第4話
目が覚めるとアルテの苦しそうな顔が目に入ってきた。
そして、怨嗟の闇と彼女の一部の記憶や知識が流れ込むのと共に銀色の光が俺に流れ込んでくるのが分かった。
そして、自分の何かがアルテに流れていき、俺が書き換えられていく。
これはアルテの気持ちだと思うが、それがなくとも先程焼き付けられた記憶だけで俺は人間を恨むのに、化け物として狂うのには十分だった。
吐き気が酷い。
このまま狂っちまえば楽なのに、狂えない。
多分、アルテのおかげな気がする。
「なんですか、これは!直ぐに流れを拒んでください!」
アルテの突然の叫びに俺は現実に戻され慌てて指示に従う。
だが、流れは止まらない。
アルテと俺がどんどん変革し、深く繋がっていくのがわかる。
「全然止まんねーんだけど!」
全力で拒んでるのに、魂が変質していく。
どうしようもない出来事に焦りを覚えるが、自分がアルテと繋がり変質していく事に、なぜか危機感はあまり感じない。
「****、***止まれ!」
アルテのこの言葉の後、少しして何かの交換と書き換えが終わった。
するとアルテが手を放し、同時に俺の体は自由になる。
アルテを見ると、髪は銀髪で眼の色は天色だが、15才程まで幼くなった彼女が顔をこわばらせたままこちらを見ていた。
「ごめんなさい、予想外な事になったみたい。
私達の今の状態について話す前に、少しこの世界と魂の事についてから説明をするよ。
この世界の理では、死ねば魂は世界の生命力に溶けて混ざってしまうんだ。
だけど、魂となっても世界に溶けない例外が2つだけあるんだよ。
1つ目はこの世界とかけ離れた理で生まれた魂。
2つ目は禁術と言って、世界の理を捻じ曲げて魔術に使われている魂。
前者はシンヤで後者が今の
ここまでは良い?」
「大丈夫、そこは流れてきた知識にあったよ」
記憶を見たことで禁術と吸血鬼の事は分かっている。禁術は魂を使うことでとてつもない威力が出せる魔術だ。
そして、禁術で使われた魂は禁術が発動している限り、捻じ曲げられた理により世界に溶けることはできない。
吸血鬼と魂喰いはそれを利用して人が作った魔術生物であり、禁術そのものだ。
アルテの体には215人分の怨念の魂でできており、その体の核となっているのが生前のアルテとアルテが必死に守った18人の魂が混ざったものだ。
今のアルテは19人分の魂が混ざった存在で、その19人が残りの196人分の怨念の魂を制御している状態だ。
「続きを話すね。シンヤの魂はこの世界には溶けて混ざらない。
だけど私を創る魂の中に君と同じ理から生まれた魂がいたんだよ。
シンヤはあの子と少しだとしても繋がりを作ってしまったせいで、私よりも深く、強く君と混ざって繋がってしまったみたいなんだ。
そして吸血鬼の特性で一つの体に幾つもの魂が存在できるせいで、君と私達で体を形作る二つの核ができてしまったんだよ」
「えっと、もしかして、一つの体に二つの心って感じ?それなら初めの話と大して違わない気がするんだけど」
「大きく違うよ。君が得ているこの体に対する権限が大幅に強くなっている。
いろんな要素が混じっているけど、今ではこの体の支配権は君が6割、残りの4割が私達になったんだよ。今は心の中に居るから分らないだろうけど、今の外の体は本来の君と色々と違うけど、男の体になっているよ」
フム、なんだか大変申し訳ない事になっている気がする。
「もしかして、乗っ取っちゃいました?」
「そうなるね。
だけど、君が拒まなければ私が表に出て動けるよ。
まあ、その状態で使える力は本来の2割程度だけどね」
「えっと、なんか自分のせいですみませんでした」
「気にしなくて良いよ。私でも気づけなかった事だから。
でも、このままではとても困るから協力してくれるかな?」
元々は俺を助けようとしてこうなったわけだし、ここで断るのは人としてどうかと思う。
「分かった、協力するよ。俺は何をすれば良い?」
「まずは、私が表に出るから抵抗しないでね。それと私がこのまま弱まっているのは不味いから力を戻す為に魂を集めるよ。その時、丁度いいから君も鍛えるから。私が表に出てても君は魔術を使うことができるから戦っているときに魔法を打って敵を殺して」
「ごめん、自分から進んで悪事をしてない人を殺すのはちょっと。
それに死んだら魂はすぐ消えるんじゃないの?」
「そんなことはしないから安心していいよ。人間の国で冒険者になって、仕事として魔獣や盗賊みたいな悪人達、後は私を殺そうとする者達だけから魂を奪うから。
それと魂を奪う方法は色々あるから大丈夫」
「それなら大丈夫だと思う」
「じゃあ、早速色々と動くよ」
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