第27話 黒い森の乙女



早朝、鐘の音で目が覚めたのよさ。

朝の時報か、カンカンと、鳴りやまずになり続けているのよね・・・

時報にしては妙だねぇ・・・


「魔物が出た合図だ!」


あたし達は慌てて装備を身に着け、外へ出たのよさ。


村人達は慌てて教会に向かって走って避難しているのよ。

ライスロイファー達は槍を構え、魔物を追い払おうとしている・・・


魔物は大きな醜いトロールが5体・・・

大きなこん棒を振り回すも、ライスロイファー達が列を組み、トロール達の進行を阻止していたのよ。


「まだ取り残されている村人がいる!なんとかならないか!?」


「マジョリン!魔法でトロール達の動きを止める事はできないかな?!」


「あいよー!やってみるのよさ!」


あたしは魔法で毒の煙を放って、トロール達の目くらましと、毒で動きを鈍くさせたのよ。

その間、負傷した村人達をメメシアとハレルに助け出させ、暴れるトロールの攻撃をプロテイウスが大剣を使って受け止めるのよ。

ライスロイファー達も長槍をトロール達に突き立てる。

トロール達が1か所に集まるように追い立てるの。

そのまま総攻撃をかまし、大型トロール達を倒したのよさ。


「なんだこのトロール達は?俺達が聞いていたのと大きさが違うぞ!」


倒れたトロールのお腹が動いているのが見えて、そこをプロテイウスが剣で切り裂いてみたのよさ。

すると、トロールのお腹の中から1人の青年が出てきたのよ。


「ゲホッゲホッ・・・はあはあ。。。い、生きている・・・オレは生きているのか・・・」


「どうした?なんでトロールの腹の中にいたんだ?何があったんだ?」


「オレの住む村がトロール共に襲われた・・・小さなトロール達が次々に村のみんなを・・・オレは必死に抵抗していたら、巨大なトロールに捕まって、そのまま丸のみにされ・・・」


この青年の話によれば、近隣の村は襲撃を受けて壊滅したそうだ・・・

だが、大きなトロールは倒したけど、小さなトロールもいるって・・・・


「大変だ!教会が襲われている!」


逃げて来た村人の報告にあたし達は焦ったのよ。

巨大トロールを相手している内に、村人達が避難した教会が襲われてしまったなんて・・・

あたし達は教会に向かって走ったの!


教会に沢山の小型トロールが群がっていて、老若男女問わずに村人達が襲われていたのよさ・・・

あたし達は総出で立ち向かうも、相手の数が多い・・・

強力な攻撃魔法は村人達が巻き込まれるから放てない状況だし、それは、ハレルの神の雷も同じで、とても困った状況なのよさ。


何人か村人達が森に運ばれて行くのが見えるのよ。


そんな時、大地を揺らす如く叫び声と共に農具で武装した人達がトロールの群れに突撃していったのよ!

旧約の民達だったのよさ!


ダァァァアアン!


乾いた炸裂音と共にトロールの頭が吹き飛ぶ!

屋根の上からマカフシくんが火縄銃を撃って援護しているのよ!


これで形勢も変わり、トロール達は森に向かって逃げて行ったのよさ。

ただ、トロール達が去った後の教会は酷く打ち壊され、あちこちに無残な姿になり果てた村人だったものが転がっている有様・・・


司祭や助祭は重症なのよ。

メメシアがまだ、息のある人達の手当てを始めるのよ。

村人達はさらわれた人達を助けて欲しいと嘆くの。


「マジョリンさん!ボクの薬草、使えるだけ使ってください!」


マカフシくんがロバを引き連れ、ありったけの薬草を並べ、あたしはすぐに調合を始めるたのよさ。

みんなで負傷者を手当したのよさ。


ハレルはなんか、変に気にして落ち込んでいる様子なのよ。

あたしはそれが気になって、木陰で休むハレルに付き添ってあげる事にしたのよさ。


「ハレル~。顔色悪いけど、大丈夫かねぇ?」


「マジョリン・・・心配かけてごめんね・・・助けられなかった人達を見て、とても悔しくて、悲しくて・・・」


「そうだねぇ・・・あたしも悔しいし、悲しいよ。でも、最善は尽くしたさ。自分を責めないで、変な責任を背負ったりしないでいいのよさ」


「そうだよね・・・みんなも必死に全力でやれることをやったんだもんね」


「勇者って肩書は随分と重荷なんだね」


っと、マカフシくんもこっちにきたのよね。


「今、その行き場のない鬱憤を晴らす為に一つ、提案があるんだけど」


「提案?」


マカフシくんは地べたに座り込んで、火縄銃を掃除しながら話し始めたのよさ。


「さらわれた村人達を奪還しよう」


「でも、トロール達がどこへ行ったかなんて・・・」


「わかるよ。使い魔に後を追わせたのさ」


マカフシくんの肩に1羽の小鳥がとまる。


「これと同じ鳥型の使い魔だよ。この森の奥に窪地があるんだ。そこにトロール達が集まっている。どうやら、例の石碑があるみたいだよ。異様な魔力がそこから溢れ出ているみたいだ」


「例の石碑?」


「マトロナエの石碑かねぇ?」


「そう、それが、マジョリンが話してくれた封じる役割とは逆の効果を出しているみたいなんだ。石碑に邪悪な魔力が集まるようになっている・・・」


「それを破壊すれば魔物達が集まるのを防ぐことが出来るってやつだねぇ?」


マカフシくんは地面に木の枝で簡単な地図を描くのよ。


「風下から忍び寄ったほうがいい。トロール達が臭いに敏感なのかはわからないけど、警戒するに越したことはないね」


「そうだねぇ。なるべく近づいて、殲滅しつつ目標を破壊したい所だねぇ」


「ボクは援護射撃を行うよ。乱闘の時はボクも半月刀を振って戦う」


「でも、商人なのにこんな割に合わない危険な戦いに参加していいのかねぇ?」


「いいんだ。商売は人と人の繋がり。お客さんの為になるならサービスの範囲内さ。それに、ボクは冒険が好きなんだ。千と一夜の物語で語られるような大冒険がね!」


なんとかあたし達の反撃の案も打ち出すことが出来たのよね。


「マジョリン・・・マトロナエの石碑って何?」


あ、ハレルにはまだ、説明していなかったのよさ・・・



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