#43

カードは5枚用意している。


金額は、10万・15万・20万・25万・30万の5種類。


俺だけには判るように、その順番で上から並べておいた。


各人が引いたカードは、


ウエダさん…15万、奥さん…10万、カンダさん…25万、キジマさん…20万、コタニさん…30万


となった。


皆が何を買ってきてくれるのか楽しみだ!


プレゼントを貰うみたいでワクワクするね! お金を出したのは俺だけどさ。


ちなみに、ナミちゃんとポチは奥さんに付いていくようだ。




全員で買い物に行っても面白くないので、バラける事にした。


ウエダさんは一家で、カンダさんはキジマさんと。


コタニさんは俺について来るらしい。


おお! 買い物デートですね?!


……いいんだよ! 愛情が無くても男女が買い物でウロウロすれば「買い物デート」なんだよ!


(注:親子・兄妹は除く)




「さてコタニさん、どこへ行く? 俺は、さっき閃いたんだけど、お湯を沸かす物を買いに行こうかなと考えてるんだけど」


「そうっスね。まずはそれを買いに行きましょう! で、どこに行けば売ってるんスか?」


「どこだろうね……」


「・・・」




いきなり暗礁に乗り上げてしまった……。


なんせこの町、商売の方はやる気が無いのか看板が無い。


ギャンブルの看板はデカデカと出てるのに。




しょうがないので、運を使い『湯を沸かす道具のある店!』と祈りつつ歩く。


すると、オザキさんがある店から出てきた。




「おや、オザキさんじゃないですか?!」


「これは福田様。奇遇ですね」


「そうですね。今は何を?」


「あぁ、私の持っている時計が壊れたので修理に出したのですよ」


「ここは時計屋さんなんですか?」


「いえ、魔法具の店です。時計も魔法具なんですよ」


「そうなんですか?! じゃあちょっと寄ってみようかな」


「この店は良心的ですよ。オススメです」


「ありがとうございます。行ってみます!」


「では私は店があるので、これで。またお会いしましょう」


「はい、またです!」




オザキさんオススメなら安心かな。




「この店に寄ってみようよ」


「そうっスね。良い物がありそうっス」




中に入ると、所狭しと物が置いてあった。


ウエダさんの店をもっと乱雑にした感じだ。




「スズキ魔法具店へようこそ」




うぉ! ビックリした!


品物の間から顔を出すなんて、変なおばあさんだな!




「え~と、湯を沸かす魔法具ってありますか? できれば携帯できる物がいいんですが」


「おう、あるぞ。ほれ、これだ」




う~ん、どうみてもヤカンなんだが。


これに水を入れると湯が沸くのだろうか?




「これですか?」


「そうじゃよ。それに水を入れて火にかければ湯が沸くわい」


「当たり前じゃないですかっ!!」




ボケが始まってるのか?




「フェッフェッフェ。ジョークじゃよ。これが欲しいんじゃろ?」




そう言って出してきたのは、見た目そのままカセットコンロだ。


違う点はボンベをセットする所に赤い石が入っている事と、五徳ごとくが無くIHヒーターみたいになってる。




「そこには火の魔法石を入れるんじゃよ。そしてこっちには丸い石を入れるんじゃ。


 それでこのレバーを下げると上の丸が書いてある所が熱くなるのじゃ。


 そこにヤカンでも置いておけば湯が沸くわい」


「そうそう、こういうのが欲しかったんですよ」


「この『コンロ』は5万円じゃ。今ならさっきのヤカンも付けてやるぞ?」


「じゃあ2台買いますよ」


「フェッフェッフェ、毎度あり。火の魔法石も丸い石もダンジョンモンスターのドロップじゃ。


 ダンジョンに行って取ってきたらええ。まあここでも売ってるがの」


「ついでに、フライパンはありますか?」


「それは金物屋じゃろうて」




そう言われればそうだろうな。


でも、じゃあなんでヤカンはあったのかという疑問が残るが。


イマイチ納得いかないなぁと思ってると、コタニさんが買いたい物があったようでおばあさんに話しかけた。




「あのっスね、腕時計は無いっスか?」




おう、忘れてたよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る