第46話 投石器はロマンだべ!



城を包囲した傭兵達が、投石機を組み立て始めたそうなのよさ・・・

あたし達は塔の覗き窓から、その現場を見たのよさ。


「ああ、お父様が大事に育てた森の木を切って・・・」


ヘーニッヒはショックを受けているのよ・・・


「あれはカゴに石つめて、その重さでアームを動かして石を飛ばすタイプの投石器かねぇ?」


「みてぇだな。ありゃ小さな石は飛ばせねえはずだぜ。だが、城の木造部分に当たれば少しは被害が出るだろうな。嫌がらせする為のもんとしか思えねえけどな」


「あの傭兵達・・・盗賊団相手に戦ってる時よりやる気があるじゃん・・・」


「そんな・・・父上の大事な城に傷がついてしまう・・・それもこんな小さな争いで・・・」


ヘーニッヒはかなり同様しているのよさ。

あたし達は客室に戻って、また、話し合いを再開したのよさ。

ヘーニッヒのおじ、リキムントが話し始めたのよさ。


「話を一旦まとめると、傭兵達に支払う金を用意する為には、町の商人に相談をしなければならない。しかし、当主は不在だ。そこで、勇者が借金の肩代わりができないかという話しになったんだったな」


「正直、オレ達が戦った場合、あの程度の傭兵なら勝てると思うが・・・」


「ダメですよプロテイウス。わたくし達は戦争をする為に戦うのではありません。魔王を討伐する為に戦わなければなりません。1つゆるせば、それこそ大きな戦争に参加させられる道をたどる事になるでしょう」


「だから、魔王と手を組んだ盗賊団を迎え撃つ為の傭兵を雇う資金を得る事は、ボク達的にはセーフなんだよね?」


「はい。ハレルの言う通りです。そういう線引きは大切なのです。それに今回のこの騒動は、間接的とは言え、魔王の災いに入ります。我々が働くべき事案です」


なんか、プロテイウスは納得しきれていないようなのよさ・・・


「相手は長期戦は不可能だぜ。ふもとの村を襲わずにこの城を狙うには理由があるはずだ。なあ、リキムントさんよ。あんた、当主の弟だろ?それなのにまだ幼いヘーニッヒが次期当主であるようにふるまっている。本当は何か知っていて、隠しているんじゃあるまいか?」


「ああ、疑われても仕方がない事だ。オレは文字の読み書きも出来なければ、剣を持って戦う勇気も無い。城の中にいるのにこうして鎧を着こんでいるのも恐れからだ・・・そんなオレは当主を引き継ぐ器じゃないんだ。嫌だし、無理なんだ」


「みっともねえな。いい図体しておいて」


「何とでも言ってくれ。オレは兄貴のしもべなんだ。ただ、兄貴と寄り添っていたから隠し金も無い事はわかっている」


「この山の木々がある意味、財産みたいなものなのねぇ・・・」


「すると、あの投石器は木々を切って、財産の危機をあおっているスタイルの脅しでしょうか?」


「今のハレルのように、林業の説明を受けていればそうわかるでしょう。しかし、彼等はそれをあまり理解していないようですよ」


「まったく・・・どうすりゃいいってんだ・・・」


リキムントは召使いにワインを持って来させ、水差しいっぱいの赤ワインをグラスに注ぐのよ。


「飲まなきゃやってられん。皆もどうだ?少しは飲んで気を落ち着かせよう」


「いえ、我々は飲みません」


っと、メメシアははっきり断っちゃったのよさ・・・


「あたしは飲みたいかな・・・」


「そうだ。それがいい」


っと、リキムントはグラスにワインを注いで渡してくれたのよさ。


「マジョリン。1杯までですよ」


「はいなのよさ」


「この赤ワインはあまりいいワインじゃないからな、胡椒でも入れるといい」


そう言って、リキムントは小皿に乗せたあらびき胡椒をパラパラとワインにふりかけて、指でかき混ぜたのよさ。

まあ、上品とは言えないやり方なんだけどねぇ・・・

あたしも真似して、胡椒をワインにかけてみたのよ。

そんで1口・・・


「思ったより相性が悪いわけじゃないのねぇ・・・元のワインが薄い感じするだけあって、胡椒が加わって少し味の幅が広がった感じがするのよさ」


「そうだ。どんなに落ちぶれても、味気無いものを食べたり飲んだりしていては、もはや騎士で無い。濃い味は強い体と精神を養う・・・オレが言えた事じゃないがな」


そうね・・・そうだわさ。


「ハレルとヘーニッヒの2人が町まで言って、商人と交渉するのがいいんじゃないかねぇ?1人1人では説得力が弱くても、2人で行けばお互いに説得力を付け合う事ができるかもしれないのよさ」


「確かに、それはいい考えかもしれない。しかし、傭兵共は簡単に城から出してくれるか・・・」


「あたし達がここに残って、人質みたいになれば、約束を聞いて道を開けてくれるかもしれないのよさ」


「わかりました。ハレルとヘーニッヒ、それとマジョリンで町に向かってください。マジョリンは万が一、何か起こった場合に対処できる魔法が使えます。それに、商人と話し合いでもつれた場合も、マジョリンが一番柔軟な考えで対応できると思います」


「馬を出しましょう。ヘーニッヒは1人で騎乗できますが、ハレルさんとマジョリンさんは?」


「あたしもハレルも馬には乗れないのよさ」


「では、騎乗できる従者を1人あてらいましょう。ヘーニッヒはハレルさんを乗せて、2頭の馬で4人で町まで向かうってもらいます」


「しかし、こんな役割、あたしでいいのかねぇ・・・」


「わたくしは僧侶として、ヘッデル家のケアが必要です。プロテイウスは万が一の為の城の防衛ノウハウがあると考えています」


「オレは攻めた事しかねえけどな・・・」


「マジョリン。わたくしはあなたを信じています」


あたしはグラスのワインを一気に飲み干して、ちょっと気合いを入れたのよさ。


「おかわり!」


「言ってる側から信頼を無くのではありません!!」


「ひいっ・・・」


こんな感じで、あたしとハレルとヘーニッヒとその他の兵士1人は町へ向かう事になったのよさ・・・



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