朗報
学園に新入生がやってきて、メアリとイブが個別指導組に加わることになり。
順調に全員が成長していく中、ついに待ち望んでいた報告が俺の元に届いた。
「レヴィ、ダンジョン攻略したよ!」
「! 本当か!」
それはある日の夜のことだった。
ジークたちが俺を訪ねてきていると聞き部屋に招き入れたところ、彼は笑みを浮かべながら開口一番にそう言ったのである。
「本当だよ。オレたちで力を合わせて、なんとか最奥の魔物を倒すことができたんだ!」
「いや〜、大変だったよ! でもあたし、今がこれまでの人生の中で一番楽しい! 達成感が半端ないよー!」
「今までとっても苦労したもの。報われて、本当に良かったですわ」
「へへ、あっしもまさかダンジョンを攻略できるなんて。これも全部兄貴やジークたちのおかげでゲスよ」
ジーク、エミリー、アネット、ドーク。
俺の部屋でわいわいと騒ぐ4人は喜び、笑い、安堵し、楽しげに。
嬉しそうに俺に報告をしてくれた。
どうやらダンジョンを攻略して、そのテンションのまま俺の部屋に突撃してきたようで。
みんな揃ってのボロボロな姿は、ついさっきまで激戦を繰り広げていたことをありありと想像させる。
「まったく、こんな夜遅くに押しかけてきやがって」
「あはは、悪いね! でも、そんなこと言いながらレヴィも笑ってるじゃんか!」
そりゃあな。
結果が出たとなればこいつらを指導してきた甲斐があるし、何よりジークが神器を獲得したという事実は大きい。
これで魔王を倒すための最も大事なピースが完成したのだから。
「ネロ、急で悪いがこいつらに何か作ってやってくれ。大事を達成したこいつらを祝ってやらなきゃならん」
「わ、わかりました! うへへ、レヴィさんのために、腕によりをかけて作りますよ……!」
「う、うん。できれば、俺のためじゃなくて、ジークたちのために頼むな?」
ネロは楽しげに笑いながらキッチンへと消えていく。
なんかズレている気がするが、あいつの料理はまじで美味いからな。
誰のために作ったところで問題ないだろう。
多分。
「エルヴィンもネロを手伝ってやってくれ。こいつらたくさん食いそうだし、ネロ1人じゃさすがに忙しすぎる」
「かしこまりました」
エルヴィンは心得たと頷き、キッチンへと向かう。
彼は執事なので料理は管轄外だが、さすがは熟練の執事というべきかそれなり以上の料理をしてくれる。
2人で協力すれば大量の料理を作っても多少は忙しさが軽減されるだろう。
「それなら、スラミィはお姉ちゃんとジーナを呼んでくるよ! あと、メアリとイブも!」
「よし、任せた」
「任せて!」
そう言ってスラミィは元気よく部屋を出て行った。
あまり人数が多すぎると、この部屋に入りきらなくなるがメリーネたちが4人増えるくらいなら平気かな。
「いやあ、気を遣ってもらってごめんね。さっきまで戦ってたところだから、お腹減りすぎてていくらでも入りそうなんだ。ありがたい限りだよ!」
「気にするな。好きなだけ食べていくと良い…………それで、神器はしっかりと手に入れてきたか?」
「ああ、それはもちろん!」
「ねえねえ、レヴィくん! あたしの神器はなかなかすごいよ〜! 今なら、レヴィくんにも勝てるかもね!」
「ふっ、自信があって結構だ。できるものなら、さっさと俺を超えて強くなってくれ」
神器を獲得したばかりでいきなり俺よりも強いなんてことはないだろうけど、俺を超えてくれるならそれはとても嬉しいことである。
魔王との戦いに向けての戦力は強ければ強いほどいい。
とは言っても、まだまだ負けてやる気はないけどな。
越えられたら普通に悔しいし。
「女神様にもお言葉をいただきましたわ! 私に神命を与えてくださったのです。『魔族に立ち迎え』と。私、女神様のためにもがんばりますわ!」
「あ、それあたしも同じ!」
「あっしも」
「オレも!」
「そ、そうでしたのね。女神様に神命を受けたのは、私だけじゃなかったのね。…………そうなのね」
やる気を見せていたアネットが、他のみんなも同じ言葉をかけられていたと知りしょんぼりとする。
神命を与えられたのは自分だけだと思っていたのかな。
信仰に篤い人にとって、女神と直接会って声をかけられるというのは特別なことだろうし。
俺のときはどうだったか。
たしか『滅びの運命を覆せ』とかなんとか言ってたか?
まぁ、俺の場合は転生者っていう事情があったからな。
というか、全員に同じ言葉っていうのもどうなんだ。
女神って実は面倒くさがり疑惑があるんだよな。
メリーネに『猫耳の使徒』とかいうふざけた名前を与えていたし……本人は喜んでたけど。
今回も4人連続で来て面倒くさくなったのかな。
…………それでいいのか女神よ。
「ご主人様! お姉ちゃんたち連れてきたよー!」
「レヴィさま、おじゃまします! エミリーちゃんたちがダンジョンを攻略したって、本当ですか!」
「うぃ〜、来たわよ〜」
「師匠! こんな時間に呼んでくれるなんて、私はいつでも準備できてるですよ!」
「ふわぁ……眠いのだ」
話をしていると、スラミィがみんなを連れて部屋にやってきた。
メリーネはジークたちの中で一番仲の良いエミリーのところへと駆けつけ、スラミィは俺のところに来て頭を差し出してきて褒められ待ちをするので撫でてやった。
ジーナは、ちょうどのタイミングでエルヴィンが料理を持ってきたのを見て嬉しそうに着席した。
いや、お前は働けよ。メイドだろ。
イブは……何を言ってるんだ。
寝ぼけ眼であくびをするメアリは、さっきまで寝ていたのだろうか。起こしてしまったのなら申し訳ない。
その日の夜は、門限ギリギリまでみんなでジークたちのダンジョン攻略を祝った。
最初にダンジョンを攻略したのはジークたちだったが、この調子なら他の6人がダンジョンを攻略するのもきっと時間の問題だ。
魔王討伐へ向けて、大きく前進だな。
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