第4話 別れの後に
その学年の終わりに
杏南は、引っ越した先でもバスケットボールのチームに参加した。
その街にはサンドパイパーズという強豪チームがあった。
杏南は引っ越した翌々日ぐらいに、そのサンドパイパーズが運営しているジュニアクラブに参加を申し込んだ。
名門の強豪チームだけに、よそから来た杏南が選抜チームに参加するのは無理だろうと思っていた。
杏南は背が低い。筋力はあるつもりだが、体格が大きい選手と競り合うとやっぱり不利だ。
しかし、パスやシュートの正確さと状況判断の確かさを買われて、杏南は中学生のうちからサンドパイパーズのジュニアチームのレギュラーに
杏南はその役割をきちんとこなし、
「サンドパイパーズのジュニアチームには、ちょろちょろとうるさく動き回る小柄な選手がいる。気をつけろ」
と他チームから評判を立てられるまでになった。
通っている中学校の女子バスケ部にも入り、三年生では主将を務めた。高校に進学してからも、杏南は、サンドパイパーズのジュニアチームと学校のバスケ部の両方で活躍した。
高校一年生の冬、スポーツ系部活の交流行事に参加した杏南は、スキー部の子からある噂を聞いた。
東関東の
アルペンスキーのエキスパートで、出場した競技会で強豪を抑えてトップに立った。
この子が、四年に一度開かれる世界的なスポーツ大会の代表に選ばれるのは確実だ。
蒲沢というと、杏南が小学生のころに住んでいた街。
そして。
その子の名は、「
「ちょっとその子気になるから」
と杏南はスキー部の子に言って、その競技の様子が見られるサイトのurlを教えてもらった。
まちがいない。
目もとはゴーグルに隠れてよく見えないが、ぎゅっと一直線に結んだ唇。
ぜんぜん笑っていない、怖いまでの表情。
ところが、表彰台に立つときには、その子は、茶色い目をちょっと
その後のインタビューでは、あの聴き取りにくい、妖精のささやき声のような声でしゃべっていた。
あそこの旗門を通るときに何をどう勘違いしたのでタイムが遅れた。あの競技のときの雪の状態が予想外で思ったほどスキーが滑らなかった。どの競技で何番目の旗門を通過したときにスティックの扱いにとまどって何秒か損した。そんなことを次から次へと早口でしゃべっていた。
インタビュアーが求めているのは「嬉しいです。これからもがんばります」程度の答えなのに、相手が困惑するほど詳しくそんな話を続けていた。
杏南はすぐに薄に連絡を取った……。
……かというと、そうではなかった。
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