第17話 嘘つき錬金術師



たっぷりと説教を受けた為、せっかくビール飲んでいい気分だったのに、もはやシラフ状態なんだわさ。

あたしとメメシアは武器屋に行ったハレルとプロテイウスと合流したのだわさ。


「マジョリン、顔が青い・・・」


「それは、あたしが綺麗だって言うお世辞って意味でとらえとくわ~」


「調子のいい解釈をするやつだぜ・・・」


「所でハレルとプロテイウスは何か、いい武器、見つけれたのかね?」


「マジョリン、それがね!すごい物を手に入れたんだよ!」


嬉しそうにハレルはあたしに石ころを見せたのよ。


「・・・石?」


「マジョリン、これは賢者の石だよ!」


「そうなんだ。たまたま武器屋の前にいた錬金術師が、オレ達にこの賢者の石を売ってくれたんだぜ」


「いやぁ・・・どう見てもこれはただの石だわさぁ・・・」


「そんな事無いよ。どんな怪我も治せるんだよ!」


「ハレル・・・騙されたんじゃ・・・」


「マジョリン、証拠を見せるよ!プロテイウス!しゃがんで!」


プロテイウスがしゃがむと、ハレルはプロテイウスの顔面を殴ったよ。

プロテイウスの鼻から血が出たのだわさ。


「いてぇよハレル・・・」


「でも、この賢者の石があれば、こんな怪我なんてすぐに無くなるよ!」


ハレルは賢者の石をプロテイウスの鼻に添えるの。

でも、鼻血は止まらなかった。


「あれぇ・・・おかしいな・・・」


ぐいぐいぐい!


「痛い痛い!ハレル!オレの鼻がつぶれちまうよ~!」


「はあはあ・・・・あれ?・・・あれれ・・・・?」


「ハレル・・・顔が青いのよ・・・」


「マジョリン!嘘じゃないんだ!だって、錬金術師の人は、自分の肩に乗せた角と羽の生えたウサギの怪我をこれで治したんだよ!」


「ハレル、いくら使ったのですか?」


メメシアがハレルの手を取り、ハレルの目を見て言ったの。

すると、ハレルは目を涙ぐませたのよ。


「も・・・もち金全部ぅ・・・・」


「ハレル・・・今すぐその詐欺師に神罰を下しに行きましょう」


あたし達は自称錬金術師からお金を取り返す為に、武器屋の前に行ったけど、自称錬金術師の姿は無かったのだわさ。


「シュプールフェファルゴ」


あたしは魔法の呪文を唱えたのよ。

あたしの目にはこの近くにいた人の足跡が見えるようになるのさ。

足跡をたどって、自称錬金術師を追跡するのさ。



☆☆



自称錬金術師の足跡を追ってみると、大きな屋敷にたどり着いたのよ。

その屋敷の前には番兵がいるのよ。


「なんだお前らは?この屋敷はこの街の名家、トッティモ・フォン・ナックーキ卿の屋敷であるぞ!」


「この屋敷に錬金術師が出入りしていませんか?ボク達、賢者の石と騙されて妙な石を買わされたのです」


「錬金術師?ああ、フォラフキーノ様の事か。フォラフキーノ様は錬金術の研究に忙しい!お前らには会わぬ!」


「あの、一応彼、勇者なんだけどさ~・・・」


「勇者?そういや最近、勇者を名乗る連中が巷に現れるようになったと聞いていたが、オレは信用しちゃあいないんだぜ」


「そうですか。あなたは神の導きを信用なされないとおっしゃるのですね」


「神の?」


「勇者は世界を救う血筋、各地に点在してはいますが、彼は神の導きの元、勇者としての使命に目覚めた者です。彼が錬金術師と会いたいと言っています。協力せねば・・・」


「・・・協力、しなくちゃなんだってんだ?」


「それから先を言ってもよろしいのでしょうか?」


そう、メメシアが言っている事は、勇者に従わねば地獄に堕ちると言う意味の脅しなのよ。


「・・・わかった。その代わり、オレも付いていく。変な事されたらオレはクビだぜ」


「よろしいご判断です。職を失うよりももっと辛い事を選ぶよりはましです」


メメシアは恐ろしい僧侶だわさ・・・



☆☆



あたし達が番兵に案内された部屋に、着飾った貴族のおじさんのナックーキ卿と、肩に奇妙なウサギを乗せた錬金術師のフォラフキーノがちょうど会話をしていた。


「おい錬金術師!あの石、治療の効果が無かったぞ!」


「お前達!何故ここに!?」


「この石は返します。だから払ったお金を返してください!」


ハレルとプロテイウスは錬金術師に言い寄る。


「なんの騒ぎかね?」


ナックーキ卿が錬金術師に聞いた瞬間、錬金術師の肩にいた奇妙なウサギがはねて、床に着地。

その衝撃で、生えている角と羽がぽとりと落ちたのだ。


「このウサギに、鳥を捕獲する時に使う粘着剤を使って、角と羽をくっつけていたって所かね~?」


「なんと、ホムンクルスだと言っていたのに、普通のうさぎになってしまったではないか。どういう事だねフォラフキーノ君!」


錬金術師の顔はみるみるうちに青ざめてゆく。


「錬金術師さん、顔が青いですよ?」


「ああ・・・ああそうだよ!オレは詐欺師だよ!みんな単純に騙されやがって!バーカバーカ!」


錬金術師は開き直って、周辺のみんなを罵倒した。

番兵が素早く錬金術師、もとい詐欺師を捕まえ、縛り上げた。


「まさか、詐欺師だったとは・・・使っていない倉庫部屋に閉じ込めておけ。後で渡した金のありかを聞き出す」


詐欺師は番兵に連れていかれた。



☆☆



「まさか、私が雇っていた錬金術師が詐欺師で、しかも勇者様を騙していたとは。どうお詫びを申していいのやら・・・」


「ナックーキ卿は謝らなくても・・・同じ被害者じゃないですか」


「いやいや、あなた達が失った金額は私から返させていただきます。後でその分も彼から取り返すので、ご安心ください」


ナックーキ卿の召使いがすぐにお金を用意して、部屋に持ってきてくれたのよ。


「私は彼に部屋を与え、錬金術の研究をさせていました。私はお金を増やせると、すっかり騙され、彼に錬金術で使う為の予算も沢山渡しました・・・」


落ち込むナックーキ卿。


「もし、よろければ、あの詐欺師が何やってたのか、見て調べてもいいかな~?」


「おお、勇者様にご同行なされる魔法使い様、是非、見て頂きたい。詐欺師とは言え、その部屋で何かをやり続けていたのは確かです。下手に呪いをかけられても困るので、危険が無いか見て欲しいです」


っと、あたしは詐欺師が使っていた部屋を調べる事になったのだわさ。



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