第4話 魂の救済



 ヤキゴテが白金の刺青になった。

 言ってはみたが、何がどうなっているのかさっぱり分からない。

 黒い枝のようだったのだ。それが、辺獄へ戻ってきて鏡を見たら、白金の小さな枝葉になっていた。何が起こっているのだろう。

「おめでとうございます! ヤキゴテが昇華されたんですよ」

 マイッタは祝福してくれた。

 曰く、ヤキゴテは稀に、灼印という印に変化するらしい。これは良い印なのだそうだ。

「だって、輪廻脱出のマークですから。めでたいですね」

 そして、彼は言った。

「これで辺獄に働き手が増えたぞ。人員確保だ!」






 僕の転生はなくなった。

 これからは、ここでずっと生きていくらしい。まだ僕がどこで働くか、どんな役割を負うのかは決まっていない。

 以前の僕ならば憂鬱に思っていただろうが、今は何ともない。

 元々辺獄は、僕にとってちょうどいい環境だった。

 そこにいられるなら、まあいいかと思っている。






 それから、僕の身の周りにもう一つ変化が起きた。

 具体的には、2LDKが狭くなった。そこに詰め込むものが増えたからだ。

 新しく詰め込まれたものは、少し前の素直さはどこへやらで、憎まれ口が多い。僕がだらしないと文句も言う。もう少しあの頃の可愛げを取り戻してもらいたい。

 でもこめかみに、僕と似た、白金の印がついているので、まあ許してやることにしている。





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楽園辺獄 祐川 千 @suysuysuy

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