第2話 杉原薄
そのキャンプで、杏南は、
いや。
杏南はいろんな子と仲よくなったけど、杉原薄は杏南としか仲よくなれなかった、と言うのが正しい。
杉原薄の特技はスキーだった。
ところがその地域はスキーが盛んな地域ではなかった。冬はそれなりに寒かったけど、スキーができるほど雪が積もる山が近くにあるわけではなかったからだ。
だから、薄が参加していたのは隣の県のスキークラブで、そこから県境を越えてそのキャンプに参加していたのは薄一人だった。
人見知りな、内気な子らしかった。
いつも愛想笑いのような笑いを浮かべている。その愛らしい茶色の目で人を見るときには、ちょっと首を傾げて、ちょっと斜めに相手に目を向ける。そのときには、わざとらしく目をぱっちりと開く。
しゃべるときには、ささやき声でこしょこしょと声を出す。
スポーツ系の少年少女たちのあいだでは、そんな、あえて言えば「少女マンガチック」な子はあまりに場違いだった。
「なんでこんな子がこのキャンプに来てるの?」
薄は、はっきりといじめの対象になったわけではないが、少なくとも仲間はずれにはされていた。
自分が相手になるしかない、と杏南は思って、薄に声をかけた。
話しかけてみると、薄は意外におもしろい子だった。
「ささやき声のような」というのは、実際に声量がなく、声が高いからだったけど、それだけではなく、たくさんの言いたいことを早口で詰め込んでしまうからでもあった。その話に、この地方の方言から来るらしい独特のアクセントとリズムがあるのもかわいらしかった。
「
お姉さんが「
いや、秋ならばべつにすすきでなくても、と、そのとき杏南は思った。
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