再会
俺とメリーネが担当する授業、『ドレイク塾』の新入生に対する選抜試験の日。
演習場で新入生を待つ俺たちの元へと、授業開始時間よりもかなり早くに一番乗りの新入生が颯爽と現れた。
肩のあたりで揃えられた茶色の髪に金色のつり目。
丈を短くヘソ出しに改造された制服と、その上から羽織るぶかぶかの大きなコート。
自身満々に腕を組み、威風堂々と佇むその少女はニヤリと笑って言った。
「――あたしが来たのだ! 久しぶりだな、レヴィ、メリーネ!」
「わあ! メアリちゃん!」
「メアリ! お前なんで学園に!?」
それはまさかの再会であった。
海洋都市ロイズで共に海に出て冒険をした少女――メアリがそこにいたのである。
これには、さすがに驚いてしまう。
イブが学園に来たこと以上の驚きだ。
だけど再会できたことはかなり嬉しい。
メリーネもメアリとの再会をめちゃくちゃ喜んでいる様子だし、ネロやスラミィも彼女が学園に来たことを知れば喜ぶだろう。
「何で来たのかと言うと、待ちきれなかったのだ!」
「待ちきれなかった?」
「だって世界を冒険する約束をしたけど、それは何年後になるかわからないし。レヴィたちだって、まったくロイズに遊びに来てくれないし」
メアリは拗ねるように言う。
そんな彼女の言葉に、俺は首をかしげた。
「ん? 会いに行ってよかったのか? なんか、約束した冒険をする日までお別れ――みたいな感じだったけど」
「そ、そんなこと言ってないのだ! なんでそんな話になるのだ!? 普通にロイズに来てくれてよかったのに! いつ会いに来てくれるかなって、楽しみに待ってたのに!」
「そ、そうだったのか」
「そうなのだっ! もしかして忘れられちゃったのかなって、すっごく不安だったのだぞ!? 今日だって、ここに来るまでレヴィたちが覚えてなかったらどうしようって気が気じゃなかったし!」
……なんか知らぬ間に、メアリに対してすごく可哀想なことをしてしまっていたらしい。
「あはは……でも、メアリちゃんと再会できて本当に嬉しいよ! ねっ、レヴィさま!」
「ああ、それはもちろんだ。俺が言うのも何だがよく学園に来てくれた、歓迎するぞ」
「いひひ、あたしもみんなに会えて嬉しいのだ! やっぱり、同じ船の仲間は一緒にいないとだからな!」
俺たちは揃って笑い合う。
離れていたと言っても、ロイズでの冒険からまだ1年も経っていない。
だけどこのあの日から今日までの間にいろいろなことがあったし、メアリの方も変化があったという。
久しぶりにあった俺たちは近況の報告をしあう。
「――噂には聞いていたけど、レヴィとネロは本当に七竜伯になったのだな。うぅ、先を越されてしまったのだ。あたしも早く七竜伯や黒髭のような英雄になりたいぞ!」
「焦ることはないだろ。まだ本格的な冒険にだって出てないんだし、キャプテン・メアリの伝説は始まったばかりだろ?」
「ま、まぁそうなのだがな。あたしはみんなと違って弱いから仕方ないのはわかってるけど、置いてかれているのは事実だから複雑なのだ」
「メアリちゃんを置いていったりなんてしないよっ! それにここに来たってことは、強くなろうって決めたってことだよね?」
メリーネの言葉にメアリはためらいがちに頷いた。
「ほ、本当はレヴィたちに会いたいからっていうのが1番だったんだけど……でもやるからには本気でやるのだ!」
「メアリにはかなりの素質があるし、ちゃんと努力すれば俺たちと肩を並べられるくらい強くなれるぞ。多分」
「それならよかったのだ。キャプテンの仕事は仲間を信じること……だけど、1人だけ明らかに弱い奴がキャプテンだったら格好がつかないからな」
メアリは安心したようにほっと息を吐く。
本人はかなり気にしているようだが、メアリには強くなれる素質が他の誰よりもある。
なんたって継承型の神器、『
これだけで相当なアドバンテージだ。
継承型の神器と普通の神器は両立する。
その特質によって2つの神器を獲得することで、人類最強の座を手中に収めているのが、エレイン王国王家の『竜の力』を受け継ぐ当代1人の特別な王族。
要するに、エレアのことなんだけど。
継承型の神器は通常の神器と比べて出力は劣るが、それでも魔族の権能と同等以上の力を持つ。
それに通常の神器も同時に得ることができるのだから、出力の差なんて些細なことだ。
メアリもまた、エレアと同じ。
黒髭から継いだ継承型神器を持つメアリは、ダンジョンを攻略すれば自分だけの神器も得られる。
それはすなわち、人類最強に至る可能性を持つ稀有な素質の持ち主であるということ。
まぁ実際のところは才能とか努力にもよるし、神器を2つ持つから必ずしも最強になれるわけではないけどな。
あくまでも素質であって、それを活かすかどうかは本人の努力次第である。
「何にせよ、これからまたよろしく頼むのだ!」
「ああ、改めてだな」
「よろしくっ! メアリちゃん!」
満面の笑みを浮かべるメアリに、俺とメリーネも笑って頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます