛みを感じるし、目の前に座る者達は人と呼ぶには異様な風貌をしている。何だ角や尻尾って仮装大賞にでも出場なさるつもりですか?


「ご主人様?どうかなさいましたか?皆様がお待ちですわよ?」


「早く玉座に座るとよろしいかしら?」


「了解、玉座に座るのね。‥‥って玉座!?」


私の返答にメイドさんは何を驚いているの?と言った表情をしているけど、当然の反応だよね?可笑しいこと言った?今、呑気に玉座に向かおうとすれば間違いなく私は無事では済まない筈、現に皆様の視線は死線と化してますし。


「姉様!きっとご主人様は照れて足が竦んでますのよ。可愛らしい...。」


「なるほど手を引いてエスコートすれば宜しいのかしら。甘えん坊だこと。」


う~ん‥確かにコミュ障?の部類には入るけども‥そうじゃないんだよね。しかし、抵抗しようにもメイドさんは異常な程の怪力ですし~。美少女の皮を被った人外を凡人が相手するには助け舟の1隻でも欲しいんだけどなぁ。


「大丈夫ですよ。ペペ、ルル...その方は少し思考する時間が欲しいだけ、ここまでの案内をご苦労様でした。」


ふと、そんな声が玉座の方から聞こえてくると双子のメイドはピタリと揃え、足を止めた。本能的に何かを察したのか、それは初めての私にも同様...だが、脳の奥底に刻み込まれた感覚。この声の主を知っている?


「初めまして、雨宮雫様...いえ、貴方に対しては数十分振りと申した方が良いのでしょうか?目覚めの気分はどうですか?」


「その声...そうか、鮮明に思い出したよ。あれは夢じゃない。ここからが悪夢の始まりだってね。あんたには聞きたいことが山程あるんだよ。」


私の返答に満足したのか、彼女ソレは満足そうに笑う。吸い込まれるような漆黒の瞳、三日月の様に湾曲した口角、とても悍ましく蛇に睨まれた蛙とはこう言うことなのだろう。背に伝う汗の1滴すらも私はしっかりと感じていた。

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