第3話 一級フラグ建築士

 向かう先は浅草である。

 浅草……片手で数えられるほどしか行った記憶が無い。

 場所もうろ覚えだし。銀座線で行けるんだよね、知ってる! というくらい。


 しかし目的地のホテルが浅草寺の裏側にあり、GoogleMapにナビを頼んだら「日暮里からバスに乗れ」と指示されてしまった。


 うむ。電車ならある程度把握してるんだけど、バスはバス任せにするしかない。

 ナビ任せで目的のバス停に着き、そこからまたナビを見て歩く。なんとか無事に予約を取ったホテルに辿り着くことができた。


 チェックインだが、タッチパネルがあってセルフだった。早速予約番号とか入れてチェックインしようとする。……が、エラー。

 おかしいな、と名前にスペース入れてみたりして何度か試すもエラー。

 フロントの人からは「お手伝いしましょうか?」と英語で言われ、「日本人です」と答えた。娘は私の後ろで「フラグ? フラグ?」とはやし立てる。うるせぇ。フラグであってたまるか。


 結局、フロントの人に「ご予約が確認できる物はお持ちですか?」と言われ、予約確認のメールを見せることに。

 日程も、ほら、2月12日って…………アウトじゃん!!!!

 今日2月9日ですよ!

 予約取ったときに間違えて、そのまま気づかず来てしまったんですね!!


 娘は「フラグが!」と後ろでハイになっていた。おのれ。


 さあ、困ったぞ……。今日は金曜日なのだ。普通ホテルは混んでいる。

 フロントの人が確認してくれたところ、幸い予約したのと同じツインの部屋が空いていた。ただしお値段が違う。

 ここで家に帰るか、お高い部屋に泊まるか。

 とりあえず母に電話して相談し、そのまま宿泊することにした。

 母のクレジットカードで決済していた12日の予約は、ホテルの方で取り消してくれるという話になり、予定より数千円高い上に朝食も付かないけどまあいいや、と私たちは用意された部屋へ向かった。



 ホテルの10階に部屋を取ることができた。セミダブルベッドがふたつの部屋で、別に広くもないし狭くもない。一人旅が好きで安いビジネスホテルに泊まり慣れている私にとっては、「まあ、広い方じゃん?」と思うくらいである。

 けれどそもそもホテル慣れしていない娘にとっては「狭い」と感じたらしい。

 

 窓の外には花やしき。私の大好きなスペースショットが見える。あれを昔やったときにはブラックアウトしたっけなあ。「これがブラックアウトか!」って感動したっけ。昨年末に家族でよみうりランドに行ったときには、同じタイプのアトラクションであるクレイジーヒューに私と娘だけ乗ったなあ。


 そんなことを思いながら、今話題のトコジラミが怖いので、ベッドや浴室などを細かくチェック。娘は警戒心がないもので、疲労からベッドにダイブしてうつ伏せでぶっ倒れている。

 幸い、ホテルは築浅なのか、改築して間もないのか、とても綺麗だった。

 1点残念だとしたら、椅子がひとつしか無くて、ふたりで作業をするのは無理そうだし、ラウンジ的な物もこのホテルにはないということだった。


 まあ、いいや。時間があれば小説を書こうと思ったけど、時間はどちらかというと詰まっている。荷物を適当に整理したら、牡蠣を食べるために居酒屋へ向かわなくては。

 これもまた、東京の反対側なんだよなー! ここで寝っ転がっていたいなー! 無理だよな、チクショー!


 ……という私の思いも、実はフラグであったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る