第11話 アイスクリームとコーンのかけら

「……つけられていますね」


それは放課後のこと。公園のアイスクリームワゴンへ熱視線を注いでいたレティシアに、三段重ねのアイスクリームを与えていたときだった。


ぺろ、と桃色の舌でアイスクリームを舐めて幸せそうに笑っていたレティシアは、不意に重々しくそう言った。


「つけられてるって、なに?」

「尾行されているってことです。つい先日からちらほらと気配を感じてはいたのですが、どなたなのでしょう。あなた様のストーカーでしょうか?思い当たる節はございますか?」

「僕にストーキングする物好きなんているわけない。レティシアのストーカーの可能性が高い。だとしたら」

「だとしたら?」

「心配ではある」

「ふふ。大丈夫なのです。わたしとあなた様、どちらを狙っていようがこてんぱんにして差し上げますから」


力こぶなんかできそうにもない細腕を振るうレティシアだけど、そもそも誰かにつけられてるなんて本当なんだろうか。

あるとしたらやはりレティシア関連なのだろうと思うけれど。


「おいしいです!あなた様にも、あーん」

「僕はいいよ」

「おいしいのですよ?」

「レティシアがおいしそうに食べてるのを見ておく」

「まあ。あなた様ったら」


ほんのりと頬を桜色に染める彼女。

……カップルみたいな会話をしてしまった。いかんいかん。


「あら、手がべたべたになってしまいました」

「ハンカチあるけど」

「お手洗いで綺麗にして参ります。待っていてくださいね?」


にっこりして、レティシアは小走りで公園のトイレへ向かう。


僕はレティシアが微かに地面へこぼした、アイスクリームのコーンのかけらに鳩たちが群がるのを眺めていた。


……そんなのんきなことを、している場合じゃなかったのに。

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