第50話 恐るべき者達
盗賊の頭領と思われる美女の姿が見えたのよさ。
村に迫りつつある盗賊団の真ん中で、盗賊達に担がれた輿の上の豪華な椅子に座り、手元には燭台があり、蝋燭の火を撫でるように片手を動かして、どうやら呪文を唱えているようだったのよさ。
その瞬間、蝋燭から光ではなく、闇が放たれたのよさ。
蠟燭から放たれた強い闇はあたしらの周辺を暗くかげらせたのよ。
一瞬、周辺が見えなくなったのよさ。
「オン!バサラ!!ダトバン!!」
メメシアが術を唱え、メメシアから強い光が放たれ、闇をかき消したのよさ。
闇が晴れたが、盗賊達は急接近していたのよさ!
すぐさま白兵戦が展開されたのよ!
プロテイウスは大剣を振り回し、盗賊共をぶった切りまくる!
ハレルは神の雷を放ち、盗賊共を焼き倒す!
武装村民達も必死に応戦しているのよさ!
「マジョリン!あの盗賊の頭を狙い討ちます!道を開けてください!」
メメシアの注文に、あたしは上級魔法で答えるのよさ!
「シャーフェクリンゲ!!」
鋭い魔法の刃をぶっ放し、盗賊共を切り倒し、一直線の道を開けてやったのさ!
盗賊共の間にできたこの隙間をメメシアは駆け抜け、盗賊の頭領の目前に迫ったのよさ!
メメシアは修行によって得た強靭な肉体と、謎の極東の術、そして、様々な魔法を破る奇跡術を扱い、まさに、対魔法使い戦において、メメシアの右に出る者無しなのよさ!
「親分の所に行かせるかよ!」
盗賊共がメメシアの進路を塞ごうとするのよさ。
「オン!マリシエイソワカ!」
メメシアが術を唱えると、炎の壁が現れ、盗賊共の信仰を阻んだのよ!
このまま一直線、メメシアが魔女に術を叩き込めば、あたしらの勝利だわさ!
でも、一瞬、魔女が微笑んだように見えたのよさ・・・
魔女は蝋燭の火を自身の指に付け、宙に印象を描いたのよさ!
シジル魔法だわさ!
それも、禁術である、悪魔召喚のシジルなのよさ!
「オーカス ボッカス トントゥス タロントゥス ヴァデ セレリテル ジュベオ」
っと、魔女が唱えた呪文、それはシジルとは無関係だが、強力な呪文なのだわさ!
相手の視界を一時的に真っ暗にさせる、禁術なのだわさ!
メメシアの足が止まったのよさ!
すると、魔女が描いたシジルから、炎のように燃え盛る目を持った黒い豹の姿をした悪魔が飛び出してきたのよさ!
あの悪魔は、あたしの記憶が正しければ、魔神の領域に存在する協力な悪魔、ハーラス!
その現世の化身なのよさ!
悪魔の化身は本物の悪魔を模して現世に出現させる偽物ではあるのだけど、その力は強力に変わりないのよさ!
「メメシア!!さがって!!」
メメシアは悪魔を前にして、別方向を向いてしまったのよさ!
「メメシア!!右!右だわさ!!」
ハーラスが鋭い爪を振り上げ、メメシアに飛びかかったのよさ!
その瞬間、メメシアは高速で多種類の合掌を組み始めたのよさ!
「リンピョートージャカイジンレツザイゼン!」
メメシアから強い闘気が放たれ、ハーラスを吹き飛ばしたのよさ!
「目をやられたとしても、臭い、足音、空気の流れ、霊気の乱れなどから、相手を察する事はできます」
まじか。メメシア強っ!
「オォォンッ!!インドラヤソワカァァアア!!!」
メメシアの手には光り輝く槍が握られ、それをハーラス目掛けてぶん投げたのよさ!
槍はハーラスを貫いて、背後の丘に命中し、大爆発を起こしたのだわさ!
物凄い破壊力の術なのだわさ!
ハーラスは胴体にデカい穴をあけて、そのままぶっ倒れ、消えて行ったのよ・・・
例え、化身とは言え、上級悪魔を一撃で倒す・・・メメシアは対黒魔術において、秘めたる実力を大いに発揮するのよさ!
