第4話 短編エピローグ
俺の名前はジョブズ。 このヘルヘイムの王都にある冒険者ギルド東地区の支部長だ。
ずっと塩漬けになっている案件をこの間、
どちらもふざけたパーティ名だが、金級なりに堅実な実力のあるパーティだった。
1人戻ってきたメンバーの証言によると、大量の
スケルトンやゴースト辺りなら何匹いようと奴らの敵では無い筈だ。
レイスやガスト辺りが混ざると少し厳しくなるがまだ負けないだろう、もし分が悪くとも全滅まではしないはずだ。
つまり、それ以上の
「これは俺の勘だが…… あの古城には
「そんな……大丈夫なんですか?」
秘書のミリアナが口に手を当ててわざとらしく驚く。
どうしてわざとらしいと思うかと言うと、このミリアナという女は業務的な能力は申し分ないが、おそらく冒険者という仕事や魔物に全く興味がない。 多分、魔物の名前とか覚えていない。
おそらくや多分といった枕詞が必要なのは、一応興味のある
「そのための"ブラック"だ」
首無し騎士が相手だとすると、まず金級では無理だ。
冒険者のランクを簡単に説明すると、下から、鉄級、銅級、銀級、金級、白金級、聖銀級、
緋金級はもちろん、最高レベルの冒険者達だ。 各国にも数える程しかいない。
強大な魔物を単独で屠り、中にはドラゴンすらも倒せる力を持つ者たちだ。
人間としての到達点だろう。
しかし、世の中にはそれすらも軽く凌駕する化け物達がいる。
1人で国を相手にしても引けを取らない……どころか軍隊を投入しても勝てない。
つまり1人で国を壊滅させることが出来る超越者。
世界に7人いる、それら超越者は国の管理下になく、独自のルールを持っている。
その力で国を造った者、宗教を興した者、自由に振る舞う者、俗世を捨てた者、理想郷に籠る者、真理を探求する者、そして人の世に紛れて生きる者もいる。
ソイツらは冒険者では無いので公式なランクではないが、裏ではこう呼ばれている……
「でも、受けてくれますかね? あの新人に任せて良かったんですか?」
「ふ、奴は単純だからな。 ただのお使いみたいなものさ、書類を渡すだけだ。 そんなもん馬鹿でも出来るだろう? ……別に他意はないぞ」
今回、依頼したジェット・ブラックも黒級の1人だ。
奴のルールは"人間と同じように自ら稼いで生活する"というもの。
そんなルールを掲げているくせに本人は怠惰で怠け者だから金が尽きた頃に依頼を出せば、渋々ながらも仕事を受ける。 これが奴との上手い付き合い方だ。
「へー、そうなんですねー。 ふー」
この女、もう興味なくなったのか爪をいじりはじめやがった……
まぁ、後は明日の朝、報告を待てば良いだけだ。
今日も平和に定時で帰れそうだな。
☆★☆★☆★☆★☆★
コンコンッ
執務室のドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ」
「し、失礼します! ルル・ルーデンです! 昨日の報告にまいりましたっ!」
ドアを開け入って来たのはピンクブロンドの髪を肩上のボブで切り揃えている新人ギルド職員だった。
緊張しているのか大きな素振りでお辞儀をしている。
「続けてくれ」
「あ、あの…… 昨日はヅラの事すいませんでした! その…… 良く考えたら頭用の防具としてならいけるかもしれません!」
「その報告はいらん!! 古城の方だ!」
「ひぃ!? す、すいません! ……古城の方は、えっと……
「は? 首無し騎士に魂喰いまではまだ分かる。 でも、さらにリッチだって?? えっ? ほっといたら国家滅亡レベルじゃん!?
「
良かったー! 他のパーティに回さないで!
首無し騎士一体でも聖銀級が必要なのに、魂喰いにリッチまで…… 聖銀級でも全滅だったな……
現在ヘルヘイムには2つの緋金級パーティと5つの聖銀級パーティが居るが、別の任務中だったり王都から離れていたりと、高ランクのパーティはなかなか空いていなかったりする。
こんな事があるから、基本的に暇してるアイツは都合が良いのである。
しかし…… アイツに1発で書類を渡せるなんてなかなか見所があるな……
「よし、ルル君。 交通費ぐらい経費でおとそう。 それと…… 君をMr.ブラック氏専属のメッセンジャーに任命する! 今後とも頑張ってくれたまえ!」
「えぇぇぇええ!? いーーやーーだァーー!!」
さて、他にもアイツにやらせる様な案件あったかな…………
そうして俺はまた塩漬け案件を漁っていくのである。
Mr.ブラックさん 〜新人ギルド職員ちゃんは人外達に庇護されるようです〜 猫そぼろ @IITU
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