#32

朝になると、既に全員ウエダさんの店に集まっていた。


コタニさんも昨日はウエダさんの家に泊めてもらっていた。


ナミちゃんと仲良くなったようで、一緒に寝たんだって。


ポチは俺の部屋に来なかった……。




温泉行きの馬車はカジノの町から出てるそうで、そこまではウエダさんの馬車で行く事に。




そういえば、景品だった『鑑定の眼鏡』だけど、使うには魔法が必要らしい。


簡単な魔法らしいが、まだ何一つ覚えてない俺には無理な話だ。チクショウ。


カジノの町に着くまでに魔法の本を読んで覚えようと思ったが、揺れて本を読むのは無理だった。吐くわ!


前世の知識を持ってる転生者の人、馬車の改造をお願いします!


俺が自分でしろって? サスペンションは知ってても、構造なんか知る訳ないだろ?!


知ってる人間は「自由にしなさい」って言われて転生してくるんでしょ? サスペンションを早く!!


ハーレム作ってても許すからさ!!




そうこうしてる内に、カジノの町に到着。




チケットを出すと、馬車に案内された。


ウエダさんの馬車は責任持って預かってくれるそうな。


ウエダさんは預り証に『帝王の馬車』と書いていた。俺のじゃないんだが……。


理由を聞くと「こうすりゃ、何かしようとするヤツはいないだろ?」と言っていた。


確かに、そんなヤツには運を使ってでも制裁を与えてやる。後、俺は帝王じゃないから。




温泉行きの馬車は10人くらい乗れる大きいモノだった。


引く馬も4頭もいる。なかなか豪勢だ。


うちには護衛が3人いるけど、護衛が別で付いてた。


全員ピンク色の冒険者だそうだ。奮発したなぁ。


リーダーの人に話を聞くと「帝王に何かあったら町が滅びる(金銭的に)」との事。


そんな事はしないよ、雇った冒険者が強盗だったとかならありうるかもしれないけど。


そう言ったらリーダーは青白い顔になり、


「自分達は10年以上護衛の仕事をカジノの町でやってて信用されてます!」と弁護してた。


いや、疑ってないよ? 何か悪い事したなぁ。




温泉まではカジノの町から1日かかる。


途中、昼食の為にハガタの町に寄るそうだ。


昼食代はチケットに入ってないらしい。


その町は美味しいモノが沢山あるらしく、好きな物を食べて欲しいという配慮なんだってさ。




12時頃にハガタの町に到着した。


なんとこの馬車、時計が付いてるのだ!!


いいな~時計、欲しいなぁ。どっかで売ってたら絶対買おう!


この町では13時に鐘が鳴るらしく、それがなったら馬車に帰ってくればOK。


食べ歩きでもしようかな。カバンに入れれば何時でも食べれるから、保存しとくのも良いなぁ。


そう考えて歩き出すと、全員がゾロゾロと着いてきた。


俺はRPGの主人公じゃないぞ?!


聞くと、冒険者2人+コタニさんは「護衛ですから」と、ウエダさんは「師匠についてった方が美味い店に当たる気がする」と。


なるほど、こういう場合でも運を使えばいいのか。


俺も気づかなかった運の使い方だ。ウエダさん、グッジョブ!!




『最近この町で流行っている美味しい食べ物の店に当たれ!』と祈ってみる。


すると、すれ違った知らない人が「さっき食ったラーメン美味かったなぁ。ハガタラーメンだっけ?」と語ってた。


仕込みか?! まぁ良い。そこに行ってみよう。


この世界にもラーメンってあるのね。




ほどなく『ハガタラーメン』と書いてある黄色の看板を発見。


豚骨の良い匂いが漂ってきた。この匂い、好き嫌いがあるんだよね。俺は好きなんだ~。


メンバーを見ると誰も嫌ってなかったので、少し安心した。


俺達が到着すると、丁度6人が座れるボックス席が空いたのでそこに座る。


メニューは「ハガタラーメン」と「こってりラーメン」の2種類のみ。


俺は、豚の背あぶらが入っている「こってりラーメン」を選んだ。


女性は「ハガタラーメン」を選んでた。


麺の固さも「ナマ」「カタ」「やわ」から選べるのだが、初めての人ばかりなので選ばなかった。


俺は「やわ」が好きなんだけどね~。




3分もすると次々とラーメンが運ばれてきた。


この速さも良いんだよね~。


具はシンプルで、ネギとチャーシューのみ。


テーブルには、紅しょうが・辛子高菜・白ゴマ・替え玉時の追加だし、等が置いてある。


俺はまず白ゴマだけを入れて食べる。


うん! 美味い!!


濃厚に見えるスープだが、しつこくなく後味がさっぱりしている。


このスープが細打ちの麺とよく合っていて、食べるのが止まらないね!


残り2口くらいになった時に「替え玉! やわで!」と注文した。


これで食べ終わる頃に替え玉が来るって寸法だ。


メンバーが「替え玉って?」と聞いてくるので「麺のおかわりだよ」って教えたら全員が替え玉を頼んだ。




替え玉が到着すると、皆が俺に注目する。


俺のやり方が正解でも無いんだけどな。ちゃんと説明しとこう。




「まず、この麺をスープに入れる。次に『追加だし』を入れて調整する。ちょっとづつ入れて好みの味にしたらいいよ」


「哲司お兄ちゃん、なんでそれを入れるの?」


「入れなくてもいいんだけどね。替え玉を入れるとスープが茹でた時の水分で薄くなるからだったかな?」


「「「「「へ~」」」」」


「俺はこの後に、辛子高菜を入れる。2杯目は味を替えるんだ。紅しょうがを入れてもいいな。ゴマ追加とか」




そう言って実践して見せる。


替え玉を入れ、追加だしを投入、最後に辛子高菜を入れて混ぜて完成!


そして一気にすする!! 美味い!!


皆、色々な物を入れて自分なりの組み合わせを探しているようだ。


ナミちゃんは、さすがに替え玉は多すぎるのか半分をウエダさんに渡していた。




あ~これもアイテムボックスに入れて持っていきたい!!

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