#37
疲れの取れない温泉旅行は終わった……。
今度行く時は、違う宿にしようと心に誓ったよ。
さて、カジノの町まで無事に戻ってきたのは良いが、時刻は既に19時。
今から村に帰っても良いが、無理をする必要は無い。
俺の提案で、今日はカジノの町に泊まる事にした。
宿探しだが、皆に聞いてみると、誰も泊まった事が無いと言う。
カンダキジマコンビは来たばっかりだったと言うし。
唯一長居してたコタニさんは、徹夜でギャンブルしてたそうな。……バカだろ?
従魔と子供連れなので、ギャンブルで徹夜なんてもってのほか!
ギャンブルするにしても宿を確保してからだ。
しかし困った。良い宿も知らなければ、1泊の値段の相場も知らない。
何も知らずに入った宿が一流ホテルだったら、異常に高い宿泊費になるだろうし。
まぁ多分払えるとは思うけどさ。
とにかく、こういう時は知り合いを尋ねて聞くのが一番だ。
この町の知り合いと言えば、、、司会のお姉さん・エンドウ支配人・オザキ支配人・クメ支配人の4人しかいない。
庶民的な宿を知ってそうなのはお姉さんだが、居場所が判らない。
そうなると、どちらかの支配人さんに聞くしかないな。エンドウさんは入院中だし。
ま、一緒にガチャを回した事もあるオザキ支配人に聞くとしよう。
皆には馬車の所で待っててもらい、俺1人で聞きに行く事にした。
ブラックジャックの店に行き、従業員の人に支配人を呼んで貰う。
屈辱だが、名前では気づいてもらえないかもと思い、帝王と名乗った……。
それを聞いた従業員は、青い顔で走って行ったよ。
ほどなく、オザキさんが来てくれた。
「これはこれは、福田様、お久しぶりです」
あっ、覚えていてくれた!! わざわざ名乗った俺、恥ずかしい!!
「お忙しい所をすみません。ちょっとお尋ねしたい事がありまして」
「おや、なんでしょうか?」
「今日、この町に泊まろうと思ってまして。どこか宿を紹介してもらえないかな、と」
「そういう事ですか。・・・ふむ、少々お待ちください」
そう言ってオザキさんは奥に戻っていった。
そして誰かを伴って帰ってきた。
「お待たせしました」
「いえいえ、こちらが頼んでるんですから」
「ご紹介させてください。こちら、当店の経営者であるサガワ店長です」
「サガワと申します。いやはや、帝王に会えるとはワシも運が良い! よろしくお願いしますぞ!」
「福田・・です。よろしくお願いします」
「福田様、サガワ店長はホテル経営もされているのですよ」
「えっ? そうなんですか?」
「そうですな。この町では3件ほど経営しておりますぞ! 此度は泊まる所をお探しとか?」
「そうなんですよ。自分含め、大人が6人と子供が1人、従魔の子犬が1匹ですけど」
「よろしい! ワシのホテルに泊まってくだされ!! 部屋を用意させましょう!!」
「いいんですか?! ありがとうございます。お世話になります」
「いやいや、気にしないでくだされ。帝王に泊まってもらえるなぞ、光栄ですぞ!!」
「こ・光栄ですか? ただの一般人ですけど? 青色冒険者ですし?」
「このギルドの町ではそんな事は関係無いんですよ。ギャンブルで勝った者が正義!みたいな?」
「は・はあ。」
「それで言えば、福田様は素晴らしい! 支配人を入院にまで追い込む程の強さ! 正に帝王!!」
うわ~、やっぱり俺が原因なのかよ……。
花持ってお見舞いに行こうかな。いや原因の俺が行くと悪化するか?
「帝王の福田様に相応しいホテルを用意します! ワシについて来てくだされ!」
「相応しくなくていいんですけどね。まぁ、お世話になります……。」
「お任せくだされ!!」
「あっ、他の人達を馬車の所で待たせているんで。ちょっと呼んで来ます!」
「そうなのですかな? では迎いを出しましょう。おーい! ちょっと頼まれてくれ!」
近くにいた従業員が呼ばれ、そのまま走り去っていった。
わざわざ迎えに行ったんだろう。何か悪いなぁ。
俺はそのまま一行が来るまでの間、俺の武勇伝を喋る事になった。
サガワさん曰く、知っているが本人の口から聞きたいとの事。
五色の所が非常にウケた。
ようやく全員が揃ったので、サガワさんがホテルに案内してくれた。わざわざ馬車を呼んで。
歩いていきますよと言うと、帝王を歩かせるなんてとんでもない!と言われた。
本当にたいした人間じゃないんです。ここまでされると萎縮しちゃう一般ピープルなんです。
着いたホテルは、この世界ではまだ見た事の無い4階建てで石造りのホテルだった。
サガワさんについて受付に行くと、鍵を1つだけ渡された。
どうやら全員で一部屋のようだ。急に来たのだからしょうがないよね。
泊めてもらえるだけありがたいし。
そう思ってた頃もありました……。
サガワさんは帰り、ホテルの人に案内された部屋は4階だった。
4階に上がる階段の所には、兵士のような格好をした人が見張りをしている。
案内係の人が「帝王様ご一行です」と告げると、兵士は90度のお辞儀をしてくる。
4階に上がると、すぐ扉があり渡された鍵で開錠した。
部屋は4階全てを使ったスイートルームでした。
そりゃ一部屋で済むよねっ!
どんだけの宿泊費が必要なんだよ? と恐る恐る聞くと、
「無料です」
の一言だけが返ってきた……。
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