このまま勝てる!
そう思った時だったのよさ!
魔女は新たな燭台を表に出していたのよさ!
あたしはその燭台を見て、驚愕してしまったのよ!
手の形をした燭台・・・いや、人の手を燭台にした物なのだわさ!
それで、あたしの感が正しければ、あれは栄光の手なのよさ!
絞首刑で死んだ犯罪者の手で、その上に乗った蝋燭は、同じく絞首刑で死んだ犯罪者の脂肪分で作られた蝋燭で、芯は髪の毛で出来ているのよさ・・・
「メメシアァーー!!その場から離れるのよさぁーー!!」
魔女は燭台に火をうつそうとしている!
阻止せねば!
しかし、距離もあるし、攻撃魔法だとメメシアを巻き込んでしまうのよさ!
そうこう考えている間に、虚しくも栄光の手の蠟燭に火が灯されてしまったのよさ!
シーーーーーン・・・
この場にいるあらゆる人物の動きが止まったのよさ・・・
あたしも、メメシアも、プロテイウスも、ハレルも、村民も、強盗も、異形の強盗も、全ての人物の動きは止まったのよ・・・
ただ、そよ風に草が、木の葉がゆらりとなびき、夜空の雲がゆっくりと流れているのに、誰一人として、硬直したまま身動きが取れないのよさ・・・
これが栄光の手の力・・・
魔女は高笑いし、輿の上から地に降り立ったのよ。
「あれだな。あれだ・・・僧侶の分際でここまで戦えたのは未来永劫、お前だけであろうな・・・」
魔女は盗賊の手にした斧をその手からひっぺはがすように取り上げたのよ・・・
「そうだなぁ・・・そうだ。そうだそれだ。徹底的にミンチにして、骨も砕いて粉々にして、川にばら撒いて、二度と蘇る事の無いようにしてやる!」
メメシアが危ない!
こうなったら、やむを得ないのよさ!
「禁術、拒絶魔法!『ドゥハスト』発動!」
この禁術が発動状態である間、あたしはいかなる魔法、神秘術、呪い、それ以外の物理現象やら何やら、神の加護すらも影響を受けない完全な孤立状態と化すのよさ。
重力にも縛られないので、空中に体を浮かすことになるのよ。
そして、栄光の手の影響も受けなくなり、あたしは身動きが取れるようになるのよさ。
あたしは宙を舞って、斧を振り上げた魔女の顔面に蹴りをぶちかましたのよさ!
魔女は地べたを転がって、その反動を使ってすぐに立ち上がったのよ。
「なんだ?なんだその魔法は!?悪魔と契約をしているのか!?」
「こいつはあたしが独自に編み出した魔法・・・まあ、元になる何種類かの魔法から独自に組み上げた感じだけどね!」
なお、この禁術は制御が難しい。
制御がちゃんと出来ているから、相手を蹴れるし、相手の声も聴けるのだわさ。
制御不能で禁術を使った場合、完全にこの世からも消えて、あの世ともこの世とも言えぬ虚無の空間を漂う事になってしまうのよさ。
その為、禁術が発動中は魔力の消耗が激しいのが難点なのよ・・・
だから、すばやく栄光の手を破壊せねばならんのよさ!
「シュテルケシュトラール!!」
あたしは魔女目掛けて強力な魔力光線をぶっ放してやったのよ!
でも、驚く事に、魔女はこの光線に耐えたのよさ!
「お前・・・あれだな。あれだ。この俺様を倒す事は出来ぬって事だ!」
「だけど、その栄光の手を壊す事はできたのよさ!」
「なに?!」
そう、魔力光線を浴びた栄光の手は塵と化したのであった!
全員の硬直が解かれ、強盗も異形の強盗も村民も、恐れからか、その場にへたり込んでしまったのよさ。
あたしは禁術を解除し、地に足を付けたのよ。
「みんな、動けるようになったのよさ!」
「だから、だからだ、だからそれでどうしたというのだ!」
だから?
異端者に対する怒りを燃やしたメメシアが動き出すのよさ・・・
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