#44

「腕時計なら、ほらそこの棚にあるぞい」


「了解っス!」




俺も見たい!


って事で一緒に見てみる。


と言っても、そんなに種類は無く、3種類だけだった。大小あったので全部で6個。




「一番左のが時間を表示するだけのじゃな。


 真ん中のが日時を表示する。一番右のはそれに加え、時間を計る機能が付いておる。」




時間を計る機能ね、つまりはストップウォッチって事だろう。


コタニさんは右か真ん中で悩んでいるようだ。


たしかに左のは普通すぎるよね。


真ん中のはちょっとオシャレだ。


右のはまるでΩみたいでカッコイイ!




「買える値段なら右のが欲しいなぁ」


「右のがカッコイイしオシャレっスよね~」


「これらっていくらなんですか?」


「左から5万・12万・16万じゃ。大小セットで買うなら値引きしてやるぞい」


「買うっス!」




即答かよ! 凄いな。




「右のをセットで買うから、合計で30万にして欲しいっス!!」


「ふむ、お嬢ちゃんの思い切りの良さ、恋人同士で同じ物を着けたいという気持ち、気に入った! 29万にしてやろう!」




あっ、カードの上限ピッタリ作戦だったのに、1万残った(笑)




「いえ、30万ジャストでいいっス!」


「なんとまあ、できたお嬢ちゃんじゃないか! 28万にしてやろう!」




食い下がるほど安くなるというジレンマ(笑)


コタニさんは諦めて28万で購入した。




「毎度あり。魔力のある人間が着けていれば壊れるまで動くからの。壊れたら持ってくるがええ」


「判りました」


「それで、まだ欲しい物はあるかの?」


「う~ん、、、そうだ、腕時計じゃなくて大きい壁掛け時計ってありますか?」


「今は一つだけしかないぞ。これじゃ」




それは丸い形のシンプルな壁掛け時計だった。


下部に蝶ネジが付いている。




「これなら1万でええぞ。なんせ1日しかもたんからな。下にある蝶ネジを回すと動くのじゃ」




バネ式なのかな? 毎日巻くタイプなのね。




「じゃあこれもください」


「毎度あり。他には欲しい物は無いのかの?」




RPGの店みたいなやり取りだな。


でも、良い機会だし、買える物は買っておきたい。


う~ん、、、思い出せ俺!!


装備品はどうだ?あれは武具屋か?


武具じゃない装備はどうだ?




「そうだ! 靴はあります?」


「ん? 靴は靴屋じゃろ?」


「そうなんですが、そうではなくてですね。ほら、魔法が付与された靴とか。そういう感じのありません?」


「魔法具としての靴かえ?」


「そうです! やはり靴屋ですかね?」


「靴のぉ……、おぉ、あったような気がするわぃ!」




そういうとおばあさんは押入れの中をゴゾゴゾ探し出した。


いやぁ、聞いてみるもんだね。


何か掘り出し物があるかもしれない。


あばあさんは古びた箱を取り出してきた。




「これじゃこれじゃ。たしか『飛翔の靴』という名前じゃったと思う」


「ほう! どのような効果が?」


「う~ん、古い物じゃからなぁ……。何じゃったかのう?」


「頑張って思い出してくださいよ!」


「う~ん、美味い食い物でもあれば思い出しそうなんじゃがのう……」




なんだそれ?! えらく都合の良い記憶力だな?!


俺はサンドイッチを取り出して渡した。




「モグモグ、うん、美味い!」


「で、思い出しましたか?」


「おう、思い出したぞ。『魔力を与えると空気が踏めるようになる』という効果じゃったな」


「繰り返せば空も歩けるのか! そりゃすげぇ!」


「タイミングが難しいので誰も使いこなせなかった物じゃ。運が悪けりゃ真っ逆さまに落下するじゃろう」


「運が悪ければ、ね。そりゃあ良い!! じゃあ買いますよ。」


「? 変な言い方をするね? まあ良い、100万の所を10万でいいよ」


「高っ! まあ買うけど」


「買うのかい?!」


「買いますよ。俺、運は良い方ですから」


「そうかい。毎度あり。他には欲しい物は無いのかの?」




さすがにもう思い浮かばない。


場所も知ったし、また買いに来ればいいだろう。




「今日はこれで帰りますよ」


「そうかい。また寄ってくれ。その時はまた美味い物を持ってきておくれ」


「了解です。その分値引いてもらいますよ」


「フェッフェッフェ」「フフフフフ」




「二人とも怪しい笑いはやめるっス……」

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