第9話

 私はいつも通りに早朝に冒険者ギルドに出社し、掃除をした後に受付で仕事をしていました。


 ギルドの朝はとても忙しいです。 E級以下の冒険者の方々は少しでも割の良い依頼を受けようとギルドが開くと、直ぐに板にある依頼を持って殺到してくるのです。


 それを捌くのはとても忙しいです。ですが、それさえ終われば夕方に依頼を終えた方々が殺到してくるまで、書類仕事はありますがあまり忙しくはありません。


 ですので、ピークを過ぎた今は、書類仕事をしながらも周りに気を配り、冒険者の方が来たなら直ぐに対応できるようにしています。


 しかし、今日来た方はお隣にいらっしゃるメイシア様が声をおかけになるまで、いえ、かけられた後に更に注意をして見ないとそこに居ると分かりませんでした。これほど気配を消すことが上手い方はそうそう見かけません。


 興味を持ちさりげなく盗み聞きしてみると、その方は冒険者になる際にE~C級のいずれかになれる試験を行いたいとのことでした。


 この試験を受ける方々は実力者であることが大半です。やはり凄い実力者の方なのかと思っていると、ギルドカードに登録者の姿と魔力の波紋を記録するためフードを取ってもらうところでした。フードを取るとハッキリと彼女の存在を認識出来る様になりました。


 今までの声と話し方から男の方だと思っていましたが、高貴な気配のする凛とした少女であり、その姿にふさわしい可憐な声の方でした。


 声が違っていたことや気配が薄かったのは、彼女が羽織っているフード付きのローブが魔道具でありその効果なのだと思われます。これほどの効果を持つとなると途轍もなく高位の魔道具です。間違っても平民、いえ、王国の並みの騎士や貴族などではどう足掻いても手に入れられる物ではないでしょう。それこそA級以上の冒険者や王国の各騎士団長、公爵家以上の貴族でなければ手に入れられる物ではないと思われます。


 高位の魔道具を持つ程の家格もしくは実力を持ち、年若い彼女が色々と危険が多く、粗野な方が多い冒険者になろうとは何かあったのではないかと好奇心が掻き立てられます。


 彼女の経歴を想像している間に、冒険者の説明が終わりました。

 ですが、その後にメイシア様がとても丁寧に頭を下げて今後の活躍を期待している旨を伝えておりました。確かに、今までも将来有望の方には丁寧に頼むこともありましたが、貴族を相手にする程の対応ではありません。


 好奇心に負けてしまい、彼女が影のように消え去った後メイシア様に先程の方について聞いてしまいました。メイシア様は奇麗に微笑み、あの方について余り詮索せず、普通に接する様にと窘められました。

 敬愛するメイシア様に嫌われるのは避けたいので大人しく了承しました。


 ですが、あの方については何故かとても気になってしまうのでこっそりと接点を増やして今後の動向に気を配りたいとおもいます。

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