第28話 祖父も父も
トロール達への反撃作戦の為に組まれた討伐隊、あたしとハレル、プロテイウス、マカフシくん、ライスロイファー5人が参加する事になったのよさ。
負傷者の手当ての為に、メメシアは村に残る事になったのよ。
あたし達討伐隊はトロール達のいる窪地の風下に回り込み、ゆっくりと接近したのよさ。
マカフシくんは木に登るのよ。
「村人達は石碑の周りに集められている・・・ボクが銃を撃ったらそれを突撃の合図として、全員で一斉に襲い掛かって!見える限り、数はそんなにいないようだから!」
マカフシくんは火縄に火を灯し、狙いを定めるのよ・・・
そして・・・
ダァァァアアンッ!!
発砲音と共に全員総攻撃を開始さ!
ライスロイファーは槍斧を突き出し、トロール達を突き倒してゆく!
飛びかかるトロールをプロテイウスの大剣が斬り伏せる!
ハレルも素早く立ち回り、トロール達を蹴散らしてゆく!
あたしも火を吹いて倒れたトロールに止めを刺す!
すると、石碑が不気味に光り輝き、木の肌をしたかろうじて人型である魔物が姿を現したのよ。
いにしえの悪しき魔女と呼ばれる悪霊の一種だわさ。
悪しき魔女が何か知らない言葉で魔法の呪文を唱え始め、周囲の木々がざわめきはじめるの。
強大な魔法が放たれると思った次の瞬間、
ダァァァアアンッ!
マカフシくんが放った火縄銃の弾丸が悪しき魔女の胸を撃ちぬいたのよさ。
グオオオオッ!!
悪しき魔女は獣のような声をあげる!
通常の生命体から逸脱した存在であるそれは、銃弾を受けてもなお、生命活動を終わらせる事は無いのよさ。
悪しき魔女の声に呼び寄せられたのか、地面の下から、木の幹の中から、様々なトロールが現れ始めたのよさ!
カバみたいなトロールが・・・あれは放っておいて・・・
兎に角、悪しきトロールがあたし達に襲い掛かって来たのよさ!
あたしに掴みかかって来たトロール!
ムカつくドヤトロール顔で、あたしを激しく見下してくるのよさ!
だから、魔法の呪文を唱え、相手の生命力を引き抜いてやったのさ!
プロテイウスは素早く立ち回り、次々にトロール共を切り裂いてゆく!
ライスロイファー達も負けじと槍斧を振り回し、トロールを薙ぎ払う!
こいつら、生身の人間というのに、魔物達と平然と戦えるっての、さりげなく強すぎるって思うのよねぇ・・・
しかし、トロール共も数で攻めて来るのよ。
倒しても倒しても、次から次に湧き出て来るのよさ。
ダァァァアアンッ!!
銃声が鳴るたびにトロールが1対、頭を吹き飛ばされる。
マカフシくんの射撃は正確だわさ。
トケツスタン恐るべし!
あたし達がトロールに苦戦している間、ハレルは悪しき魔女と一騎打ちをしてたのよ。
悪しき魔女の攻撃をかわし、ハレルは剣を魔女の胸に突き立て、そこに神の雷を叩きこんだのよさ。
悪しき魔女は全身を内側から焼かれ、黒い灰となって朽ち果てたのよさ。
すると、トロール達も四散して逃げ去って行ったのよ。
魔力の源になっていた石碑は、その魔力を使い果たしたからか、粉々に砕け散ったの。
こうして、さらわれた村人達は無事に救出できたし、事件も解決できたのよさ。
☆☆
村に戻ると、村人達が出迎えてくれたのよさ。
そして、救出した村人達が家族と再会し、喜びあっているのよ。
村の被害は大きかったのよさ。
失った人名も、破壊された建物も、荒らされた畑、落命した家畜・・・
それは旧約の民の住居も同じだったのよね。
旧約の民は前から移住の計画があったようで、落ち着いて準備が出来たら移住を始めるらしいのよさ。
行き先は帝国自由都市にある、旧約の民の居住区との事だわさ。
今回、結果的にお互いが助け合えたけど、一度できたわだかまりは解決できそうにないし、村人がどうした所で、世の中の流れに逆らう事は出来ないってやつなのよねぇ・・・
「ボクは彼等の移住の手伝いをするつもりさ。移住先に出資者がいるからね。ついでみたいなものだけどね」
っと、マカフシくんとはここでお別れのようだわさ。
「今回はマカフシくんの手助けが無ければ危なかったと思うのよさ。そのまさかの火縄銃も大活躍でびっくりだったのよねぇ」
「ははは、もし、トケツスタンの兵と対峙するときは、銃と大砲に気を付けることだよ」
わあお、不吉・・・
その他所で、プロテイウスとライスロイファー達が楽しそうに話しているのが耳に入ってきたのよさ。
「あー!思い出した!てめえ、オレの事、刺しそびれた事あるだろ?!」
「ああ!そうか、お前、大剣ぶん回し突撃馬鹿野郎じゃねえか!」
「ライスロイファーなんてどれも同じだからわかんなかったぜ!」
「ランツクネヒトなんてどれも糞野郎だから忘れてたぜ!」
どうやらお互い、戦った事があったらしいのねぇ・・・
昨日の敵は今日の友ってやつかねぇ・・・?
「ところでマジョリン。ちょっといいかな?」
「何だねマカフシくん。かわいいお姉さんとお別れがさみしくなったのかねぇ?」
「いや、それはないけど」
それはないのか。
「あのマトロナエの石碑、多分、誰かが手を加えた代物みたいだよ。崩れ去った破片の魔力を見たけど、何か上書きされている様子だった。魔王軍がかく乱の為、帝国の治安悪化の為にやっている可能性があると思う」
「そうねぇ・・・それはありえるかもしれないねぇ」
「こういう事が起こると、人はまず、身近な異端者を探し始める。今後、旅を続ける上で、魔法使いという理由で疑われる事があるかもしれないよ。だから、お互い気を付けよう」
「そうだねぇ。また、無事に会えるといいねぇ」
「そうだね。次会う時がトケツスタンと神聖帝国の戦場でない事を祈るよ」
こうしてあたし達はマカフシくんやライスロイファー達とお別れして、また旅路へついたのよさ。
個人個人でどんなに仲良くしても、分かり合えても、国家間の争いや、民族、宗教の対立ってのは止められないものなのかねぇ・・・
大きな流れの中で、どんなに頑張っても、個人が与える影響力ってのは、非常に小さいものなのかねぇ・・・
あたし達は魔王という絶対悪を相手に、人の為に、平和の為にと絶対的な正義として戦える分、幸せなのかもしれないねぇ・・・
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