第25話 守るべき村の問題
村に到着したのよさ。
村の入り口には長い槍を持った派手な衣装の兵士が2人いたのよさ。
「ねえプロテイウス。あれが噂のライスロイファーってやつかねぇ?」
「ああ、間違いないぜ。オレも傭兵やっていた時に何度か対峙した事があるが、集団としての強さと個人的な強さを兼ねそろえている厄介な連中だったぜ。だが、味方なら信頼できるだろうな。やつらは負け戦でもちゃんと最後まで戦う」
ふむふむ、プロテイウスが戦っても厄介と言う程の相手って事は、結構強いって事だわさ。
村に入ろうとするあたし達の前にライスロイファーが立ちふさがったのよさ。
「お前ら、何の用で来た?」
「ボク達は魔物を倒しに来た勇者です」
「勇者?魔物狩りの賞金稼ぎとかじゃないのか?」
「はい。一応勇者です・・・」
「ハレル!ちゃんと自分に自信を持ちなさい!」
「まあよい、魔物相手に人手が不足している。村の長と会え。そこのロバの少年も仲間か?」
「ボクは旅の商人のマカフシです。こう見えても26歳です。旧約の民と契約しています」
マカフシくんは何か書かれた羊皮紙を出したのよ。
「旧約の民・・・この村の東側が彼等の居住区だ。用事を済ましたらとっととここを離れた方がいい」
「魔物が襲ってくるから?」
「いや・・・人間が襲ってくるぞ。魔物が多く出るようになって、人や家畜が襲われている。村の連中は旧約の民が変な魔法を使ったのではないかと疑い始めている。俺達は村の治安維持の為に雇われた。だが、暴動が起これば抑えきれないだろう」
そうなのねぇ・・・
昔、黒死病が流行った時に旧約の民が井戸に毒を入れたとかいう噂が出て、多くの旧約の民が犠牲になった事があったそうなのよね。
災いを前にして、人が他人を疑う事は、何年たっても変わらないようなのよさ。
しかし、考えてみれば、ここの旧約の民はある意味特殊ではあるのよ。
他の旧約の民は大きな街の専用居住区に住まわされている中、ここでは村の共同体としてまだ存在しているのよ。
レアケースではあるんだけど、どうやらもう、長続きはしない様子だわさ・・・
「それに、あまり言いたくは無いんだがな、トケツスタンのスルタンに従う魔法使いが魔王と結託し、魔物を活性化させているっていう噂も流れている。商人のマカフシ。あまり目立たないようにしたほうが身のためだ」
いやあねぇ・・・
守るべき人達が襲ってくるかもしれないって、複雑な心境なんだわさ・・・
あたし達は村長に会いに、村で一番大きな家に向かったのよさ。
ちょうど、村長の会議をしていて、4人の村長が集まっていたのよさ。
1人は領主から任命された村の顔役。
1人は編み物ギルドの会員で、村の奥様方が内職で作る編み物をまとめる人。
1人は村の教会の司祭。
1人は旧約の民のリーダー的存在である祭司。
マカフシくんは彼等と顔見知りで、あたし達を紹介してくれたのよさ。
村長達はあたし達を歓迎してくれたのよさ。
村長達との会話で、出没する魔物の話を聞いたのよさ。
魔物達の外見はゴブリンよりも大きく、そして醜いそうで、司祭が言うにはトロールの一種ではないかとの事。
トロール(仮)達は集団で現れ、人や家畜を襲って食らうそうなのよ。
そう、人も食らう獰猛なトロール(仮)なのよさ。
被害内容
家畜の被害 3件
人の被害 2件
家畜は休耕地に放牧しているのを襲われたそうなのよ。
人の被害の内1件は、家畜を守ろうとして襲われたそうなの。
もう1件は村に入り込んだ魔物と遭遇して襲われたそうなのよさ。
2件とも、お亡くなりになって、体は森の中で残飯状態で発見されたそうなのよ。
おお、むごいむごい・・・
なお、村人達にアンケートを取った結果があったのよさ。
--------------
最近村の周辺に現れる魔物は何だと思いますか?
トロール 60%
オーク 20%
ゴブリン 10%
サタン 5%
旧約の民 3%
その他 2%
--------------
どういうアンケートの取り方したのかよくわからなかったけど、アンケートの結果に旧約の民が入ってしまっている時点で、村人達の人間関係に不穏な空気が漂っているのが把握できるのよさ・・・
別のアンケート結果もあって、それもちょっと気になる結果が出ていたのよさ。
--------------
最近村の周辺に魔物が現れる原因は何だと思いますか?
旧約の民の陰謀 50%
神の与えた試練 30%
悪しき魔女の呪 10%
季節の変わり目 5%
新教派の悪巧み 5%
--------------
恐ろしい事に旧約の民に原因があると考えている人達が多いのよさ。
これは、魔物に滅ぼされる前に内側で滅ぼしあう勢いだわさ・・・
2番目の神の与えた試練って答えだってさ、その先はどうとだって転がりようがあるわけでさ、誰かが原因だっていう考えを秘めているかもなのよさ。
さり気無く魔女の呪ってあるのもちょっと気にはなるのよねぇ・・・
季節の変わり目・・・は、よくわからんけどさ・・・
新教派の悪巧みの答えは多分、教会の人達のだろうねぇ。
そして、もう1つわかった事があって、ライスロイファーを雇ったのは旧約の民が出資していたそうだわさ。
それも、都市部の旧約の民から資金を借りたらしいのだけどねぇ。
それを聞いて、単純にありがとうと思う村人もいれば、隠し財産を持ってるとか思って妬む村人もいるそうなのよねぇ・・・多分、後者が多いんだろうねぇ・・・
まあ、ともあれ、村の周辺には柵や石垣を作って、侵入しにくいようにしてはあるようなんだけど、やはり魔物が相手だとそれでは防ぎきれないそうなのよさ。
被害現場も巡ったりなんかして、あっという間に日が沈むのよさ。
あたし達は顔役村長から空家を借りて、そこで寝泊まりする事になったのよさ。
そんでもんで、夜になったのよさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます