第48話 国境の橋での騒動

町に戻ると何だか騒がしい気がした、途中で話し込んでいる獣人のおばさま方に話を聞くと何でも西の北側の沼地のリザードマンが激減したと言う。

それだけならまだ良いのだが先ほどリザードマンの死体が町に流れ着いたと言う、普段は生息地からめったに出歩かないはずのリザードマンだが沼地のジャイアントトードが減ったために餌を求めて上流に移動した可能性もある。

上流は深淵の森になる、そこで手ごわい強力な魔物に出会うと戻ってきたしまい、行き場を失くして町を襲うかもしれないと警戒をしているらしい。


ママ 「これは早くギルドに知らせた方が良いのじゃないかしら?」

おと 「リザードマンは一網打尽にしましたよって?」

パパ 「又目立ってしまうんじゃないかな…」

さき 「またパパ絡まれるかもね?」

パパ 「何の用事で森の方に行ったかだな説明が出来ん」

ほし 「牛さん探しに行ってたってのは?」

ママ 「川沿いを森に沿って行ったら生息地だからそれが良いかしらね?」

パパ 「向かってる途中の岩場で休憩してたら襲われたことにするか」

おと 「岩場迄2時間くらいだから良いかもね」


皆で相談しアリバイ工作をして南の町のギルドに入る、中は職員たちが忙しそうにバタバタと走り回り、冒険者に指示を出したりしていた。

パパが代表で受付に向かい知っては居たが話を聞くことに。


パパ  「何かあったのか?」

受付嬢 「川を西行った北側の沼のリザードマンが姿を消し移動したらしいので町の川辺の警戒を緊急依頼で出して居る所ですⅮランク以上が対象です」


パパ  「緊急依頼は初めてなのだがCランクは強制なのか?」

受付嬢 「緊急依頼は強制では在りませんが報酬が良いのと昇進査定にプラスされます、今回は沼地のリザードマンの半数以上が移動したようなので率いている上位種も要る可能性があります」

パパ 「そうなんだな…リザードマンの話なんだがな今日モー牛見に行こうと東に川辺を進んでいき岩場で休憩をして居たら襲われてな、戦闘に成ったんだ、何匹か倒しているんだが、その時の一匹が町に流れ着いたんじゃないかと思うんだが…」


少し此処でお待ちくださいと言って奥に走っていく受付嬢、奥で話し声が聞こえてくる、受付嬢が戻ってくると、詳しい話が聞きたいので奥に来てくれと言われる、パパ1人で良いと言うので皆は併設されている酒場で休憩してもらう事に。


パパは受付嬢の案内で奥の部屋に向かう、扉の前で受付嬢がノックして声を掛ける「マスター先ほどのお話の人物を連れてまいりました」「入れ」と言われて中に入る、受付嬢はさっさと戻って行ってしまった、中には熊かな厳つい獣人が居た。


ギルマス 「リザードマンを討伐したらしいが何処でどれ位の数を討伐したんだ?」

パパ   「この町から川沿いを東に行った岩場のあたりだな」

ギルマス 「そんな所に人族が何しにいっていたんだ?」

パパ   「モー牛を見に行こうと思ってたんだ、向かう途中に岩場で休憩して居たらリザードマンに襲われたんだ」

ギルマス 「モー牛を見にか…」

何か言いたそうにして、しばらく考え込んでいる

ギルマス 「それでリザードマンはどれほど退治できたんだ?」

パパ   「出て来たのはみな退治出来たが86匹だったかな、1匹流れて行ってしまったがな」


ギルマス 「なに!87匹だと?嘘を言うなよ?」

パパ   「収納鞄の中に入ってるから出せるぞ?」

ギルマス 「それは本当か?そんな大容量の収納鞄など滅多にあるもんじゃないぞ?」

パパ   「鞄の事が聞きたいのか?家族が鞄を持って居る、呼べばどこえでも出せるぞ?」

ギルマス 「では家族を読んで、納品の所まで来てくれ」


パパは家族の元に呼びに向かう、するとママが獣人の冒険者に絡まれていた…

何か口論になっている様で周りは様子を伺っている様だ。


パパは音に事情を聴く、何が有ったのか聞くと獣人が休憩して居た家族に、「南は獣人の町だ、人族は北に消えろ!」といきなり机の上の飲み物を弾き飛ばしてきたと言うのだ、それに切れたママが獣人と睨み合いになり口論になっている様だった。

パパはため息をつきママの元に。

パパ 「ママ落ち着いて子供の所に行っておいて」

ママ 「でもこの寅さん酷いのよ!いきなり飲み物ぶちまけるんだもの!」

パパ 「分かってる、音から話は聞いたよ、子供たちが危険だから見て置いて」


『子供たちも危険だがママの方が危険だな』と思って居ても言えないパパだった…

パパはこの白い寅さんかな?の為を思いそう言って前に出る。

其処にパパがちっともやって来ないのでギルマスが様子を見に来た。

ギルマス 「またお前か!今度は何でもめているんだ?」


と白い寅の男に向かってギルマスが聞く。

厳つい白い寅の男は「人族がなぜ南のギルドに来る必要があるんだ!」とギルマスに食って掛かる「ハ~」とギルマスはため息を吐くと

「ギルドに登録しているメンバーはどの国のどこの町でも冒険者ギルドの使用を認められている!茶々丸きさま白虎族だからと言って調子に乗りすぎだぞ!これで貴様はもめ事を起こすのは何回目だ!これ以上もめ事を起こすようならギルド除名にしなければ成らんな!」


