第2話 ルルとMr.ブラックさん 2
新人ギルド職員の私、ルル・ルーデンはギルド支部長のヅラ……違った、違くないけど。 ジョブズ支部長からジェット・ブラックという冒険者に指名依頼を届けてこいと言われここまで来たんだけれど…………
「あの…… つかぬ事をお伺いしますが…… いまさらでなんですが、貴方がジェット・ブラックさんでいいんですよね?」
そう、今まで相手を確認していなかったのだ! これで全く違う人だったらどうしよぅ〜
「本当に今更だな!? まぁ、俺がジェット・ブラックで間違いない。 けれど、もし俺がジャンボ・ジェットだったらどうするつもりだったんだ?」
「ちょっと何言ってるかわかりません」
「ジョブズの奴からは何も聞かされてないのか? まぁいい。 俺がジェット・ブラック。 通称Mr.ブラックさんだ。 で、あっちにいるのが……」
「ユピーだよ! よろしく!」
いつの間にか凄く近くまで来ていた女の子がジェット…… ブラックさんの後ろから顔をだし挨拶してくれた。
わぁ…… 近くでみるととっても綺麗な女の子だ。
透き通るような白い肌に、大きいけれど切れ長の紅い瞳、小さく艶のある紅の唇…… 八重歯かな? まるでお人形さんの様に整った顔で羨ましいな。
「じゃあ、さっさと行って来るか。 行くぞユピー」
「やだ」
「…………」
「いやぁ、ユピーさん。 ここは2つ返事で出発する場面でしょ? こんなんでイチイチ止まってたら押しちゃうよ? 魔物さんも帰っちゃうよ?」
魔物が帰るのは別に良いのでは?
「だって今日満月」
ユピーちゃんは人差し指を立てて微笑む。
見た目はまだ13、4歳ぐらいなのに妙に妖艶で蠱惑的な色気を持っている。
「あー…… じゃあ、えっと…… 職員さん一緒にいきましょう!」
「あっ、ルル・ルーデンていいます。 すいません自己紹介が遅くなりました。 それと、私もう今日は上りで……」
せっかく早く帰れると思っていたのに、なんやかやもう19時を回っている。 早く帰りたい……
「えぇ、だって俺超方向音痴だし。 誰か一緒じゃないと目的地に着かないよ」
「いやぁ…… 今日はちょっとぉ……」
「はぁ…… 今夜魔物を退治しなかったせいでもしかしたら新たな被害者がでちゃうかもなぁー? そんな事になったらなぁ…… ジョブズも困っちゃうよなぁ…… なんで今日行かなかったんだ? って言われたらルルルーが一緒に行ってくれなかったからって言っちゃうかもなぁ」
なんかめっっっちゃチラチラ見て来るんですけど!?
足元見るし、そんでもって名前の切る所間違ってるしぃ!?
「あの、あの…… じゃあ近くまでですよ? 絶対に中には入らないですからね!?」
「オッケーオッケー! よし行こう! さぁ行こう! すぐ行こう!」
うぅ…… 結局丸め込まれてしまった……でもでも、仕事をクビになる訳にはいかないしぃ……
☆★☆★☆★☆★☆★
ウォルネスまでは列車を使って2、3時間程で着く。 しかし出るのが遅かったせいで早くも22時を過ぎてしまっている。
今日中に帰れるのだろうか? そもそも無事に生きて帰れるのだろうか……
ウォルネスから郊外の古城までは馬車を借りて移動する。
早く帰りたかったのと、歩いてく元気が出なかったのだ……
勿論、列車のチケットも馬車のレンタル代も私が立て替えている。
その馬車の車内で向かい側に座る男をまじまじと見てみる。
腕を組んで仏頂面で静かに座っている男……
黒い髪に黒い瞳…… ん? あれ? 瞼に目が描いてある!?
えっ!? 何してんの? この状況で?
私と2人だけなのに、なんでちょっと寝てるのバレないようにとか気を使ってんの?
それにしてもこんな人がジョブズ支部長を呼び捨てにしてたけど、支部長より年上? イヤイヤどう見てもそんな歳にはみえないし。 支部長はもう直ぐ60超えるぐらいのはずだし、この人はいってても30代ぐらい…… 見た目通りだったら20代半ばぐらいかな
ただ単に生意気な人なのか、実は凄く偉い人なのかも……
そんな事を考えていたら目的地に着いたみたいだ。 馬車がゆっくり速度を落として止まる。
「お客さん、着いたよ。 ここから先はお化けが出るって有名でね……あとは歩いて行っとくれ。 一応この付近で1時間ばかし待ってるからさ、いなかったら帰ったと思ってくれ」
「おぉ!? やっと着いたかぁ」
御者の方が言うとブラックさんが涎を拭いながら馬車を降りていく。 私は、ここで御者さんと待ってようかと思ったけれど御者さんの私を見る目がイヤラシイので仕方なく降りる事にした。
季節は晩夏、とはいっても昨今の温暖化の影響かここ数年は秋口に入っても残暑が厳しい事が多い。
今日も暑かったはずだけど、夜になったせいか、ここにお化けが出るという噂がそう感じさせているのか少し肌寒さも感じるほど……
こんな場所でも月は綺麗に輝いて、寒そうに腕をさする私に彼がそっと上着を掛けてきて…… なんて私が少し現実逃避している間にブラックさんはスタスタと古城へと歩いて行く。 早い! 歩くの早い!
「ちょっ!? ちょっと待って下さいよぉ!! こんな場所に置いてかないでえぇ!!」
古城の近くまで来ると、なんとも趣きがあると言うか…… 明らか"出そう"である。
「わ、私流石に中には入らないですからね? ここで待ってますからね? 3分で帰って来てくださいね! 3分過ぎたら私伸びちゃいますからね!」
「インスタント麺か!?」
しかし、ブラックさんはなかなか入ろうとしない。 ドアをガチャガチャやってるだけだ…… え? もしかして普通に鍵がかかってて入れないってオチ? それならそれで良いんだけど…… 早く帰りたい。
「あっ!? 引き戸かこれ」
ふぁ? なんで? こんないかにも古城な扉がなんで引き戸?
「じゃあ、ちょっと待ってな。 チャチャっとやっつけて来るから」
そう言って引き戸の奥へと消えて行くブラックさん…………
1人になったら余計怖いなぁ…… カァカァカァカァ、カラスがうるさいし、ドンドン集まって来るし、本当にドンドンドンドン…… 集まり過ぎでしょ!? 何? カラスの集会でもやってんの? ウソでしょ!? ざっと100羽以上いるわ!?
ふと、視線を感じて後ろを振り向くと……
えっ!? うそ……
なんか黒い人影がゆらりゆらりとコッチに向かってきてるんですけどー!!
ヤバい! 怖い! まだブラックさんと一緒にいた方がいいわ!
ガチャガチャガチャ!!
開かない!! ドアが開かなく!!
スゥ……
あっ、引き戸だコレ。 しかもめっちゃ滑りが良い。
いや、そんな事に関心してる場合じゃない!! 早くブラックさんと合流しないと!
勢い込んで古城の中に飛び込むとそこはだだっ広いホールになっている。
城内は石造りで出来ており、所々壊れていて建物の歴史を感じさせる。
中に入っても意外と明るいのは天井部分が一部崩れていて月明かりが入ってきているからだ。
「早く探さなきゃ……」
私はブラックさんと合流して無事にこの古城から帰る事が出来るのだろうか……
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