ギルマスに除名と言われるとは思ってもみなかったのか先ほどの勢いは無くなってしまった茶々丸と言う白虎族の男、「貴様ら南町で見かけたらただじゃ置かないからな」と捨て台詞を残して去って行った。


ギルマス 「すまんな、白虎族は最近調子に乗りすぎていて手が付けれんのだ」

パパ   「王が白虎族だからなのか?」

ギルマス 「そうだな、国の主要メンバーはすべて白虎族の者に変わってしまった酷いもんだ、多少のもめ事なんかはもみ消してしまうし相手が悪い事にされてしまうんだ、先代の時代は良かったんだがな…」

パパ   「大変な時に来てしまったかな…庇って貰って助かったよ」

ギルマス 「遅かったんでな様子を見に来て良かった、それでは解体場までに来てもらおうか」


ギルマスに連れられて解体場迄向かうと、解体責任者が「お!またお前さんか今度はギルマス連れて何を持ってきたんだ?」と声を掛けたきた、ギルマスが興味を示し「前は何を納品したんだ?」と聞いている、キングクラブにジャイアントトードだ余りにも綺麗に討伐されて居たので覚えていたらしい。

ギルマスは「キングクラブを討伐出来るのか!」と驚いているが「一撃で仕留めている様だぞ」といわれて「一撃だと?」とまたまた驚いている。

「ほんとにCランクなんだよな?」とパパに聞いてきたのでタグを見せると「Ⅽランクだな」と困惑顔だ。「それで今日は何持ってきたんだ?」

ギルマスが我に返り「ここに出して貰えるか?」とパパに指示をする、パパは音の背負っているランドセルから取り出す振りをしながらリザードマンを並べていく、「おいおい何匹出てくるんだ、しかも傷が全くないぞ!どうやって倒しているんだ?」と解体主任は興奮状態だ。

全部出し終わると、ジト目でパパを見ていた…

パパ   「これで全部だな」

ギルマス 「流れ着いたのも傷が頭への一撃だけの様だった、お前たちが倒したと見て間違いないだろうな…」

一通り見渡すと納品書を渡された、「査定に時間が掛かる今日は無理だ、明日の昼までにはやっておく」と言われ今日は帰って良いと。

ギルドのホールに戻ると「緊急依頼は終了しましたー!」と職員が冒険者に向けて叫んでいた、冒険者たちは「なんだよ稼げると思ったのによ~」と不貞腐れて酒場に入って行っている。

パパ 「そう言えば今日だよな蟹食べさせて貰えるの」

ママ 「そうね一回覗いてみましょうか?」

おと 「やったー!蟹食えるぞー」

さき 「どんなのが出てくるか楽しみだね」

ほし 「お腹すいたね、たくさん食べるよ!」

みな蟹を食べる気満々だ、もしまだ蟹が取れて居なかったら収納の中の蟹出せばいいかと思いながら店に向かう事にした。


橋を渡ろうとするがまだ緊急依頼の影響かバタバタとしていて中々渡れない、その時に咲が後ろからいきなり蹴り飛ばされた、転んで顔をすりむいてしまっている。

いきなり蹴って来たのはさっきの白虎族の男の茶々丸だった、さすがにパパもママも切れている、音も星もやるき満々だ!

パパ 「いきなり何をする!咲大丈夫かとポーションを飲ませる」

茶々丸は剣を抜いてニヤニヤしている、ままがハルバードを出して構えている、音も剣を抜き構える。

周りは悲鳴が上がり逃げていく、門の警備の者も何事だと駆け寄って来る。

茶々丸  「見かけたら只じゃあ置かないと言っておいたじゃないか」

パパ   「ギルマスに言い負かされて逃げ出した八つ当たりか?」

茶々丸  「誰が言い負かされたって!調子に乗るな人族ごときが!」

守備隊員 「貴様ら何をやっている!ここを何処だと思って居るんだ!」

茶々丸  「どこだって?白虎族の国だろうが!そんな事も知らないのか?」

守備隊員 「ここの橋は何方の国の物でもない!非武装区域だ!両国の取り決めで決まっている、此処での争いは取り決めで守備隊長に一任されている!」

パパ   「こいつがいきなり後ろから家の子供を蹴り飛ばしたんだ」

守備隊員 「それは見ていたから分かっている」

パパ   「ではこいつはどうするんだ?」

守備隊員 「それは守備隊長の判断に成るな」

パパ   「では守備隊長が解放したらそのままなのか?」

守備隊員 「隊長は両国から任命された方だその方の判断には逆らえん」


その時守備隊長が此方に気怠そうに向かって来るのが見えた、嫌な予感しかしないパパだったが案の定顔をしかめる事に成る。



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